| よくある質問(FAQ) | ||
|
||
| <目次> | ||
|
❖ 1. 鳥害についての一般的質問 ❖ 2. 鳥害対策(手段)についての一般的質問 ❖ 3. 対象別(作物、鳥種ごと)の被害内容や対策について ❖ 4. 農作物以外での鳥害について ❖ 5. 鳥の生物学的特徴について ❖ 6. 動物行動管理グループ(鳥獣害つくば)への依頼・要望 |
||
農林水産省の統計を見ると、1980年代以降に鳥害が増えたという様子はありません(「鳥害対策>全国での鳥害の状況」にグラフがあります)。この間にシカやイノシシ、サルなどによる獣害は増えているので、「鳥獣害」としては増えていることになりますが、「鳥害」に限れば、減少傾向がよみとれます。
農作物への鳥害が明らかに増えるのは、むしろ作物や栽培方式が変化したときです。1980年前後には水田転作作物としてダイズが推奨され、その結果、主にハトによる鳥害が全国的に大問題になりました。また、稲での鳥害は減少傾向でしたが、1995年前後からは水稲直播が推奨され、種籾への鳥害が問題になってきました。その後、水稲直播での被害対策が一定程度進み、カモ類では2000年代以降、水稲から野菜(レンコンやブロッコリー)への被害に変わってきました。
農業側の変化だけでなく、加害鳥の個体数が増加しているケースもあります。ガン類によるムギ類等への食害はその一例でしょう。ただし、鳥の個体数は基本的には環境中の食物の量で調節され、春夏の繁殖期に数が増え、冬の食物不足で減るというかたちで、変動しつつ安定しているので、被害をもたらす鳥の急増によって農作物被害が増えることはあまり考えられません。
当グループでは、個別の調査地で被害調査を実施することはありますが、一般的・広域的な被害実態の統計は取っていません。全国的な調査は農林水産省が行っています(こちら)。地域の実態については自治体の農政部門におたずねください。
農地は人工的に管理されているので原生自然ではありませんが、周辺の集落や林、水辺と一体となって、たくさんの生き物の生息・生育場所になっています(二次的自然)。平野部は人が徹底的に利用しているため、トキやコウノトリのようにもともと氾濫原のような開けた環境に暮らしてきた生物にとって、現在では農地以外に広い生息地がなくなっています。そうした生物の運命は、農業のあり方にかかっているのです。
ハトやカラスのように農作物を加害する鳥も農地に依存している割合が高いのですが、それは農作物のおこぼれにあずかっているからです。つまり、農業活動で増えてきた鳥と考えられます。こうした鳥に対する適切な防除策について研究することはもちろん必要です。
というわけで、農地で鳥をはじめとする生物多様性を保全することと、一部の鳥による農業被害を減らすことは、どちらも大切ですし、矛盾していません。さらに、農地における鳥類個体数の適正管理という面では、保全と鳥害対策は技術的にも共通です。
スズメやカワラヒワには20mm目(1辺の長さが20mm)、ヒヨドリやムクドリには30mm目が一般的です。ただし、無理をして網目をくぐり抜けてしまうことがあるので、それぞれ18mm目と20mm目のほうが完璧です。沖縄のシロガシラはヒヨドリより一回り小さいので20mm目を使用します。
ハト類には50mm目以下、カラス類には75mm目以下の網を使用します。確実に侵入を防げる網目は、鳥の体の見た目よりもかなり小さく、多くの鳥は外見上通りそうにない網目をくぐり抜けて侵入するので、対象鳥種に適合する網目を選びます。
なお、防鳥網に野鳥が絡まって死んでしまうことがあるので注意が必要です。特に、30mm目以上の粗い網や、細い糸の網は鳥が絡まりやすいようです。目立つ色で、なるべく糸が太い網、柔軟性が低く張りのある網を使用し、たるみができないように張ることで、鳥が絡まりにくくなります。
テグス等の糸状のものは完全な遮断資材ではないため、鳥類にとって餌として魅力的な作物を栽培している場合や、周辺に餌となるものが少ない場合など、テグスを張っても侵入されることがあります。
テグスが有効かどうかは鳥の種によって異なります。カラスでは、他の鳥よりも賢くて警戒心が強いため、テグスの効果が持続しやすく、果樹園や畑では比較的有効です。一方で、ハト類やカモ類では、糸状のものの設置に対する警戒がそれほどみられず、接触してもたいていは気にせず行動を続けるため、ほとんど効果がないことがわかっています。ヒヨドリ等の小型鳥類でも、糸状のものが張ってあっても通り抜けやすく、ほとんど効果がありません。また、カラスの場合でも、餌の量や質が良くて侵入意欲が高い場所(畜舎やゴミ集積所)ではテグスの有効性は低いです。
糸1本でも鳥が絡まることはよくあり、農業被害対策用だけでなく、釣人が放置したテグスでも、様々な鳥の足、嘴、羽根等が絡まる事例が知られています。
