活動記録:2025(令和7)年度
  • 当該年度のスタッフの活動状況やニュースを新しいものから並べています。
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 ❖カモ類等によるれんこん食害を食痕から把握する標準作業手順書を公開(R7.10月)
「れんこんへの『カモ被害』把握のための食痕識別標準作業手順書」を2025年10月15日に公開しました。(画像をクリックすると閲覧できます)
カモ類とバン類の⼀部の鳥(マガモ、カルガモ、オオバン)が泥中のれんこんを食べることを解明し、その食痕の形の特徴を鳥のくちばしの形と対応させて整理した成果に基づく資料です。
れんこん産地で得られた様々な食痕の実例写真を多数収録し、病虫害等による傷との違いや、どの鳥による食害と考えられるかを解説しています。生産者による被害確認や、自治体による毎年の被害調査において、正確な被害把握に活用できます。

農研機構プレスリリースはこちら
農研機構の標準作業手順書(SOP)公開仕様が変更され、サンプル版のみが公開されています。リンク先から利用者登録をしていただくと、本編を無料で閲覧 ・ダウンロードできます。

 ❖「PeerJ」誌にニホンジカの農作物採食による「銀の匙効果」に関する論文を執筆(R7.8月)
PeerJ誌13巻に、秦・佐伯・小坂井らが「Silver-spoon effect in agricultural crop consumers: crop consumption enhances skeletal growth in sika deer」を執筆しました。
https://peerj.com/articles/19836/

農地を含む景観に生息する野生動物が農業活動から受ける影響を定量的に評価することは、対象種の個体群管理戦略を考える上で重要です。長期的な農作物採食がニホンジカの骨格成長にもたらす影響を調査したところ、メスでは農作物を食べると成長速度が最大1.5倍加速し、その胎子の後足長も最大15%大きくなることが分かりました。長期に渡る農作物の採食は同じ個体群内であってもシカの骨格成長に個体差を生じさせるとともに、母シカの採食は次世代に胎子期の段階から「銀の匙効果(※)」をもたらすことを明らかにしました。(写真は牧草地に現れた母と子のニホンジカ)

(※)銀の匙(さじ)効果:欧米では裕福な家庭に生まれることを「銀の匙をくわえて生まれてくる」と表し、生まれた子供の幸福や健康を願い銀の匙を贈る文化があります。生態学では、成長段階で良好な環境条件(例えば高栄養な食物摂取など)に晒されることでその後の個体の適応度に正の影響をもたらすことを「銀の匙効果("silver-spoon" effect)」と呼びます。

 ❖ 「保全生態学研究」誌に長野県東部シカ集団の基盤情報に関する論文を執筆(R7.5月)
保全生態学研究誌に、秦・佐伯らが「浅間山周辺ニホンジカ集団の齢構成・繁殖および成長特性」を執筆しました。
https://doi.org/10.18960/hozen.2425

ニホンジカは地域の気候や食物利用可能性、捕獲圧等様々な要因によって個体数が変動することが知られています。そのため対象地域に生息する集団の齢構成や妊娠率等の個体群動態に関わる基礎的な情報の把握は、地域の実態に即した管理計画を策定する上で重要です。
そこで2000年代に分布が拡大し個体数が増加したと考えられる長野県東部浅間山周辺地域に生息するシカ集団を対象に、齢構成、繁殖・成長特性に関する基礎情報を明らかにしました。その結果、幼獣生存率の低下が生じている可能性が低いこと、成獣妊娠率が高いことから個体群の増加は抑制できていないと考えられました。一方で、近年の高密度化に伴い初産齢の遅延や体の成長速度の低下が生じている可能性が示唆されました。個体数の更なる増加抑制には引き続き高い捕獲圧をかける必要があるとともに、継続した捕獲個体の分析によるモニタリングと評価が必要であると考えられます。(写真は対象調査地で捕獲されたニホンジカの頭蓋骨標本)

 ❖ グループ内構成が変わりました(R7.4月)
2025年4月より、遠藤が再びグループの一員となりました。イノシシの生態や豚熱対策の研究に携わります。よろしくお願いします。
また、山口が研究領域長に、吉田がグループ長に、石川が本部へ異動(併任)になりました。


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