用語集

放射能汚染と農業に係わる専門用語を解説しています。次の索引から検索できます。

最終処分施設(さいしゅうしょぶんしせつ)
中間貯蔵施設で保管された放射性廃棄物が、最終的に搬入・処理される施設。国は最終処分を福島県外で行うとしている。現状では、放射性物質や放射能レベルを低減化する技術開発が途上段階にあり、最終処分のあり方について具体的に明示されていない。
作付再開準備(さくつけさいかいじゅんび) 
放射性セシウムの基準値 100Bq/kg を超えない農作物のみを出荷するための方針の一つで、25年産米の作付等に関する方針で設けられた区分。
県および市町村が策定した管理計画の下、作付再開に向けた実証栽培を行うことで、生産される米は全量管理・全袋検査が実施される。25年産米では、避難指示解除準備区域など今後1、2年程度で作付再開を目指す地域で実施される。
作付制限(さくつけせいげん)
放射性セシウム濃度が基準値 100Bq/kg を超えるおそれのある農作物の栽培を制限すること。
25年産米では、放射性セシウム濃度が基準値を超えない米を生産できることが検証されていない帰還困難区域などの地域で、作付が制限された。
シーベルト
放射線が人体へ与える影響を示す単位で、表記はSv。放射線の影響は、放射線の種類と対象組織によって異なる。受けた放射線量を示すグレイに放射線の種類や対象組織ごとに定められた修正係数をかけた値と定義される。
市場希釈係数(しじょうきしゃくけいすう)
経口摂取による被ばく線量を算出する際に使われる係数で、食品摂取量のうち、放射性物質で汚染された食品の割合。日本では0.5(50%)に設定されている。適当な値が設定できない場合は1とされ、全ての食品が汚染されているとみなす。
自然放射線(しぜんほうしゃせん)
宇宙線、天然放射性核種からの放射線など自然界に存在する放射線。ウラン238やトリウム232などの天然放射性核種のうち、カリウムの同位体カリウム40が大部分を占める。
実効線量(じっこうせんりょう)
生物が被ばくした時、体全体に及ぼす放射線の影響の大きさ。個々の臓器が受ける放射線の影響を示す等価線量に、各臓器への影響の程度を補正する組織荷重係数をかけた値について、全ての臓器分を合算して算出する。
実効線量係数(じっこうせんりょうけいすう)
体内に取り込んだ放射性物質の量と、被ばく線量の関係を表す係数。体内に取り込んだ放射性物質の量に実効線量係数をかけると、組織や臓器が受ける被ばく線量を求めることができる。放射性核種ごとに、吸い込んだ場合と食べた場合の二つの係数が設けられている。セシウム137の場合、吸い込んだ場合は6.7×10-6ミリシーベルト/ベクレルで、食べた場合は1.3×10-5ミリシーベルト/ベクレルである。
湿性沈着(しっせいちんちゃく)
放射性物質などが、雨、霧や雪など大気中にさまざまな形で存在する水分を媒体にして、地表に降下する現象をいう。
指定基準(していきじゅん)
放射性物質汚染対処特措法にもとづき、高いレベルで汚染された廃棄物を適切に管理するため、設定された基準で、8,000Bq/kgとされる。指定基準を超える廃棄物は指定廃棄物と呼ばれ、国の責任で処理される。指定基準以下の廃棄物は、特定一般廃棄物、特定産業廃棄物、その他の廃棄物に分かれる。
シューズカバー
シューズカバー
除染作業などを行う際に、靴や足への放射性物質の付着を防ぐために靴の上から着用するカバー。防護服のすそを包み込み固定する。ポリエチレン製の使い捨てタイプが一般的である。
出荷制限(しゅっかせいげん)
食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性物質が検出された食品について、出荷を差し控え、市場流通から隔離すること。福島県や茨城など17都県の地方自治体で定期的に行われる食品の放射性物質の検査結果を受けて、国が出荷制限の対象となる品目と区域(産地)を設定し、県や関係事業者に要請する。