鳥の侵入対策に使用するテグスは、太い方が鳥に絡まりにくく、少なくとも線径0.52mm(10号)以上の太さのものを使い、ある程度のテンションをかけて張ることで、野鳥が絡まる事故を少なくできると考えられます。細いテグスは柔軟にたわみ、鳥がぶつかった際に羽根や足に絡みつきやすいため、使用は勧められません。
カラス対策として当グループが開発した「くぐれんテグスちゃん」「畑作テグス君」等では、鳥が絡まる問題(太いほど絡まりにくい)、価格、耐久性、作業性を勘案して線径0.74mm(20号)前後を推奨しています。
播種期の鳥害対策として種子に付けて使う忌避剤があり、現在、日本で使える忌避剤(登録農薬)は4種類あります(一覧表はこちら)。農薬の登録においては各種の試験が行われており、有効性が確かめられていますが、絶対的な忌避効果ではなく、他に餌がなければ薬剤処理した餌でも食べられてしまう場合があります。
薬剤による鳥の殺傷と捕獲は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通常、鳥獣保護管理法と呼ばれる)によって禁止されています。したがって、鳥を殺すことを目的とするような農薬が開発されたり登録されたりする可能性はありません。
日本の鳥は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通常、鳥獣保護管理法と呼ばれる)により、捕獲したり殺したりすることが禁じられています。それがたとえ自分の畑でも同じです。例外として「狩猟」と「許可による捕獲」が認められています。
「狩猟」においては、狩猟鳥となっている鳥は26種あり、カラス、スズメ、ムクドリ、ヒヨドリなども含まれます。狩猟をするには免許が必要で、網を使える網猟免許、わなを使えるわな猟免許、ライフルや散弾銃を使える第一種銃猟免許、空気銃を使える第二種銃猟免許に分けられています。ただし、カスミ網や劇毒物、危険なわな(くくりわななど)などは、捕獲される鳥を特定できないなどの理由で、いっさい使えません。
「許可による捕獲」の1つに有害鳥獣駆除があります。希少種を対象とする特別な場合以外は、都道府県の権限になり、条例で定めれば市町村に委任できることになりました。期間は定められていませんが、狩猟期以外に実施されることが多いようです。農林水産被害などのために駆除が必要であると認められれば許可されます。詳しくは市町村の窓口で聞いてみてください。
たいていの製品で、設置当初には効果があります。ただ、比較的効果の高いものでも、効果は一時的だと考えるべきです。「慣れを生じない」といったキャッチコピーがありますが、物理的に侵入を阻止するタイプのものを除いて、そのような製品は今のところありえないと思われます。どれぐらい効果が続くかは使い方や周りの状況次第です。設置したままでは鳥の慣れが進みますし、周辺に他の餌が少ない等の状況によっては最初からほとんど効果がない場合もあります。
鳥のなかには、捕食者に捕まったときにけたたましい声を出すものがいます。この声をディストレスコール(遭難声)といい、この声を聞いた他の鳥はその場の様子を見に来たり、飛び去ったりします。市販の音声防除機は、鳥の遭難声やそれに類似した音を利用していると考えられます。
しかし、鳥はその声が本当の危険を意味していないことを簡単に見抜いてしまい、たいていは数日、長くても数週間で慣れてしまいます。「本能的に慣れを生じない特殊音使用」といった広告も見かけますが、そのような音の存在はこれまで証明されていませんし、理論的にもあまり考えられません。慣れを生じにくくさせるためには、被害の大きい時期にのみ使用したり、他の防除手段と組み合わせてローテーションしたりする工夫が必要です。
当グループでは、被害対策の事例は収集していません。農林水産省で公開している資料のサイト野生鳥獣による被害防止マニュアル等では、例えば次のような事例が紹介されています。
【例1】カラス・水稲食害への対策:野生鳥獣被害防止マニュアル-イノシシ、シカ、サル、カラス(捕獲編)-第3章 鳥獣種別の捕獲方法 (5)捕獲の取組事例「No.4-4 関係者の連携による銃器捕獲の有効活用」(104~107ページ・石川県)
【例2】カラス・ナシ食害への対策:野生鳥獣被害防止マニュアル改訂版 鳥類編(平成29年3月発行)3章 被害対策の取組事例「カラス退治で一つになった新高梨の里」(72~75ページ・高知県)
【例3】カモ・ムギ食害への対策:野生鳥獣被害防止マニュアル改訂版 鳥類編(平成29年3月発行)3章 被害対策の取組事例「ムギのヒドリガモ対策について」(80~81ページ・佐賀県)
