VOICE from NARO
「豊かな土壌を未来につなぐために」
人は、大地からの恵みとして糧を得て、生活を豊かにしてきました。農耕文化を手に入れて以来、人はより多くの糧を得るために、土地を耕し、肥やしをまくなどして、大地の表面で植物の生育を支える土壌を肥沃にしてきました。しかし、産業革命以降、人と土壌の関わり方は大きく変化し、それによって土壌は大きな影響を受けてきました。世界的には、過剰利用や肥料の過剰投入による土壌劣化が進んでいると言われています。
日本では、農業者の減少や高齢化、急激な経営規模拡大などにより、これまで農業者の経験により培われ、継承されてきたきめ細やかな土づくりを継続することが困難になっています。気候変動による温度変化や極端な気象現象、さらに病害虫や雑草の変化への対応や、気候変動の緩和への貢献も図る必要があります。このような環境や社会の変化が土壌に及ぼす影響を踏まえ、「Soil Health」という考え方が国際的に提唱されています。先祖から受け継いだ肥沃で豊かな土壌と大地の恵みを未来に継承する上で、今、大きな変換点を迎えていると思います。農研機構では、土壌の状態を的確に捉え、その機能を維持・向上させるための土壌研究が、農業の未来を支えるとの使命感を持って研究開発を推進していきたいと考えています。