詳細検査(しょうさいけんさ)
NaIシンチレーションスペクトロメータなどによる玄米の全量全袋検査のスクリーニング検査の結果、放射性セシウム濃度が基準値の 100Bq/kg を超過するおそれがあると判断された玄米を、さらにゲルマニウム半導体検出器を用いて正確な濃度を測定すること。
食品衛生法の暫定規制値(しょくひんえいせいほうのざんていきせいち)
食品衛生法に定められている「有害な物質などが含まれる食品の販売などを禁止する条項」に該当する際の線引きとなる数値のこと。値は、法律で定められておらず、政府が別途定める。原発事故に伴う食品の放射能汚染に対し、厚生労働省は、原子力安全委員会により示された「飲食物摂取制限に関する指標」を暫定規制値とすることを各自治体に通知した。平成24年4月からは、長期的な観点から新たな基準値が定められている。
除染(じょせん)
環境を汚染している放射性物質を取り除き、人体が受ける被ばく線量を減らすこと。取り除いた放射性廃棄物は遮へいなどにより管理された上で、処分される。原発事故による被ばく線量を、年間1ミリシーベルト以下にすることを目標として行われる。
除染実施区域(じょせんじっしくいき)
放射性物質汚染対処特措法にもとづく汚染状況重点調査地域の都道府県知事または市町村の長が定める除染実施計画の対象となる区域。
除染実施計画(じょせんじっしけいかく)
放射性物質汚染対処特措法で指定された汚染状況重点調査地域内で除染活動を進めるための計画。都道府県知事または市町村長が策定し、国はこの計画にもとづいて除染費用を負担する。
除染特別地域(じょせんとくべつちいき)
放射性物質汚染対処特措法で定められる地域のひとつ。土壌などの除染を国が行う必要があるとされる地域で、福島県の11市町村が指定されている(平成25年5月7日現在)。
シリコン半導体検出器
シリコン半導体検出器(しりこんはんどうたいけんしゅつき)
半導体を利用した放射線検出器で、土壌や農作物などの試料中のアルファ線を測定して、プルトニウムやウランなどの放射性物質の濃度を測定する。
深耕(しんこう)
放射性物質で汚染された表層の土壌を、深耕用ロータリーティラーなどで30cmの深さを基本として、2回程度耕して、放射性物質濃度を希釈する除染方法。廃棄物としての排土が発生しない。
人工放射線(じんこうほうしゃせん)
核実験、原子炉事故、医療分野でのレントゲン検査など人工的に作り出された放射線。人工放射線を発生させる放射性核種は、体内に濃縮し、蓄積される。
水溶性セシウム(すいようせいせしうむ)
土壌中の水に溶けているセシウムのこと。作物の茎や根から吸収される。濃度は非常に低く測定は困難である。
スクリーニングレベル
玄米の全量全袋検査のスクリーニング検査において、放射性セシウム濃度が基準値 100Bq/kg を確実に下回ると判定できる値のこと。
機種によってその値は異なるが、厚生労働省が定める「食品中の放射性セシウムスクリーニング法」では、基準値の 1/2 以上(50Bq/kg)とされている。
ストロンチウム89
ストロンチウムの放射性同位体で、ウランなどの核分裂によって生成する。半減期50日であり、放射性壊変によって速やかに減衰する。化学的性質はストロンチウム90と同様である。
ストロンチウム90
ストロンチウムの放射性同位体で、半減期28.8年。ウランなどの核分裂によって生成する。化学的性質はカルシウムに似ている。人間の体内に取り込まれると骨に集まる傾向があり、白血病を引き起こす原因となる。大気中に放出されたストロンチウムは、作物の葉面などへ沈着し吸収される。また、土壌に降下し根を通じて作物へ移行する。土壌中では2価の陽イオンとしてふるまい、セシウムに比べて粘土鉱物に固定されない。
生体濃縮(せいたいのうしゅく)
生物体に取り込まれた放射性物質が濃縮すること。取り込まれた放射性物質が体内にとどまる性質をもつ場合、排出能力の限度以上に取り込まれると濃縮する。
