農研機構

特集 SDGsから知る!農研機構

温暖化適応品種 / アミノ酸バランス改善飼料

研究セグメント Ⅲ

気候変動の影響を小さくする
温暖化(おんだんか)適応品種

研究セグメント Ⅲ

気候変動の影響を小さくする
温暖化(おんだんか)適応品種

温暖化で、気温が高くなると、くだものはどうなるの?

果樹(かじゅ)茶業研究部門の研究者
ブドウの研究者
夏や秋の気温が高くなると、黒色のブドウは色が(うす)くなりやすいんだ。
冬の気温が高くて、モモの栽培が難しくなる地域が拡大(かくだい)する(おそ)れがあるんだ。
モモの研究者
リンゴの研究者
リンゴが赤くなくなったり、実がやわらかくなったりするんだ。
なろりん「農家さんがこまっちゃうね」

新しいブドウの品種「グロースクローネ」は、暑い地域(ちいき)でも色が薄くなりにくいんだ。

尾上典之(おのうえ のりゆき) 研究員

グロースクローネ

「グロースクローネ」はスーパーでよく見かける「巨峰」や「ピオーネ」より、黒色が()いんだ。暑くても黒色が薄くなりにくい秘密は、色を着きやすくする遺伝子をたくさん持っているから。この遺伝子をたくさん持っているブドウを組み合わせて、暑くてもちゃんと黒色になるブドウの品種改良を続けているんだよ。

秋や冬に葉が落ちるモモなどの落葉果樹が春に花を咲かせるには、ある程度の時間、冬の寒さを経験しないといけないんだ(低温要求時間)。

八重垣英明(やえがき ひであき) 研究員

さくひめ

温暖化で冬の気温が高くなると、低温要求時間の不足で、モモの外での栽培が困難となる地域が拡大するかもしれない。そこで、ブラジルの暑い地域でも栽培できるモモと日本のモモを組み合わせて、日本でも作れる低温要求時間が短いモモ品種を作ったんだ。温暖化で気温が高くなっても、おいしいモモを日本でも作ってほしいからだよ。

人気のあるリンゴ「つがる」は、地球温暖化による高温で、色が良くなかったり(着色不良)、実がやわらかくなりすぎたり(軟化(なんか))することが問題だ。

澤村豊(さわむら ゆたか) 研究員

紅みのり

錦秋(きんしゅう)

着色不良のリンゴは見かけが悪く、軟化したリンゴはおいしくないため、どちらも商品としての価値(かち)が低くなります。そのため、高温でも赤く色づき、実がやわらかくならないリンゴの品種を農家さんは求めていたんだ。そして、「紅みのり」「錦秋」誕生(たんじょう)したんだ。リンゴの主な病気である斑点落葉病(はんてんらくようびょう)にも強いんだよ。

気候変動で温暖化が進んでも、農家さんが立派なくだものがつくれて、みんなが大好きなおいしいくだものを食べられるよう、私たちの研究に終わりはありません!

研究セグメント Ⅰ

気候変動の影響を弱める緩和策
アミノ酸バランス改善飼料

研究セグメント Ⅰ

気候変動の影響を弱める緩和策
アミノ酸バランス改善飼料

荻野暁史(おぎの あきふみ) 研究員
畜産研究部門
この研究は気候変動の影響(えいきょう)を弱めるための研究(緩和(かんわ))で、温室効果ガスの排出量を減らす研究だよ。

家畜(かちく)のふん尿(にょう)などの(はい)せつ物を材料にした「たい肥」などからは一酸化二窒素(いっさんかにちっそ)(N2O)などが出ます。

※N2Oやメタン(CH4)などは温室効果ガスです。

どうやって温室効果ガスを減らすの?

畜産で一酸化二窒素が
発生する仕組み
この一酸化二窒素 (N2O)も減らさなけばいけないんだよ。

一酸化二窒素を減らすエサ

ウシやブタ、ニワトリなどの家畜(かちく)のエサに必要な栄養素が「たんぱく質」。この中に窒素が含まれていて、余分な窒素はふんや尿の中に排せつされます。

そこで、たんぱく質に注目してエサの成分を変えた!

窒素の排出量を減らすにはエサのたんぱく質の割合を低くすればいいのだけれど、それだと家畜の成長や乳・卵の生産量も落ちてしまう。

アミノ酸バランス改善飼料
(バランス飼料)

そこで、栄養を保ったまま、窒素の排出量を減らせ、排せつ物の処理から発生する一酸化二窒素も減らすことができるエサ「アミノ酸バランス改善飼料」を開発したんだ。

今後、世界の人口が増え、食料が足りなくなると予測されている。お肉や牛乳などももっと必要になるだろう。だから、エサを工夫して温室効果ガス排出の削減(さくげんく)に貢献し、畜産農家さんを支えたいと研究しているんだよ。