農研機構

NARO Topics

【なろトピックス】では、農研機構の旬な情報や注目のアレコレを紹介します。

技術導入の費用対効果をサイトで確認!
「スマ農成果ポータル」を公開

「スマ農成果ポータル」には2019、2020年度に実証したスマート農業技術148件を掲載

農研機構は、スマート農業技術の効果や導入の際の留意点をまとめたウェブサイト「スマ農成果ポータル」を公開しました。自動運転トラクタ、直進アシスト田植機、リモコン草刈機、水田水管理システムなど9つの技術を取り上げています。当サイトでは、スマート農機を導入した場合、効果を発揮できるほ場かどうかを確認できるチェックリストやトラブル例、実証事例の成果も公開しています。スマート農業で機器を導入する場合、そのコストがネックとなることも少なくありませんが、スマート農業の費用対効果を見極めるツールとして、当サイトを活用いただけるようになっています。

動画で見る
「美味しいみかんの作り方」

農研機構は、甘くて美味しいみかんを安定的に生産する技術「シールディング・マルチ栽培(S.マルチ)」を開発しました。S.マルチの解説を含めた、みかん栽培に役立つ動画をシリーズ(#1~11)で公開しており、NAROチャンネルの中で再生回数の多い動画になっています。
今回はそのシリーズの中から2本をピックアップして紹介します。

【みかん栽培】#4 水管理のポイント

樹に乾燥ストレスがかかるとみかんは甘くなりますが、乾燥の程度が強すぎると樹が弱くなってしまいます。適度な乾燥ストレスを維持する水管理のポイントを紹介します。

【みかん栽培】#7 毎年果実をつける技術

みかんには、豊作だった次の年に不作になる「隔年結果」という性質があります。これを防いで毎年安定して果実をつけるための、花や枝の数を管理する方法を解説します。

そのほか、幼木の管理や摘果などの解説動画や、特別編として農研機構のカンキツ専門の研究拠点である興津カンキツ研究拠点の紹介動画もあります。みかん栽培に役立つ動画シリーズは、これからも新しい動画を公開していく予定ですので、ご期待ください。

プレスリリース
キャベツの芯を生まれ変わらせ新素材に!
廃棄部分の利用でフードロス削減に期待

キャベツの芯はキャベツ全体の重量の15%程度を占め、食物繊維やビタミンCなどの栄養、クロロゲン酸など機能性成分を含んでいるにもかかわらず、葉に比べて硬いためにその多くは加工の段階で廃棄されています。粉末にして料理に入れることもありますが、野菜本来の食感は失われるという課題もあります。このたび農研機構は、キャベツの芯を3Dフードプリンタで歯ごたえあるペースト状の食品として生まれ変わらせることに成功しました。本研究成果により、3Dプリント食品のような次世代食品における豊かな食感を持つ新素材としての可能性に加え、食品製造時の農産物のフードロス削減が期待されます。
※クロロゲン酸 : 植物に含まれるポリフェノールの一種で、体脂肪低減、食後血糖値の上昇緩和などの機能性が注目されています。

キャベツ芯部由来粗粉末の活用イメージ

プレスリリース
植物全体の温度状況把握を可能にする3次元計測技術

植物体の表面温度のデータは、生育状況の推定や生理的な障害の有無の把握などに利用されています。通常、植物体の表面温度分布とその温度を示す部位の正確な特定のためには、熱画像と光の三原色で表現するRGB画像の2種類を同一画角で撮影して対象を重ね合わせる必要があります。しかし、従来技術で重ね合わせられるのは2次元画像のみで、隠れた部位で起きた生理障害を見落とすことがありました。そこで農研機構では、植物体の立体形状や色、表面温度分布が一体化した高精度な3次元データの取得技術を開発。植物全体の温度状況を把握できるため、収量や品質に影響するような生理応答を検出し、総合的な生育診断を行えます。

熱画像とRGB画像それぞれから作成した3次元像の統合

従来の方法(2次元)

様々な角度から見た画像を一つ一つ重ね合わせる

  • 立体構造は読み取れない

新規開発技術による方法(3次元)

形状・色・温度分布が一体化した3次元像を得られるため、任意の角度から見たデータを容易に抽出できる

  • 任意の領域の面積・体積・温度データを抽出できる

プレスリリース
炭素繊維シートによる水路トンネル補強工法を開発
- 劣化した水路トンネルの長寿命化に貢献 -

農業に必要な水を農地に運ぶ農業用水路のうち水路トンネルは、崩落などの事故があると送水が停止され農業生産に大きな被害を及ぼします。水路トンネルの補強工事は大規模になる場合が多く、迅速な実施は難しい状況でした。農研機構は、島根大学、日鉄ケミカル&マテリアル(株)、オリエンタル白石(株)と共同で、トンネル内側を覆っているコンクリート(覆工コンクリート)に炭素繊維シートを接着することにより、老朽化した水路トンネルを補強する工法を開発しました。軽量で強度が高い炭素繊維シートの利用により、補強工事にかかる費用を大幅に軽減でき、部分的な補強も可能です。
※炭素繊維 : 軽量、高強度、高弾性、高耐食性などの優れた特性をもつ高性能無機繊維

工法のイメージ図

編集後記

広報なろNo.29「特集 農研機構で働く。」は、いかがでしたか。制作スタッフ4名で北海道から沖縄まで全国7拠点を訪ねました。茨城県つくば市の本部各所はもちろん、雪景色の北海道に、雷雨後の虹が美しかった秋田、静岡では富士山を間近に望み、11月とは思えない日射しの強さに驚いた広島・福岡、そしてコバルトブルーの海がまぶしい沖縄。同じ機関で働いていても全く知らなかった業務に触れ、電話やメールでしか話したことのない仲間たちと直接会うことができました。初めて知ることばかりでワクワクした私たちの思いも、今号を通して伝わればうれしいです。(I)