新聞記事になったものは、各新聞社で検索できることがあります(例えば日本農業新聞、ただし検索は有料)。ただ、鳥害対策の効果は周辺状況に大きく左右されるため、ある事例が他のところには当てはまらないということもあります。
鳥害は年によってあったりなかったりということがよくあります。原因はよくわからないことが多いのですが、水稲へのスズメ被害であれば、被害のあった水田だけ早生の品種を作っていて他の水田より早く熟した(逆の場合もあります)、その水田だけ美味しいお米を作っていた、ということがよく聞かれます。
これを避けるには、熟期を周りの水田と合わせることが有効です。また、環境的には人家や防風林などの隠れ場所、電線などの止まり場所に近いところで被害が多くなります。脅かし系の防鳥機器(爆音器など音声を使ったもの、キラキラテープや模型タカなど視覚系のものなど)はすぐに慣れて効果がなくなってしまいますが、短期間なら有効なこともありますので、要防除期間(乳熟期から収穫)に限って、これらの対策をすることが考えられます。ただし、被害額と防除にかけられる金額をきちんと考えて対策することが大切となります。
サギ類による踏み倒し被害が生じる時期は、春の定植直後の比較的短期間と考えられます。サギ類の体重は500g~1.2kg程度で、最大のアオサギでも見た目ほど体重はないので、イネ苗が踏まれても収量に影響するほどの被害になることは多くありません。
まずは、収量に影響するかという観点で対策の要否を考える必要があります。他の鳥と同様、一般に脅かし系の防鳥機器はすぐに慣れて効果がなくなってしまいますが、短期間なら有効なこともありますので、要防除期間に限って、これらの対策をすることが考えられます。機器を使わなくとも、被害を防ぎたい圃場への訪問(農作業、車で巡回、犬の散歩等)の頻度を上げることも対策になります。人間が関心の無い素振りではサギ類も逃げませんが、緊張感を持って視線を向けるとサギ類も警戒して飛去しますので、当該圃場から追い払うことが可能です。サギ類は広範囲を移動しながら餌(魚類(ドジョウ等)、カエル類(オタマジャクシを含む)、ザリガニ等の小動物)を探して水田へ訪れるので、付近に餌量の豊富な場所があれば、当該圃場で追い払いをすることでそちらへ移動します。
冬期に広い面積を緑の葉で占めているムギ類は、ヒドリガモを主とするカモ類や、地域によってはガン類などの格好の食物となっているようです。カモ類は主に夜間、ガン類は日中に食害します。川や池などカモ類の休息場所の近くで被害が生じやすいようです。ガン類はカモ類よりも、開けて安全なところを好むため、人家や林、通行量の多い道路から離れたところで被害が多くなります。
対策としては、不織布をべた掛けする、網目45mm以下の防鳥網を張るなどして、圃場への侵入を遮断するのが確実ですが、麦作ではコスト面から非現実的でしょう。簡単な「のぼり」で被害が軽減したという報告があります。3mの長さの黒色マルチ用シートを2mの支柱につるした「のぼり」を10アール当たり5本設置します。水鳥は湖や川(水路)に近いところから圃場に侵入してくる場合もあるため、水際を中心に「のぼり」を設置して効果を上げた例や、笹を立てたり、テープを吹き流し状に設置することでも被害が軽減出来たという例があります。ただし、他の餌場がなければ、鳥害対策をしていない別の圃場に被害が移るだけとなってしまい、同じ防除策を繰り返したくさん行った場合は効果が減る可能性があります。
カモ類は狩猟鳥でもあることから爆音機の音を恐れますが、急速に慣れてしまいます。越冬地での加害期間は長いので、適用期間を吟味して短期間だけ使います。圃場に飛来するのは夜間ですので、銃での狩猟や駆除はできません。他には、夜間に農地を車で回ってライト等で追い払うことが行われています。一方で、テグスを張る対策をしているところもありますが、カモ類にテグスは効果がないうえに、カモ類をはじめ他の野鳥が絡まることがあるのでおすすめできません。
カモ類を他の場所に誘引したり(石川県河北潟)、ガン類による被害について補償制度を設けたり(宮城県田尻町や北海道美唄市など)といった試みも出てきています。
参考:鳥種別生態と防除の概要(カモ編があります)。
周囲の作物(水鳥の採食物)の状況などに大きく左右されますが、北海道の宮島沼での研究例では落ち籾がなくなると、麦を採食するようです。また、渡りの前に栄養蓄積という点では、脂肪分やタンパク質が多いものを好むと思われますので、そのために麦を食べることもあると考えられます。しかし基本的には、豊富にかつ簡単に食べられる麦がその場にあるから食べ、被害の濃淡は場当たり的なことが多く、他の個体が採食しているところに集まってきて、被害が甚大となることもあるものと思われます。
