[成果情報名]

大麦・小麦由来ペプチドα-チオニンの殺菌効果

[要約]大麦・小麦由来ペプチドのα-チオニンは単独で耐酸耐熱性細菌を殺菌し、食品添加物のEDTA共存下では大腸菌等の食中毒性細菌も殺菌する。α-チオニンはトリプシンで速やかに分解されるため、腸内細菌に対する影響は小さいと推定される。
[キーワード]抗菌ペプチド、α-チオニン、耐酸耐熱性細菌、食中毒性細菌、腸内細菌
[担当]近中四農研・特産作物部・成分利用研究室
[連絡先]0877-62-0800
[区分]近畿中国四国農業・食品流通
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食中毒を防止する手段の一つとして抗菌剤の使用が有効であるが、天然物由来の抗菌剤の種類は未だ少ない。また、低温加熱殺菌済の果汁が耐酸耐熱性細菌(Alicyclobacillus acidoterrestris )によって腐敗することが世界中で問題になっている。大麦・小麦の胚乳に含まれるペプチドのα-チオニンは酸や熱によって変性され難く、抗カビ性を示すが、細菌に対する効果はほとんど報告されていない。そこで、α-チオニンの食中毒性細菌や耐酸耐熱性細菌に対する効果を調べる。また、α-チオニンの酵素分解性を明らかにすることにより、腸内細菌に対するα-チオニンの影響について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 果汁中に A. acidoterrestris が概ね100,000/ml 以上増殖すると、本菌が生成するグアヤコールによって異臭を感じるが、果汁に20 μg/ml のα-チオニンを添加すると本菌の増殖が抑制される(図1)。また、α-チオニンは麦粉からクエン酸やリンゴ酸でも抽出されるため、それらの抽出液を果汁に添加しても本菌の増殖を抑制できる。
  2. α-チオニン単独では、大腸菌等のグラム陰性の食中毒細菌に対する抗菌効果は弱いが、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)2ナトリウム塩と共存させると、強い殺菌効果を示す(表1)。α-チオニンの抗菌作用点はおもに細胞原形質膜であり、EDTAはグラム陰性細菌において、α-チオニンの細胞壁透過性を高めていると考えられる。
  3. 腸内細菌の中には、α-チオニンによって増殖が阻害される菌がある(表2)。
  4. α-チオニンはトリプシンによって分解されることから(図2)、α-チオニンを含む食品を摂取しても、α-チオニンは速やかに消化されため、腸内細菌はほとんど影響を受けないと考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 精製α-チオニンは、モルモットに摂食させても異常は認められないが、培養動物細胞の増殖を阻害するため、安全性についてさらに検討を要する。
  2. α-チオニンは消化酵素によって分解され易いため、アレルゲンになる可能性は低いが、α-チオニンを含む麦抽出物を用いる場合は、混在するタンパク質のアレルギー性を検証する必要がある。
  3. EDTAは食品添加物として米国で承認されているが、日本では認められていない。

[具体的データ]

図1

表1

表2

図2


[その他]
研究課題名麦類抗菌ペプチドの利用
予算区分交付金
研究期間2000~2001年度
研究担当者老田 茂
発表論文等1)老田 (2000) 食科工 47:424-430.
2)老田 (2000) 醸誌 95:776-779.
3)Oita (2001) U.S. Patent No.6329011.

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