生物学的半減期(せいぶつがくてきはんげんき)
生物の体や特定の組織、臓器に入った放射性物質の量が、代謝や排せつによる体外に排出されて半分に減少するまでの期間。牛における放射性セシウムの生物学的半減期は60日である。牛が放射性セシウムを含んだ飼料を食べた後、放射性セシウムを含まない飼料に切り替えれば、体内の放射性セシウムはふんや尿とともに次第に体外へ排出され、60日後に半分になる。
ゼオライト
ゼオライト
凝灰岩層から産出し、沸石とも呼ばれる鉱物。三次元的な骨格を持ち、構成元素や性質が類似する鉱物の総称で、種類は非常に多い。骨格中のアルミニウム周辺が負電荷を帯び、陽イオンが引きつけられる。この陽イオンはセシウムなどの陽イオンと交換する性質がある。また、骨格中には分子レベルの穴があり、そこへセシウムイオンが入り込み固定される。牛の胃中の放射性セシウムを吸着するために飼料に添加することがある。
セシウム134
放射能汚染の原因となる主要な核種。セシウムの放射性同位体で、半減期は2年。核分裂では生成しないが、核分裂生成物の崩壊で生じるセシウム133が中性子を捕獲して生成する。化学的性質はセシウム137と同様である。
セシウム137
放射能汚染の原因となる主要な核種。セシウムの放射性同位体で、半減期は30年。ウランなどの核分裂によって生成する。化学的性質がカリウムに似ており、体内に取り込まれると筋肉に集まる傾向がある。大気中に放出されたセシウムは作物の葉面などへ沈着し吸収される。また、土壌に降下し粘土鉱物に取り込まれるが、一部は根を通じて作物へ移行する。
全袋調査(ぜんぷくろちょうさ)
福島県内で生産された販売用の米、自家消費米および加工用米など全ての米を対象に米袋中の玄米の放射性セシウム濃度を検査すること。食品衛生法上の放射性セシウム濃度の基準値の100Bq/kgを超える米を流通させないように実施されている。検査は、厚生労働省が定めるスクリーニング法により行われ、NaIシンチレーションスペクトロメータなどの分析機器が用いられる。検査の結果、スクリーニングレベルを超過した米袋については、スクリーニングレベル以下の米袋と区分して一時保管し、ゲルマニウム半導体検出器において詳細検査を行う。この詳細検査の結果、基準値を超過した場合は、生産地の確認や必要に応じて出荷制限等の対策をとる。
全量生産出荷管理(ぜんりょうせいさんしゅっかかんり) 
放射性セシウムの基準値 100Bq/kg を超えない農作物のみを出荷するための方針の一つで、25年産米の作付等に関する方針で設けられた区分。
県および市町村が策定した管理計画の下、吸収抑制対策の実施および全量管理・全袋検査を要件として、作付を行うこと。24年産米で作付のなかった地域や 100Bq/kg を超える放射性セシウムが検出された地域で実施される。
線量当量(せんりょうとうりょう)
被ばくによる生物への影響の大きさを相対的に示すもので、単位はシーベルト(Sv)。同一量の被ばくでも、放射線の種類や被ばくした箇所により影響が異なることを勘案している。例えば、被ばくした放射線量が同じ場合、アルファ線による影響は、ベータ線やエックス線に比べて20倍になる。線量当量には等価線量と実効線量がある。
粗皮削り
粗皮削り(そひけずり)
放射性物質の付着した果樹の樹体を削る除染技術。本来は、病害を防ぐために越冬虫を粗皮(古くなり剥がれかかった樹皮)ごと取り除く作業のこと。粗皮が形成され、これらを取り除くことが可能なブドウ、ナシ、リンゴなどの樹種を対象とする。専用の削り器具を使用して、かき落とすように粗皮を削る。
組織荷重係数(そしきかじゅうけいすう)
人体の組織や臓器が受ける放射線の影響の違いを補正するための係数で、組織・臓器ごとに設けられている。具体的には、生殖腺で0.20、肺や胃などで0.12、甲状腺や肝臓などで0.05、皮膚や骨表面で0.01、残りの組織は0.05である。