レンコンはハス田(レンコン田)の泥中にあり、食害は主に夜間に生じるため、その被害の実態は長年明らかにされていませんでした。最近、茨城県霞ケ浦周辺での調査により、一部のカモ等(マガモ、カルガモ、オオバン)が水面下の泥中にあるレンコンを食べることが確認されました。その深さは水面下40cm程度まで採食可能で、浅く位置するレンコンほど食害を受けやすいことがわかっています。
対策として、防鳥網を用いることが確実ですが、風雨に耐えやすい大きい網目(150mmなど)の網ではカモ等は通り抜け可能で、侵入を防ぐことができません。テグスや、細い糸の網、網がたるんでいる場合も、鳥が絡まって死亡する事故が生じやすくなります。物理的な遮断をするには、適切な防鳥網(網目30mm、糸の太さ1,000デニールの強力防鳥網など)を収穫前の必要な時期・場所に限って使用するといった工夫が必要と考えられます。
耕種的手法では、病害の心配がなく圃場の水を抜くことが可能であれば、落水管理で水面が無いようにすると、カモ等の飛来を少なくすることができます。逆に、レンコンの位置が水面下40cmよりも深くなるような深水管理でも、カモ等による食害を受けにくくすることができるでしょう。
なお、夜間にハス田で採食する他のカモ類(オカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、コガモ)では、泥中のレンコンを食べる行動はこれまでのところ確かめられていません。水面に浮いているか、水中(泥面上)に沈んでいる収穫残さのレンコンは、マガモ、カルガモ、オオバンに加えてオカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、コガモが食べることが観察されています。ウキクサ類やプランクトン、収穫残さのレンコンなどカモ等の食物が豊富に存在する圃場は、泥中のレンコンを食害しないカモにとっても、好適な採食場所となっていると考えられます。レンコンは収穫期間が長く(8月頃から翌3月頃まで)、その間、ハス田地帯では収穫前後の圃場が隣り合って混在する特徴があります。収穫前の圃場では被害防除対策をとりつつ、収穫後の圃場ではカモ等の採食場所として機能させれば、レンコン被害の軽減と鳥類の生息環境の保全を両立する道筋となるかもしれません。
参考:農研機構プレスリリース
活動記録>2024(令和6)年度>農研機構オンライン一般公開2024でカモの研究を紹介(R6.12月)
べた掛け(直置き)タイプでは、網目サイズについては30mm程度までの細かい目合いであれば、カモ等による食害を防ぎやすいと考えられます。一方で、45mm程度以上など大きな目合いでは、カモ等は網の目から頭を入れて採食できるため網越しに食害される可能性が高くなります。糸の太さについては、1,000デニール(強力防鳥網として市販)であれば糸が太いため野鳥が絡まる事故が起こりにくいと考えられます。一方で、400デニール(一般の防鳥網として市販、オレンジネット)では糸が細いためピンと張ることが難しく、ゆるんだ状態の糸に小鳥類を含む様々な鳥が絡まる事故が生じやすいことから、推奨できません。加えて、オレンジネットは網が柔らかいため泥面に沈みやすく、網越しに食害されやすくなってしまいます。
圃場の周囲に支柱を立て、天井網と側面網で圃場全体を囲う立体型のタイプでは、レンコン加害種の圃場への侵入を防ぐには天井網・側面網ともに60mmよりも細かい網目サイズが必要と考えられます。泥中のレンコンを食べることが確認されているマガモ、カルガモ、オオバンのうち最も小さいオオバンは、翼をたたんだ状態の胸囲長は240〜300mm前後で(未発表データによる)、60mm以上の網目では通過可能と考えられるためです。
鳥は色を識別できますが本能的に嫌う色はないため、色よりも網目サイズと糸の太さ、張り方が重要です。レンコン加害種はぎりぎりの目合いでも網目をすり抜けて侵入するため、60mmよりも細かい目合いの網が必要です。糸は太いほど、網目は細かいほど鳥は絡まりにくく、50mm目合いであれば2,500デニール以上が良いと思われます。せっかく適切な網を用いても、狭い隙間や穴からでも鳥は入り込んでしまうため、隙間なく覆うことが肝要です。たわんだ網や、ポケット状になった網には鳥が絡まりやすいためピンと張るようにし、劣化して侵入防止機能を果たせなくなった網は撤去するといった管理も求められます。
捕獲によるカモの個体数調整は全く期待できません。仮にある場所でカモを捕獲・駆除しても、その場所にカモの食物がある限り、周辺からの移入によって個体数はすぐに回復するためです。また、鳥類の行動範囲は獣類と比べてかなり広く、カモは多くが渡り鳥で、年によって・年の中でもその場所に滞在する個体数が変動することがよくあるため、捕獲によってその場所に生息する個体数を減らしたという因果関係を示すことは困難です。
