用語集

放射能汚染と農業に係わる専門用語を解説しています。次の索引から検索できます。

バーミキュライト
バーミキュライト
農地土壌に存在する粘土鉱物のひとつ。薄いシート状の層が積み重なる結晶構造を持ち、層間の負電荷がある場所はセシウムイオンを閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴になっている。これまで層間の負電荷に引き付けられていた陽イオンがセシウムイオンと交換すると、層間がせまくなり、他のイオンは入ってこられなくなり、セシウムイオンは固定される。
反転耕
反転耕(はんてんこう)
天地返しともいう。放射性物質で汚染された表層の土を下層へ、下層にあった汚染されていない土壌を表層へ反転させる除染技術。作物への放射性物質の移行量を低下させることができる。また、廃棄物としての排土が発生しない。
避難指示解除準備区域(ひなんしじかいじょじゅんびくいき) 
年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域。当面は引き続き避難指示が継続されるが、復旧・復興のための支援策を実施し、住民が帰還できるための環境整備を図る区域。
農地の保全管理を目的とした一時的な立ち入りと営農の再開が可能であるが、作物の作付については国の指示に従うこととされている。
25年産米については、作付再開に向けた実証栽培(作付再開準備)、または全量管理・全袋検査を要件とする作付(全量生産出荷管理)が可能なところがある一方で、作付制限が実施されるところもある。
表土削り取り
表土削り取り(ひょうどけずりとり)
農業用重機で農地表層の土壌を削り取る除染技術。汚染された農地を利用可能な状態に回復できる。
剥ぎ取り
表土剥ぎ取り(ひょうどはぎとり)
芝を栽培する農地や牧草地で芝の剥ぎ取り機を使い、草と表土をとともに切り取る除染技術。汚染された農地を利用可能な状態に回復できる。
ファイトレメディエーション
土壌に蓄積された汚染物質を植物に吸収させ、土壌を浄化する技術のこと。農地土壌の放射能除染技術として、アマランサス(アオゲイトウ)の栽培などが期待されているが、実用化まで至っていない。
フォールアウト
核実験や原子力事故で放出された放射性物質が、大気中に拡散した後、地上に降下したもの。
不検出(ふけんしゅつ)、ND(Not Detected)
試料の放射性物質濃度の測定値が、検出限界値または定量下限値よりも小さい場合に用いられる表現。
物理的半減期(ぶつりてきはんげんき)
放射性物質が放射線を出す量が半分に減少するまでの時間。農業上問題となるセシウム134の半減期は2年で、セシウム137では30年である。
ふるい下米(ふるいしたまい)
玄米の出荷前に1.7mmから2.0mm以上のふるいにかける選別で、ふるいの下に落ちる米のこと。酒造、米菓、みそ、米穀粉およびビールなどの原材料になり、主食用と比べて安い価格で取引される。放射性セシウムの全量全袋検査の対象の範囲とされている。
プルシアンブルー
プルシアンブルー
ペンキ、クレヨンなどに用いられる青色顔料。セシウム吸着能力をもち、汚染水の放射性セシウムの除去や、牛に与えて牛乳や肉への放射性セシウムの移行を抑制できるという結果が得られている。
フレイド・エッジ
フレイド・エッジ・サイト
放射性セシウムが固定される粘土鉱物の一部分。雲母類の風化により生成したバーミキュライトなどの粘土鉱物の層間がくさび形に開いた部分で、セシウムイオンがこの部分に入ると、層間が閉じて固定される。
フレキシブルコンテナバッグ
フレキシブルコンテナバッグ
ポリエチレンやポリプロピレンなどの丈夫な化学繊維で作られている袋状の入れ物。吊りベルトが付いておりフォークリフトやクレーンで持ち上げるのに適している。除染で生じた土壌などの廃棄物の保管のために用いられる。
分配係数(ぶんぱいけいすう)
土壌中の放射性物質濃度と土壌溶液の放射性物質濃度が平衡状態にある場合の両者の比。土壌と土壌溶液間の放射性物質の平衡移動の指標で、値が大きいほど放射性物質は土壌中に保持され、値が小さいほど放射性物質は土壌溶液に溶け出すことを示す。溶け出した放射性物質は、作物の根から吸収されるとともに、土壌に吸着しながら土壌中を移動する。
ベータ(β)線(べーたせん)
放射線の一つで、原子核から放出される高速の電子をベータ線といい、負の電荷をもつベータ線と正の電荷をもつベータ線(陽電子)がある。透過力はアルファ線よりも強いが、アルミニウム板で遮蔽できる。また、アルファ線と同様に、ベータ線を出す物質を体内に取り込んだ場合、健康影響が生じる。ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどから発生する。
ベクレル
