ソルガム・スーダングラスの病害 (1)


モザイク病(mosaic-byo) Mosaic
病原菌:Sugarcane mosaic virus (ScMV)、ウイルス
 症状はトウモロコシと類似する。病原ウイルスはトウモロコシに明瞭な病原性を示し、トウモロコシからのScMVと同一である。


条斑細菌病(jouhan-saikin-byo) Bacterial stripe
病原菌:Burkholderia andropogonis (Smith 1911) Gillis et al. 1995、バクテリア
 温暖地で特に多雨時に多発する斑点性の細菌病。梅雨期から短い線状の病斑を形成するが、これが長く伸びて赤紫色、条状、長さ2〜20cm以上の病斑になる。さらに病勢が進むと、病斑が互いに融合し、葉全体が赤紫色に枯れる。多湿条件下では新鮮な病斑の表面に菌泥が噴出し、伝染源となる。病原細菌はトウモロコシのものと同種であるが、細かい性質が異なっている可能性もある。


赤かび病akakabi-byo, 病名未登録) Head blight
病原菌:Fusarium thapsinum, Gibberella sp.、子のう菌
 暖地での発生が多い穂をかびさせる糸状菌病。夏の終わりから秋にかけて発生し、穂に淡紅色または鮭肉色のかびを生じる。病勢が進むと紫黒色となり、穂軸まで侵されることもある。


麦角病(bakkaku-byo) Ergot
病原菌:Claviceps sorghicola Tsukiboshi, Shimanuki et Uematsu, C. africana Frederickson, Mantle et Milliano (=Sphacelia sorghi Mcrae)、子のう菌

C. sorghicola


C.africana

 家畜毒性が懸念されるソルガムの重要な糸状菌病。盛夏に蜜滴を穂から垂れ下がるように形成し、この中には多量の分生子が含まれ、これが風雨で飛散して花器感染を繰り返しまん延する。日本で発生する病原菌は二種あり、C. sorghicolaでは、秋口に牛の角状、表面は白色のかびに覆われ、その下は黒紫色、長さ0.5〜3cmの固い麦角を形成する。激発時はすべての穎花が麦角化する。C. africanaでは麦角は白く、柔らかく、あまり目立たない。C. sorghicolaは関東を中心に、C. africanaは九州を中心に発生する。


葉焼病(hayake-byo) Kabatiella leaf blight
病原菌:Kabatiella sorghi Nishihara et Yokoyama、不完全菌
 冷涼地を中心に発生する糸状菌病。夏から秋にかけて主に葉に発生する。初めは小点状だが、後に赤褐色の細かい病斑となり、周囲に淡褐色のかさを生じる。品種によっては黄褐色の病斑となることもある。この病斑がやがて融合して葉が枯れ、焼けたようになる。まん延は病斑上の分生子の飛散により、また種子伝染することも知られる。


縁葉枯病(fuchi-hagare-byo) Curvularia leaf blight
病原菌:Curvularia lunata (Wakker) Boedijn、C. intermedia Boedijn、不完全菌
 マイナーな糸状菌病。病斑は葉の縁に形成されることが多く、褐色で楕円形から不定形となる。本病の発生はスーダングラスの特定品種に限られる。病原菌のうち,C.lunataは海外では穂枯れを引き起こすとされている。


ひょう紋病(hyoumon-byo) Zonate leaf spot
病原菌:Gloeocercospora sorghi Bain et Edgerton ex Deighton、不完全菌
 最近特に温暖地で発生が増えつつある糸状菌病。梅雨期に入ると下葉から小型の赤色または紫色の斑点を形成し、これが徐々に拡大する。ある程度広がると赤紫色の輪紋状病斑となり、ちょうど豹のまだら模様のようになる。病斑は大型で長さ0.5〜5cm、幅0.2〜5cmにもなる。多湿条件では葉の表面にピンク色の粘塊状の分生子塊を形成し、これが風雨などで飛散してまん延する。病斑が古くなると、罹病組織内に黒色で直径0.2mm程度の微小菌核を形成して越冬し、翌年の伝染源となる。ソルガムからファイトアレキシンとして抽出されたメトキシアピゲニジンはひょう紋病菌に対して強い抗菌活性を示す。既存品種系統の抵抗性検定が行われている。


糸黒穂病(itokuroho-byo) Head smut
病原菌:Sporisorium reilianum (Kuhn) Langdon et Fullerton、担子菌
 19世紀終わりに関東地方で発生し、その後報告がなかったが、2004年に九州で再発した。穂ばらみ期から出穂期にかけて葉鞘を破って黒い糸状の菌糸体が露出し、大量の黒穂胞子を飛散する。黒い糸状の組織は発病後に残った植物組織で、大量の胞子層を伴い、これが本病の特徴となる。黒穂胞子は地面に落ちて10年程度まで生存し、翌年の伝染源となる。


黒砂病(kurosuna-byo) Dactuliophora leaf spot
病原菌:Dactuliophora harrisii Leakey、不完全菌類


紋枯病(mongare-byo) Sheath blight
病原菌:Rhizoctonia solani Kühn AG-1 TA、担子菌
 激発すれば植物体全体の枯死にもつながる重要な糸状菌病。梅雨前後に地際部から発病し、病斑が葉鞘を伝って上へ進展する。病斑は周縁部赤褐色、中心部灰褐色〜灰白色の雲形斑となる。発生後期には病斑上に褐色で表面が滑らかな菌核をつくり、これが地面に落ちて次の年の感染源となる。高温(特に30℃以上)高湿条件で多発し、罹病葉が隣の葉と接触してまん延する。病原菌はイネ菌と同じ菌糸融合群AG-1、培養型TAであるため、水田跡地で多発することが多い。


紫斑点病(murasaki-hanten-byo) Target spot
病原菌:Bipolaris sorghicola (Lefebvre et Sherwin) Alcorn、不完全菌
 温暖地での代表的な斑点性の糸状菌病。夏の終わりから秋にかけて発生し、赤紫色、楕円形、長さ0.5〜2cm、幅0.3〜1cmの病斑を多数形成する。この病斑は菌が侵入した部分にアントシアン色素が集積したものである。病斑は古くなると、中央部が黄褐色に変色してゆき、やがて全葉が枯死する。品種によっては病斑は黄褐色となる。病原菌は、スーダングラスおよびジョンソングラスにも強い病原性を持つ。抵抗性は単一の劣性遺伝子により支配される。

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