一方で、猟期になると、猟区から禁猟区へカモが居場所(主に昼間のねぐら)を変えることが知られており、このことを利用して被害対策に応用できる可能性はあります。具体的には、被害を防ぎたい農地で銃器で捕獲を行い、カモの生息を許容できる場所(湖沼や河川、収穫後の農地など)に誘導することで、追い払い効果の向上が期待できます。捕獲・駆除や狩猟の意義は、鳥と人との緊張関係を生む・維持することにあります。
他の餌が豊富な時期にダイズを播けば被害を減らせます。例えば、麦作が多い地域では、収穫後のこぼれ麦が多い時期に播種します。ただし、麦の収穫直前はむしろ餌が乏しいので注意が必要です。また、地域で一斉にダイズを播けば、一時期にハトが加害できる量は限られているので、全体として被害率を下げることができます。
ワラによる被覆も有効です。あまり厚くかける必要はなく、地面が十分見える程度で効果があります。特に麦収穫と同時にダイズを播種して麦ワラで覆えば被害を相当減らすことができます。
爆音と同時に模型が打ち上がる複合型爆音機は、ハトに対しては比較的効果が高く、有効半径も50m以上ありますが、長年使っていたり周辺で数多く使ったりしているとやはり慣れてしまいます。
被害が多い場合には、有害鳥獣駆除を行うことも考えられます。駆除によって個体数を減らすことは困難ですが、その場所が危険であることをハトに学習させることができます。銃器による駆除が行われている場所では、爆音機の効果も長持ちすると考えられます。
タカやヘビの模型、風船、防鳥テープ、縄などは、設置当初にごく近距離で効果があるだけです。人間に似たかかしやマネキンは比較的効果があるので、今風の農家の服装をして腕などの動きを伴うものを短期日のうちに場所を変えるなど、工夫して使えばある程度期待できます。ただし、ドバトはキジバトより人慣れした個体が多いので効果は小さくなります。
忌避剤(登録農薬)もあり、一定の効果がありますが、被害のひどい時期には忌避剤のついたダイズでもハトは食べてしまいます。
参考:鳥種別生態と防除の概要(ハト編があります)
トウモロコシは穀類の中ではカラスに好まれる種類です。カラスは芽生えを引き抜き、種子の部分をちぎって食べます。被害は地上に芽が出始めた日から出芽後10日目ごろまでの間に多く起こります。それ以降でも、苗が根を張るまでは引き抜かれることがありますが、種子に残っている栄養が少ないため、食べずに放置することが多くなります。
種子を深播きすることで、被害を軽減できるという報告が複数あります。5〜6cmの深播きにすれば被害が少なく、生育の遅れもほとんどありません。ただし、重粘土土壌では出芽率が低下するおそれがあります。
飼料用などの大規模栽培では防除にコストと労力をかけられないので、深播きや忌避剤(登録薬剤はキヒゲンとキヒゲンR2フロアブル)の使用が現実的と思われます。忌避剤の忌避効果は絶対的なものではないので、周辺状況によっては加害されてしまいますが、深播きで引き抜きにくくし、忌避剤で餌としての価値を下げるといった組み合わせは有効かもしれません。
被害の発生期間は比較的短いので、小規模栽培であれば、新奇なものはいったん避けて様子を見るという鳥類の性質を利用して、各種の脅しやテグスといったさまざまな工夫も行う価値があるかもしれません。もちろん、網で覆うことができるのであればそれが確実です。
参考:鳥種別生態と防除の概要(カラス編があります)
カラスは警戒心が他の鳥に比べて強く、飛行の小回りも効かないため、果樹園や畑ではテグスでかなり効果があります。当グループでは、果樹園のカラス対策「くぐれんテグス君」、その簡易型の「くぐれんテグスちゃん」、畑のカラス対策「畑作テグス君」などの設置マニュアルを公開しています(こちらから)。
防鳥網は、カラスでは75mm以下の目合いの網を隙間なく張れば、確実に侵入を防ぐことができます。畜舎ではカラスの侵入意欲が高く、テグスでは防げないので、防鳥網が必要です。
脅かし型の防鳥用品は、たいていの鳥は数日程度で慣れますが、カラスは「深読み」して1シーズン程度は効いたという例も多いので、出しっ放しにせずに手を変え品を変え、カラスとの知恵比べ的な考え方で使う方法があります。
銃器駆除による「本物の威嚇」と組み合わせた追い払いも有効です。当該の圃場付近で被害時期に銃器駆除(駆除個体数は少なくて良い)を行うとともに、同様の服装でモデルガンを威嚇発砲する等のパトロールを行います。
鷹匠の効果については、カラスは野生のタカ類と共存しているため、タカを上手くやり過ごすことができれば問題ないと知っています。小型のタカ、弱そうなタカ、昼間のフクロウなどには、カラスがしつこくつきまとって攻撃することもあり、猛禽だからといって無条件に怖がることはありません。そのため、タカを飛び回らせれば、その場からいったん退避しますが、タカが居なくなれば戻ってしまい、タカを一度見た場所には再来しないといったことは期待できません。