放射能の強さや量の単位で、表記はBq。1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を出す放射能の量を表す。ある物質1キログラムから毎秒100個の放射線が出ることを100Bq/kgと表す。
ベントナイト
ベントナイト
農地土壌に存在する粘土鉱物のひとつ。薄いシート状の層が積み重なる結晶構造で、層間に負電荷を帯び、陽イオンが引きつけられている。この陽イオンはセシウムイオンと交換する性質がある。しかし、バーミキュライトやイライトとは異なり、層間にセシウムイオンが入っても層間は狭くならず、他の大きいイオンが入っていける。この性質を利用して、放射能汚染水中のセシウムイオンを引き寄せて汚染水を浄化した後、再びベントナイトからセシウムを取り出すことができる。
防護手袋
防護手袋(ぼうごてぶくろ)
除染作業などを行う際に、放射性物質の手への付着を防ぐために着用するゴム手袋で、材料には天然ゴムラテックスなどが使われている。そのほかに、医療で被ばくを低減するために用いる含鉛のゴム手袋などがある。
防護服
防護服(ぼうごふく)
放射性物質の人体への付着の防止や放射線を遮蔽するための衣服。前者の防護服には透湿・防水性、耐久性に優れた高密度ポリエチレン不織布などが利用されている。また、後者の防護服には放射線を遮へいする鉛などが用いられ、重量が大きいことが問題となる。
放射性核種(ほうしゃせいかくしゅ)
放射線を放出する原子核の種類のことで、放射性同位体とも呼ばれる。不安定な構造をもつ原子核は、より安定した状態に変化するために放射性壊変し、その際に放射線を放出する。
放射性荷重係数(ほうしゃせいかじゅうけいすう)
同一量の被ばくでも、放射線の種類によって、人体への被ばくの影響の大きさは異なるため、相対的に比較できるように補正する係数。従来は線質係数と呼ばれていた。ベータ線やエックス線の放射性荷重係数は1、アルファ線では20であり、アルファ線による影響はベータ線やエックス線に比べて20倍になる。
放射性セシウム捕捉ポテンシャル、RIP(ほうしゃせいせしうむほそくぽてんしゃる、アール・アイ・ピー)
Radiocesium Interception Potential。放射性セシウムが土壌に固定される量を表わす指標で、土壌に放射性セシウム溶液を添加し、添加前後の放射性セシウム濃度の差から測定される。
放射性物質対策特措法(ほうしゃせいぶっしつたいさくとくそほう)
正式には、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法という。福島第一原発事故による放射性物質で汚染されたがれきや土壌などを処理するための法律。平成23年8月30日に公布され、平成24年1月1日全面施行された。
放射性プルーム
原発事故などにより飛散した放射性物質が、ひとかたまりの煙のように、気流に乗って流れていく現象。放射性雲ともいう。事故の現場から離れた地域で局所的に放射線量が高くなるホットスポットの発生に関与していると考えられている。
放射線量(ほうしゃせんりょう)
アルファ線などの粒子線、ガンマ線などの電磁波など、肉眼に見えない放射線の測定量。測定する目的に応じて線量の概念が異なる。1秒間に放射線を出す回数で示されるもの(単位はベクレル)や、人体が吸収した放射線の影響度を示すもの(単位はシーベルト)、吸収した放射線のエネルギーの量(単位はグレイ)がある。
放射能濃度(ほうしゃのうのうど)
単位体積、単位質量当たりの放射能のことをいう。単位はBq(ベクレル)/kg、Bq/?などで、食品衛生法上の暫定規制値をはじめ、河川、農地土壌、稲わら、牧草、堆肥などの放射能検査・分析結果の表示で用いられる。
防塵マスク
防塵マスク(ぼうじんますく)
除染作業などを行う際に、放射性物質の吸入を防ぐために身につけるマスク。ポリプロピレンなどの不織布を用いた使い捨て型マスク、フィルターを交換できる鼻と口を覆う半面型マスクや目・鼻・口を覆う全面型マスクなどがある。
保管基準(ほかんきじゅん)
放射性物質汚染対処特措法にもとづく廃棄物を適切に保管するための制限や対策。特措法で指定された廃棄物の種類や放射性物質が含まれる量に応じて基準が設定される。具体的には、囲いや掲示板の設置、容器への梱包、地下水汚染防止、放射線の測定・記録などの項目が設けられている。
ポケット線量計
ポケット線量計(ぽけっとせんりょうけい)
個人の外部被ばくを管理するための放射線測定器の一つで、一定時間に受けた積算線量を測定する。胸ポケットに差して用いる。
保護ゴーグル
保護メガネ、保護ゴーグル(ほごめがね、ほごごーぐる)
除染作業などを行う際に、放射性物質を含んだ微粒子が目に入ることを防ぐために着用するメガネ。目を覆い、顔面に隙間なく装着する。


ホットスポット
局地的に空間線量率や放射性物質濃度の高い地点や地域のことをいう。放射性プルームの上から雨が降った場所やこれらの雨水が最終的に集積する場所はホットスポットになりやすい。