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作物の全ゲノム解析(かいせき)とバイオインフォマティクス / 「天敵」を活用した「害虫防除」技術

基盤技術研究本部

気候変動や病気に強い新しい品種をつくる
作物の全ゲノム解析と
バイオインフォマティクス

基盤技術研究本部

気候変動や病気に強い新しい品種をつくる
作物の全ゲノム解析とバイオインフォマティクス

遺伝(いでん)資源研究センターでは、たくさんの作物や、微生物(びせいぶつ)、動物の品種を保存しています。これらは、将来、環境が大きく変化したときでも、ちゃんと収穫(しゅうかく)できる作物を作り出すためのもとになる「遺伝資源」です。

江花薫子(えばなかをる) 研究員
遺伝資源研究センター

研究のためには、保存するだけではなく、それぞれの品種の良い特徴(とくちょう)や悪い特徴を調べる必要があります。

遺伝子は、その生物の性質や特徴などに大きく関わるんだよ。

研究に使う遺伝資源を探す

生物は、たくさんの遺伝子を持っています。それをまとめて「ゲノム」と呼んでいます。「ゲノム解析」とは、いろいろな作物が持っている遺伝子の中身を調べて、作物の特徴と関係が深い遺伝子を探し出すことです。以前は、ゲノム全体を調べるのは、たくさんの手間と時間が必要でした。最近は、短い時間で正確なゲノム情報がわかる技術があるので、多数の品種を短い時間で調べることができます。

農業生物資源ジーンバンク

[保存系統数]
●植物 約23万点●動物 約2千点●微生物 約3.7万点(2022年時点)

多様な作物・多様な遺伝資源を保存

調べたたくさんのデータから、必要な遺伝子情報を素早く探し出す手段に、最新技術の「バイオインフォマティクス」があります。

ゲノム解析されたイネの遺伝子

この結果、ストレスや病気に強かったり、たくさん収穫できたり、農業で重要な遺伝子がわかるので、それを使って品種改良を素早くできるようになります。

温暖化に強い品種
にこまる

田畑くん「わあ、すごいね!」

研究セグメント Ⅳ

農薬にたよらない
天敵を活用した害虫防除(ぼうじょ)技術

研究セグメント Ⅳ

農薬にたよらない
天敵を活用した害虫防除(ぼうじょ)技術

ハダニ(植食性のダニ)はリンゴやミカンなどの果樹にあっという間に増えて、防除が難しい害虫だ。ハダニが増えると、農薬を使う必要があるし、くだもののできも良くない。しかも、農薬に強いので、新しい農薬もすぐに効かなくなってしまうんだ。

ハダニ(植食性のダニ)はリンゴやミカンなどの果樹にあっという間に増えて、防除が難しい害虫だ。ハダニが増えると、農薬を使う必要があるし、くだもののできも良くない。しかも、農薬に強いので、新しい農薬もすぐに効かなくなってしまうんだ。

外山晶敏(とやままさとし) 研究員
植物防疫研究部門

ハダニは高温な環境(かんきょう)が大好きで、温暖化(おんだんか)が進むと防除はますます難しくなる。このままでは、たくさんの農薬を散布(さんぷ)しても防除ができなくなってしまいそうなんだ。

田畑くん「そんなことが!」

「天敵」を利用して害虫を防除する技術のことを「生物的防除」と言い、環境にも人にもやさしい技術として研究が進められています。ハダニにも、カブリダニ(捕食(ほしょく)性のダニ)という有力な天敵がいます。果樹園にも自然のカブリダニがすんでいて、それらは「土着天敵」と呼ばれています。カブリダニがすみやすく、働きやすい果樹園の環境を作ってあげることで、化学農薬の使用を大きく減らすことができます。

一方、ハウスのような施設栽培(しせつさいばい)などでは土着天敵が思うように増えず働きが不十分なこともあります。そんなときは、人工的に増やして生物農薬として販売されている「天敵製剤(せいざい)のカブリダニたちが助っ人(虫)として活躍(かつやく)します。

このように、天敵で害虫を防除する技術をつくりました。今は、いろいろな果樹に合わせた天敵による害虫防除の管理技術ができています。

天敵を利用するっておもしろいですね。農業に役立つ虫がいるんだ!

天敵にやさしい=多くの生き物に影響が小さい
害虫の管理技術が普及(ふきゅう)すれば、生物多様性や環境の保全に貢献(こうけん)することができるよ!

詳しくはNARO channelで!