株式会社ハナオカの『防鳥耐候テグス』という商品があります。釣り用の20号テグスと同じ太さ(0.74mm)で、一般的なテグスが白っぽく脆く劣化して切れるのに比べて紫外線に耐える加工がされており、枝などに擦れない条件であれば同じ太さの釣り用透明テグスよりかなり長持ちします。ただし、「くぐれんテグス君」では伸びた徒長枝等に擦れてテグスが切れる場合が多いので、擦れる物が多い条件では、紫外線耐性加工の優位性が見いだしにくいといえます。
いずれの果樹でもカラスによる食害が深刻です。カキやナシ、リンゴなどの落葉果樹ではムクドリやヒヨドリも食害します。カンキツ類への食害は主にヒヨドリによるものです。また、メジロは主に他の鳥が開けた穴を利用して食害します。果実への被害は、熟しはじめてから被害が起こる点に特徴があります。
確実な防鳥手段は、果樹園全体に防鳥網を張ることです。被害が甚大なところでは、堅固な支柱を常設し、毎年、果実の熟期前にワイヤーを使って防鳥網を簡単に張れるように工夫しているところもあります。ただし、広大な面積全体を防鳥網で覆うことは労力面でも費用の面でもとても大変です。次に考えられるのは、袋掛けをする果実であれば、鳥害に強い袋(コスト面から繰り返し使える袋)を利用することです(ポリエステル製のものなど)。
ディストレスコールを利用した音声機器やラゾーミサイルなどさまざまな防鳥機器がありますが、効果は一時的です。必要な時期だけ設置したり、設置場所を変えたり、またいくつかの防鳥機器を組み合わせて使用するなど、慣れを生じさせない工夫をしても、長期的にコストに見合うかどうかは疑問です。磁石や反射板は、それ自体にはほとんど効果は期待できません。
参考:鳥種別生態と防除の概要(ムクドリ編、ヒヨドリ編があります)
銃器駆除による「本物の威嚇」と組み合わせた追い払いをご検討ください。当該の圃場付近で被害時期に銃器駆除(駆除個体数は少なくて良い)を行うとともに、同様の服装でモデルガンを威嚇発砲する等のパトロールを行います。
【参考資料】農林水産省で公開している資料のサイト過去の野生鳥獣被害防止マニュアルにある、
野生鳥獣被害防止マニュアル-イノシシ、シカ、サル、カラス(捕獲編)-の「第3章 鳥獣種別の捕獲方法」(5)捕獲の取組事例、の4つの事例のうち、『No.4-4 関係者の連携による銃器捕獲の有効活用』 (104~107ページ・石川県)
雨除け施設のどこから侵入してきているのか見極め、そこに対策を取ることが良いかと思います。
「くぐれんテグス君」の簡易改良型の「くぐれんテグスちゃん」では、側面のテグスの止め具を金属支柱にあらかじめ付けてから立てることで、脚立作業をしなくて済むようにしていますが、この方法をベースに施設に合わせて応用すると良いでしょう。
また、「くぐれんテグス君」と「くぐれんテグスちゃん」ともに、天井面のテグス設置に使う弾性ポールの長さ規格は最大4.0メートルなので、テグスの設置高は3.5mくらいとなりますが、樹高が高いためにテグス設置高を5mにした応用例では、4mの弾性ポールと2.7mの農業用支柱を結束バンドでつなぎ合わせて使用していました。この例では、圃場が広いために天井面テグスを中央列で分けて張る応用もしていました。この応用例については、「くぐれんテグスちゃん」標準作業手順書の改訂版に掲載しています。
天井面テグスを張る作業について、当グループの設置マニュアルでは、棚のある果樹園では圃場の外側を歩いて張るとよい、としていますが、弾性ポールを「縫い針」のように使い、弾性ポールにテグスを結びつけて棚の上を滑らせる方法で張っている現地もあります。
参考:鳥害対策資料一覧(各マニュアルがあります)
当グループでは、ヒヨドリ等の中・小型鳥類への対策として防鳥網を簡易にかける方法を開発してきましたが、それ以外の方法は取り組んできていません。テグスを用いたカラス対策はいくつか開発していますが、ヒヨドリには効果がないことを確かめています。
事例としては、もともと袋がけする品種であれば、その袋を丈夫で繰り返し使えるもの(例:サンテ)を使用することでヒヨドリ被害を防ぐことができ、袋の色も青などが被害が少ないそうです。また、三重県ではミシン糸などを樹木にぐるぐる巻きにかける方法が考案され、防除効果もあるそうです。
防鳥網(網目20〜30mm)で覆うのが一番です。「らくらく設置」技術の応用で弾性ポールを利用して張ることができます。防鳥網の上にヒヨドリが乗って作物に垂れ下がらないように、高さを十分確保しましょう。
