農研機構

公開3

ジーンバンク
現代のノアの箱舟

インタビュアー
なろりん
ダイバーシティの
マスコット

インタビュアー
スジヲ
食と農の科学館に
常駐しているよ

配布用の種子が収められている

配布用種子庫が見学の最初の施設になります。見学者の方は、この種子庫の大きさに目を見張ります。このように整然と保存された種や、ロボットが保存容器を取り出す様子などは皆さん驚かれます。

お話を伺った人

基盤技術研究本部
遺伝資源研究センター植物資源ユニット
馬場 晶子上級研究員

ジーンバンク事業技術室
根本 博さん

どのくらいの種が収蔵されていますか?

世界中から集められた植物遺伝資源が約10万点あります。以前は稲、麦、大豆が中心でしたが、今は東南アジアの野菜の種が増えています。特に気候変動への適応策として暑さに負けない品種の改良が進められていて、研究現場や民間企業から野菜の多様な遺伝資源がほしいという要望があります。東南アジアの昔からの品種は暑さに強い特性を持っていますからね。

なぜたくさん集めるの?

どういう品種がこの先に必要かはわからないですよね。例えば、ある研究者が「この在来種のナスは○○病に強いことがわかった」と論文に書いたとします。その数十年後、ナスにその病気が広がったとき、「論文で報告されている○○病に強いナスの種が今は(もう)ない」ということがないように種を保存するのです。いろいろな種類の作物の遺伝資源を、今役に立つことも重要ですが、未来のためにとにかく保存していることが大事です。こうした活動から、ジーンバンクは「現代のノアの箱舟」と呼ばれることがあります。保存されている遺伝資源は、農研機構の将来の研究成果にもつながり、日本の財産でもあるのです。

ジーンバンクのすごさって?

稲と豆の遺伝資源の保存数は世界でもトップクラスです。特徴的なのは、ジャガイモです。組織の一部を液体窒素の中で超低温で保存する技術です。ジャガイモは毎年栽培することで種イモを維持していますが、この技術のおかげで栽培する品種を減らすことができました。液体窒素の中でも、マイナス196°Cという低い温度の中ではすべての生理活動が停止するんです。半永久的に保存できます。解凍技術もあるので、ほぼ100%回復できます。動物・微生物も超低温で保存しています。

超低温で保存するためのタンクが並ぶ
湿度、温度を徹底して管理することにより、
8割以上の高い発芽率を維持

今心配していることはありますか?

特に今、東南アジアは経済発展が進んで、昔ながらの品種がどんどんなくなっています。一度なくなった品種は復活させることができません。なくなる前に集めないといけないと心配しています。温暖化が原因かもしれませんが、作物にこれまで日本になかった病気が出ているんです。そういった植物の病気に対して抵抗性をもつ遺伝資源は、東南アジアの遺伝資源からよく見つかっています。

発芽率を確認する作業