VOICE from NARO
「おいしさの分析」
現代社会において人々は単に„食べる"だけでなく、口にする食品を„選ぶ"ことが可能になりました。次第に人はより「おいしい」ものを食べたいと思うようになるでしょう。「おいしさ」とはさまざまな要因に影響される、複雑な感覚です。しかも、人によって基準が異なるものであり、全ての人類がおいしいと思う食べ物は存在しないでしょう。ただ、「おいしい」という感情は人を幸せにすることができ、人はその幸せな感情から食事を単なる栄養摂取行為から、幸せを享受する行為へと昇華させてきたのではないでしょうか。
おいしさは、「味」・「香り」・「食感」・「音」・「記憶」などを総動員して感じるものです。さらに、そのような直接的な要因だけではなく、「体の状態」、「経験」、「知識」などの間接的な要因にも影響されます。例えば、激しい運動のあとでは塩味が、集中した作業のあとでは甘味の強い食べ物が、普段よりもおいしく感じられます。また、海外旅行からの帰国後に和食がとてもおいしく感じられるなどです。
おいしさを科学することは、「みどりの食料システム戦略」が目指す「食品ロスの削減」や栄養バランスに優れた日本型食生活の推進にもつながります。
おいしさの分析には、食品そのものの性質を調べる機器分析と、食品を食べる人の感覚や嗜好の分析の両方が必要です。本号では、客観的で再現性のある官能評価や味の感じ方に関する取り組みについて、その研究開発の一端を紹介します。