広い露地畑でも、今のところ防鳥網しか確実な方法はありません。音声や爆音を用いた追い払い機器の効果は一時的です。葉菜類へのヒヨドリの加害は真冬から春先まで長期間続くので、結局は被害を防げません。防鳥テープやカカシ類も効果は続かないようです。あまりひどいようなら自治体と相談して有害鳥獣駆除も検討してください。ヒヨドリは狩猟鳥ですので、猟期なら免許保持者は捕獲できます。
参考:鳥種別生態と防除の概要(ヒヨドリ編があります)、鳥害対策資料一覧(「らくらく設置」マニュアルがあります)
人間が出すゴミは、カラスにしてみれば魅力的な食物です。ゴミ置き場は面積的には小さいので、カラスがゴミに触れられないように工夫するべきでしょう。最近ではゴミ置き場全体を頑丈な金網などで小屋型に作ったものもよく見かけます。また蓋付きポリバケツを使用するものよい方法です。ただし、きちんと蓋が閉まっていないと意味がありません。カラス除けネットは適切に使えば、簡便かつ低コストです。カラスがくちばしをさし込まないように5mm目以下のネットを使い、風にあおられたりカラスにめくられたりしないように、縁にチェーンなどの重りを付けます。また、すべてのゴミが収まる十分な大きさが必要です。
以上のようなゴミ置き場での対策の他に、カラスが活動していない夜間や早朝にゴミを出し、回収する方法もあります。しかし、これを実施するにはゴミを回収する自治体とゴミを夜明け前(もしくは夜)に出す市民の理解が必要となります。
環境省のカラス対策マニュアルもあります。
カラスが巣を作る場所として好むのは、良く茂った高木の中の高い位置で、外から巣が見えにくい場所です。好条件の樹木がない場合は、高圧鉄塔、電波塔、電柱、大きな建物の看板の陰などにも巣を作ります。公園内の木や街路樹を切り下げて低くしたり、巣を作りやすい枝分かれ部分を剪定してすっきりさせたりすると、その木には巣を作りにくくなります。しかし、代わりに近くの電柱などに巣を作ってしまい、巣材による短絡事故や、それを防ぐための巣の除去作業などの問題が生じます。
カラスは巣の周囲・直径数百m程度の範囲をなわばりとしており、その外側は他個体のなわばりで埋まっているので引っ越しはできません。また、仮にそのなわばり個体を捕獲したとしても、なわばりを持てずに余っている個体がすぐに空きを埋めるため、その付近にカラスのなわばりが無くなるということはなく、カラスが巣作りをすることは止めさせられません。そのため、人への威嚇などで深刻な問題が発生しているのでなければ、公園の木や街路樹に巣を作らせておくほうが問題が少ないと言えます。
カラスの巣の数を減らすには、なわばりの数を減らす必要があります。良い営巣場所があって餌が豊富な環境ではなわばりが密になるため、カラスを多く営巣させないための対策としては、餌を減らすことが考えられます。公園内のゴミ箱や付近のゴミ集積所を管理してカラスに生ゴミを食べさせないこと、カラスやハトへの餌付けがあれば止めること、飼い犬の餌や野良猫への給餌が屋外に放置されないようにすることなどが餌対策として考えられます。
4〜6月は、繁殖中のカラスの抱卵、育雛、巣立ちの時期にあたります。ヒナがいる親鳥は神経質になっているので、ハシブトガラスの攻撃的な個体の場合は人を襲うこともあります。ただし、それは、歩道橋の横の木に巣があって人との距離が近かったり、人が意図しなくても巣やヒナの方向を見たり近づいたりしてしまったというような場合が多く、襲うといっても近くを飛ぶだけで、カラスの足で引っ掻かれて怪我をするような直接の接触に至ることは多くありません。ハシボソガラスでは、巣があっても人を襲うほど攻撃的になることは通常はありません。
親鳥の威嚇は、巣からヒナが落ちた場合に多く発生します。卵の段階では、威嚇が生じるのは巣が外からよく見える位置にあり、かつ親鳥が攻撃的な性格といった場合です。カラスのヒナは、飛翔力が十分でない頃から、巣の周囲の枝に止まるなど、巣への出入りを繰り返して行動範囲を広げていきます。この過程で、地面へ下りてしまって高い位置に戻れなくなることがあり、通行人が多い、高い位置に戻るための「踏み台」になる物が乏しいといった悪条件が重なると、親鳥による人への威嚇が発生してしまいます。
カラスのヒナの飛翔力は数日で発達するので、注意喚起の貼紙をするなどして近づかずに見守ることができれば最も適当です。地面に落ちたヒナでも、自力で高い位置に戻ることもあり、周囲に人がいなければ親鳥も落ち着きます。
ハシブトガラスの攻撃的な性格の親鳥の場合は、威嚇鳴きや周囲を飛び回るだけでは済まずにアタックしてくることがあります。人の後ろ方向から飛んできて、後頭部付近を足で引っ掻く攻撃をするため、頭や首を守れる装備があると安心です。つばが硬くて広い麦わら帽子、傘をさすこと、ステッキなどを斜め後ろ上方に突き出すように肩に担いで持つことなどが有効です。装備が無い場合も、両手を上げるなどすればカラスとの直接の接触を避けやすくなります。
