コラム
ノシメマダラメイガの赤い糞
ノシメマダラメイガは食品への混入事例の非常に多い蛾です。幼虫は米や菓子類、香辛料などを食べ、糸を綴り、多数の糞をします。
この幼虫の糞が赤い色をしているために本種は簡単に見分けられると書いている文献やウェブ上の情報が多数あります。当研究所が公開している「貯穀害虫・天敵図鑑」でもこのように記述していました。私たちはこの記述に疑問を持ちました。それはノシメマダラメイガなどを飼育してみて、ノシメマダラメイガの糞だけが特別に赤いようには思わなかったことと海外の文献にはこのような記述がみられないことによります。
それで実際にノシメマダラメイガやその他の虫の糞を回収して比較してみました。すると、ノシメマダラメイガの糞では、全体が赤いわけではないものの、確かに赤い色素の混じった粒が確認できます。しかし、ノシメマダラメイガと同じメイガ科マダラメイガ亜科に属するチャマダラメイガ、スジコナマダラメイガ、スジマダラメイガでも同様に赤い色素を確認することができます。
よって、赤い色の糞があったからと言ってノシメマダラメイガであるとは限らないことが明らかになりました。メイガ科ツヅリガ亜科のガイマイツヅリガやコウチュウ目のコクゾウムシでは赤い色素は確認できず、これらとマダラメイガ亜科の蛾を分ける特徴である可能性はあります。
更にノシメマダラメイガとスジマダラメイガで発育に伴い糞の色がどう変化するかを見てみました。すると幼虫の発育の後期には赤い色素の混じった糞をするのですが、前期の糞では赤い色素が確認できませんでした。よってノシメマダラメイガが常に赤い色の糞をするわけではないことが明らかになりました。
ノシメマダラメイガ幼虫は確かに赤い色素の混じった糞をするのですが、他のマダラメイガ亜科の蛾も同様であることと、ノシメマダラメイガ幼虫にも赤い色素の混じった糞をしない時期があることから、今まで書かれていた記述は正確ではないと言えるでしょう。
ちなみにこの赤い色素はスジコナマダラメイガでは既に調べられており、オモクローム類のキサントマチンであると同定されています。
参考文献
- 今村・宮ノ下(2008)家屋害虫,30(1): 1-7.
- Imura and Shibuya(1979)Appl. Entomol. Zool., 14(2): 221-223.
関連情報
更新日:2019年02月19日