特集2 米作りのイノベーション
直播栽培最前線

直播栽培には乾田直播栽培と湛水直播栽培があります。
また、直播栽培に関する栽培技術も進化しています。
農研機構で開発した直播栽培及び関連の技術について紹介します。
直播栽培技術
農家さんにとって役立つ技術として普及活動を進めている2つの技術です。
乾田直播栽培
拡大中!プラウ耕鎮圧乾田直播栽培



技術の特徴
プラウ耕鎮圧乾田直播栽培
輪作稲作
プラウでの深耕とローラでの鎮圧を行う乾田直播では、移植で不可欠な耕盤層が不要です。排水性が改善されるため、麦・大豆などとの輪作に適しています。
漏水対策
「パワーハロー」での播種床造成や「ケンブリッジローラ」などによる鎮圧作業を行うことで、安定した苗立ちが得られ、漏水対策になります。
高速作業体系
大規模畑作で麦用に使われている播種機「グレーンドリル」や、耕起に「スタブルカルチ(チゼルプラウ)」などを用いる高速作業体系です。

「乾田直播栽培技術マニュアル-プラウ耕鎮圧体系-」(2021年3月)※写真は改訂3.2版
湛水直播栽培
新しい湛水直播栽培「かん湛!」

トラクタに搭載された代かき同時播種機
「かん湛!」は「無コーティング種子」と「代かきと同時に浅い土の中に種をまく」という技術を組み合わせています。30アールを1時間で一人で播種できることもあり、省力な新しい湛水直播栽培方法として注目されています。

「水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培マニュアル」(2021年2月)※写真は改訂6版
技術の特徴
水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培
播種機
浅層土中播種するための播種と代かきが同時にできる播種機が開発されました。手持ちのトラクタに装着して使用でき、機械への投資を抑えます。
浅層土中播種
無コーティング種子の出芽を安定させるために種子を深さ「5ミリ以内の浅い土中」に播種します。播種直後の鳥害や苗立ち不良も軽減できます。倒伏しにくい品種が栽培に適しています。

「催芽種子(播種前に発芽を始める状態にした種子)」より根のみを伸ばした種子「根出し種子」がおすすめです。
直播栽培関連技術
直播栽培が拡大する中で、様々な課題を解決する技術が開発されています。
乾田直播 乾田直播栽培向け技術
湛水直播 湛水直播栽培向け技術
直播選択ドットネット
乾田直播 湛水直播
http://chokuhasentaku.net/
東北地方を対象としていますが、どんな直播栽培方法があなたに適しているかを知ることができます。
(東北農業研究センター)

「さんさんまる」
乾田直播 湛水直播
「さんさんまる」は、北海道の直播栽培向け極良食味品種です。草丈が低いため倒れにくく直播栽培では多収で、「ゆめぴりか」と同じ低アミロース性により粘りと柔らかさに優れています。北海道の主力品種に引けを取らない食味と、直播栽培による低コスト・省力化の両立を実現しました。おいしくて楽に作れ、生産者と消費者の双方にメリットのある品種を農研機構は開発しています。
(北海道農業研究センター)
高精度な均平マップが作成できるプログラム
乾田直播
https://www.naro.go.jp/laboratory/harc/contents/kouteisa_map/index.html
ほ場に高低差があると苗の成長不良や雑草の繁茂につながるため、均平作業により、ほ場の面を平らにすることが重要です。その作業を効率的に行うため、農研機構は高精度GNSSの位置情報からほ場内の高低を示したマップ(高低差マップ)を作成するプログラムを開発しました。視覚的にわかりやすいと評判です。
(北海道農業研究センター)

均平作業を支援する「均平作業用高低差マップ」の例

GNSS搭載のトラクタ
畝立て乾田直播機
乾田直播
スクミリンゴガイの食害防止
深刻なスクミリンゴガイの食害を回避するために有効な技術が畝立て直播です。水稲・麦・大豆などを播種でき、高水分条件でも表面を硬く、台形状の畝を成形しながら畝の天面に播種することで、ほ場の漏水や湿害を防止します。
(九州沖縄農業研究センター)

畝立て乾田直播機

スクミリンゴガイ
- 漏水防止と湿害回避機能を備えた 畝立て乾田直播機 (外部リンク)
ノビエ防除支援システム
乾田直播
乾田直播の天敵である雑草・ノビエ
乾田直播栽培の課題の一つに雑草の防除があります。ノビエの葉齢を予測することで、適期に除草剤をまくことができるように支援するシステムです。
(西日本農業研究センター)

ほ場のノビエ

「乾田直播栽培体系におけるノビエ防除支援システム標準作業手順書(中国地域版)」(2022年4月)
種子のコーティングコストを下げる技術
湛水直播
種もみが湿った土中で芽を出すのを助けるため、まく前にカルパー剤でコーティングするのが一般的でした。より材料費が安く、簡単なコーティング技術を農研機構は開発しています。
鉄コーティング湛水直播
種子を鉄粉でコーティングして重くし、代かき後、湛水または落水状態で土壌表面に播種します。
(西日本農業研究センター)

「鉄コーティング湛水直播マニュアル」
(2010年3月)

水稲べんモリ直播
比重を大きくするためのべんがら(酸化鉄)を主成分とし、機能性成分としてモリブデン化合物、接着剤としてポリビニルアルコールを含んでいます。
(九州沖縄農業研究センター)

「水稲べんモリ直播マニュアル」(2019年12月)
