農研機構

特集1 つながる×農研機構
~地域とともに成長~

九沖SFCのつながり

「九州沖縄経済圏スマートフードチェーン(九沖SFC)プロジェクト」は、農研機構が九州経済連合会(産業界)、九州農政局・九州経済産業局(行政)の協力を得ながら、生産者や加工・販売関係企業、流通・輸送関係企業と連携を組み、研究成果の社会実装を進める取組です。

プロジェクトの目標

農畜産物・食品の
輸出拡大

国内農業の生産基盤の
強化

産業競争力強化に
よる地域経済の
活性化

「攻め」の取組紹介

プロジェクトの目標の達成に突き進む〝攻め〞の取組をいくつかご紹介します。

見出し「欧州市場を狙え」
せいめい for Europe

緑茶「せいめい」は世界で拡大する抹茶市場をターゲットに販路を開拓しています。中でも欧州市場は抹茶が高価格で取引され、日本の高品質・高機能な緑茶が市場を拡大する可能性を秘めています。抹茶といえば「せいめい」と認識されるのもそう遠くない未来かもしれません。

鹿児島県枕崎市で行われた海外の茶バイヤーを集めた説明会。
各国から参加したバイヤーの関心の高さがうかがえる
見出し「プレミアムイチゴ」
恋みのり in Asia

アジアでの日本産イチゴの人気が止まりません。粒ぞろいで果肉がしっかりとし、艶々と輝く宝石のような日本産イチゴは高級品です。輸送に適し、栽培しやすい「恋みのり」をきっかけに、輸出向けイチゴの産地拡大を進めることで、さらなる輸出拡大を狙っています。

傷みにくい果肉で日持ちの良い「恋みのり」と輸出向け包装資材の開発も輸出拡大に一役買っている
見出し「国内市場の奪回!」
もち麦

輸入品シェアが80%を超える中、国内産「大麦」のシェアを拡大しようと、新たな品種「くすもち二条」を農研機構が開発。生産量4,400tに達しました。国内の健康志向の高まりを受けて、もち麦粉を使った商品も市場に投入され、国内市場奪回を目指しています。※2021年8月31日現在

「くすもち二条」の栽培適地は九州。
ホットケーキはもちもちした食感に
写真提供 : 熊本製粉株式会社
見出し「冬場の腐敗から守れ!」
サツマイモ

日本式焼き芋がアジアでブームです。ブームを支えるサツマイモの輸出にはいくつか課題があり、その一つが冬場のコンテナ海上輸送中の腐敗です。農研機構では腐敗対策の研究に取り組んでいます。輸出事業者との実用化に向けた研究が実を結び、輸出拡大に貢献しています。

腐敗対策実験中のサツマイモ。
2020年頃からの第4次「焼き芋」ブームが現在も続く

田中健一事業開発部長に聞く

農研機構
総括執行役 兼事業開発部長
田中 健一

九州が選ばれた理由

「農畜産物・食品の輸出拡大」「国内農業の生産基盤の強化」「産業競争力強化による地域経済の活性化」という大きな3つのテーマに則したプロジェクトを企画・実行するなかで、九州・沖縄経済圏は高い農業生産額(約2兆円)を有し、地理的にもアジアに近く、物流の効率化を通じて輸出拡大につなげやすい。また、九州・沖縄の経済界はアジア向けの輸出にすでに取り組んでいたこともプロジェクトの大きな推進力になると思いました。

プロジェクトで狙う主要品目

肉用牛、イチゴ、サツマイモ、お茶の生産額は全国シェアも大きく、輸出品目としてのインパクトが大きいです。コロナ禍での健康志向の高まりで「健康食」として注目を浴び、需要増が見込まれ るもち麦(もち性大麦)もプロジェクトの品目に選んでいます。

プロジェクトがもたらすもの

農研機構の持つ技術やノウハウを活かして人口減少時代の様々な課題を解決することで、収益改善や生産性向上を通じて所得の向上に貢献できます。何より、生産者の所得が向上すれば、「九州で農業を始めたいな」という方が増えるだろうし、農業が輸出産業になれば新たな雇用が生まれ、移住する人々も増え、地域ににぎわいが生まれます。このような地域の活性化は目的の一つです。農業を「成長産業」にする。農研機構の中でも重要なプロジェクトに位置付けて進めています。

頼りになる存在に

研究と地方創生(地域活性化)ではイメージとしてはかけ離れているようにみえますが、農研機構がプロジェクトを通して提案するのは、生産性の向上や効率化という、個々では行き届かない技術です。技術の社会実装は、農業の6次産業化※1に直結します。
新型コロナウイルスの影響で、若い世代の意識も変化※2していて、地方への関心が高くなっています。このような若い世代が地方で農業・食品産業を支え、地域を盛り上げる存在になることを願っています。私たちも、「頼りになる農研機構」という存在でプロジェクトを進めていきます。

【用語解説】
※1 農業の6次産業化 :1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業などの事業との総合的かつ一体的な推進を図り、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組。これにより農山漁村の所得の向上や雇用の確保を目指している。
参照 : 農水省HP
「新事業・食品産業 農林漁業の6次産業化」より

※2内閣府「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年12月24日)では、<地方移住に関心がある人のうち、地方移住に向けた行動をとった人の割合(東京圏在住)>は全年代では27.2%だが、20歳代37.9%、30歳代32.2%と全体や他の年代よりも上回っている。