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根部が紫色の辛味ダイコン新品種「あきたおにしぼり紫」
[要約]
「あきたおにしぼり紫」は、表皮、皮層および木部柔組織を含め、根部全体が淡紫色に着色するため、均一に発色した“おろし”ができる。「あきたおにしぼり」と同様に辛味成分含量が多く、市販品種より水分が少なく糖度が高いため、差別化できる。
[キーワード]
辛味ダイコン、新品種、あきたおにしぼり紫、おろし、辛味成分
[担当]
秋田県農業試験場・野菜・花き部
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
秋田県伝統野菜の一つ、松館しぼり大根(品種名「あきたおにしぼり」)は、根部が白色の辛味ダイコンであるが、他県の伝統野菜や市販品種の中には、アントシアニンにより、根部が紫色に着色した品種もあり、その彩から一般消費者や市場でも人気が高い。そのため、松館しぼり大根の生産者からは、赤色や紫色に着色した「あきたおにしぼり」の育成に対する要望がある。そこで、「あきたおにしぼり」を素材とした有色系辛味ダイコンの品種育成を図る。
[成果の内容・特徴]
- 「あきたおにしぼり紫」は、「あきたおにしぼり」の親系統「M-2-1」を紫色化して育成した「M-12」と、「あきたおにしぼり」のもう一方の親系統「M-K-1-3」を自家不和合性利用して組み合わせた正逆交配のF1 品種である(図1)。
- 「あきたおにしぼり紫」は、表皮、皮層および木部柔組織を含め、根部全体が淡紫色に着色する(図2、図3)。そのため、均一で、濃さむらの少ない“おろし”を作ることができる。(図3)。
- 「あきたおにしぼり紫」は、アントシアニンの着色が認められる以外は「あきたおにしぼり」とほぼ同様の特性を持つ。すなわち、辛味成分(イソチオシアネート)含量が高く、食味官能試験による辛味評点が4.6 と極めて辛味が強い。また、水分が少なく糖度が高い(表1)。
- 「あきたおにしぼり紫」は、市販の紫色系品種「からいね赤」(渡辺採種場)と比較して、根重は小さいが、根部乾物率および糖度が高く、濃厚な紫色系の辛味ダイコンとして差別化できる(表1)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:秋田県内のダイコン生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積:普及予定地域は、松館しぼり大根を栽培する鹿角市八幡平地域で、普及予定面積は「あきたおにしぼり」の半分の1.5 ha 程度。
- 作型は秋冬どりで、7月下〜8月中旬播種、10 月下〜11 月中旬の収穫となる。
- 着色系品種の特性上、数%の頻度で白色個体が出現する。そのため、間引き時に、胚軸や子葉が紫色に着色している個体を残すようにする。
- 種子は、秋田県内限定で販売予定である。詳しくは、秋田県農業試験場・企画経営室までお問い合わせ下さい。
[具体的データ]
(秋田県農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 秋田のオリジナル品種を核とした秋田ブランドを確立する新品種育成
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1997〜2015 年度
- 研究担当者
- 椿信一、佐藤友博
- 発表論文等
- 秋田県「あきたおにしぼり紫」品種登録出願 2015 年9月4日(第30439 号)