農研機構
国立大学法人 島根大学
日鉄ケミカル&マテリアル(株)
オリエンタル白石(株)
ポイント
農研機構は、島根大学、日鉄ケミカル&マテリアル(株)、オリエンタル白石(株)と共同で、軽量かつ高引張の炭素繊維シートを水路トンネル内側の覆工コンクリートに接着することにより、老朽化した水路トンネルを補強する工法を開発しました。この工法は、建設資材の搬入に手間がかかり、大規模な対策工事を行うことが難しい山間部に位置する小規模断面の水路トンネルの新たな長寿命化対策として有効です。
概要
山間部に建設された農業用水を運ぶ農業用水路トンネル(以下、水路トンネル1)と略します)では、崩落の事故などによって送水が停止すると、下流地域が断水するため、農業生産に大きな被害が及ぶことになります。これを未然に防ぐためには、劣化が軽微な段階で補強などの手当てを行うことが重要です。しかし、水路トンネルの補強工事は、使用する資材を水路トンネルの内部に搬入するための仮設の道路や設備が必要となるため、大がかりな工事になる場合が多く、迅速に実施することは難しい状況でした。
農研機構は、島根大学、日鉄ケミカル&マテリアル(株)、オリエンタル白石(株)と共同で官民連携新技術研究開発事業(農林水産省、H29-R1)を実施し、あらかじめ工場で加工した、細い、すだれ状の炭素繊維2)シートを人力で水路トンネル内に搬入し、トンネル内側を覆っているコンクリート(以下、覆工コンクリート)に接着することにより、老朽化した水路トンネルを補強する工法を開発しました。炭素繊維シートの密度は鉄の約1/5と軽量で、人力で容易に持ち運びが可能であるため、資材搬入のための仮設の道路や設備が不要で、これに要する費用を大幅に軽減できます。また補強が必要となる範囲だけを部分的に補強することができるため、トンネルの応急修理としても有効です。
本工法は、【農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル「水路トンネル編」】
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/sutomane/210617.html)に設計方法の事例が記載されています。
関連情報
予算:運営費交付金、農林水産省(官民連携新技術研究開発事業H29-R1)
国立大学法人島根大学 理事(研究推進担当)大谷 浩
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 執行役員コンポジット事業部長下条 憲一
オリエンタル白石株式会社 取締役常務執行役員 技術本部長正司 明夫
国立大学法人島根大学 生物資源科学部環境共生科学科 准教授石井 将幸
助教 上野 和広
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社 コンポジット事業部 開発部長 小森 篤也
マネジャー鈴木 宣暁
オリエンタル白石株式会社 九州支店技術部 技術部長堀越 直樹
大阪支店 副支店長 高橋 謙一