大型の鳥が間近で羽ばたくと迫力がありますが、カラスの体重は重い個体でも800g前後で、ツメもタカやフクロウのようには鋭くないので、それほど危険ではありません。落ち着いて対処してください。
車のワイパーゴムなどをカラスが損傷する事例は各地で発生しており、食べられない物を壊したり持ち去ったりする「いたずら」的な行動は、他の鳥では見られないカラスの特徴です。なお、断熱材など綿状のものは、巣作りの材料にするために持ち去る可能性があります。
被害を防ぐために、自動車をカバーで覆う、ワイパーの部分に毛布を掛ける、配管に丈夫なカバーを付ける等、物理的にカラスが触れないように防御する方法がもっとも確実です。ただ、カラスにとってゴム等は食物ほど「どうしても手に入れたい」ものではないと考えられるので、車や建物への飛来の邪魔になるような位置に、透明テグスを1~数メートル間隔で張ることで、警戒して来なくなるかもしれません。風船やCDなどを吊す、キラキラテープを張るなどの、見慣れない物でカラスを脅かす方法でも、ある程度は追い払い効果が見込める可能性があります。このような、カラスが来る目的が食物ではなく「いたずら」的な行動の場合は、カラスが来たことをセンサーで感知して音や光を発する装置による追い払いも、効果を持続しやすい条件であると言えます。
自然界よりも苦労せずに年間を通してエサを食べられる畜舎は、広域から集まるカラスの溜まり場になりがちです。畜舎周辺のカラスをオリで捕獲しても、集まる原因であるカラスのエサを減らさなければ、移動してくるカラスにすぐに埋め合わされ、畜舎周辺のカラスの数は減りません。
飼料置場、畜舎、堆肥舎などのカラスのエサがある場所を、カラスが通れない75ミリ以下の網目のネット等でふさいで入れないようにする必要があります。畜舎への侵入防止対策を完全に行ったら敷地に集まるカラスの数が減り、積んでいるロールパックサイレージのラップフィルムが破かれる被害も減ったという事例がありました。
建屋全体への侵入防止対策が難しい場合、餌槽をシート等でカバーする、一時置きの飼料にも蓋をする等、カラスが盗食できる状態のエサを減らすことが考えられます。
出産前後の母牛や子牛、弱り気味の牛など、カラスの攻撃を受けやすい牛を収容するために、カラスが通れない75ミリ格子以下の金網で完全に遮蔽した牛房を設けたり、蚊帳のようにネットを吊って牛を保護するといった例があります。
集団繁殖性のサギ類は、毎年春から夏にかけて、各地の樹林や竹林にコロニーを形成して繁殖します。コロニーに集まるサギ類の種類(アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギ、ゴイサギなど)や規模(数十〜数千羽)は様々です。住宅地近くの林にコロニーが形成された場合、鳴き声や臭い、フンで洗濯物等が汚れるなどが問題となることがあります。
いったん繁殖が始まってしまうと、サギ類を追い払うことは困難です。産卵以降は、営巣している木の伐採は難しく(許可なくヒナや卵を損傷することは鳥獣保護管理法で禁じられているため)、かつ、サギ類もその場所へ強く固執するため、脅かし系の防鳥機器(爆音機、ロケット花火等)を使っても効きません。遅くとも9月下旬になれば繁殖は終わり、サギ類はその林から去るので、それまでは対症療法として人の側でフン対策や臭い対策をします。
一方で、翌春にサギが来ないようにすることは不可能ではありません。最も極端な手段は林を伐採してしまうことですが、古巣を除去したり、脅かし系の防鳥機器を使ったりして追い払いに成功した事例もあります。この場合、実施時期が重要で、林の伐採や古巣の除去はサギ類が居ない秋から冬の間に行い、脅かしは2月から4月頃の飛来初期に高頻度で実施する必要があります。
ただし、サギ類は近隣の場所に翌年もコロニーを形成しやすい習性があります。特に、長年にわたって存続し規模も大きいコロニーでは、追い払いに成功しても周辺の別の林へコロニーが移動する可能性が高いため、地域のどこかでサギ類コロニーを許容することを前提に考えることも大切です。代替の林にサギのデコイ(模型)を設置し、コロニーの移動に成功した事例もあります。また、現在、河川敷などの住宅地に隣接しない場所にコロニーが存在する場合には、その場所で長年存続できるように配慮することも広域的な視点での対策となります。
ムクドリは繁殖が終了する6月末頃から市街地やその周辺の竹林や街路樹などに夏ねぐらを形成し、数百からときには数万に及ぶ個体が集合します。そのときの騒音や糞害は各地で問題になっています。ただし、10月半ば頃にはこの「夏ねぐら」は解消し、周囲に小規模な「冬ねぐら」を作るようになります。この時期にはほとんど問題が起こっていませんので、それまで我慢できればそれに越したことはありません。
しかし、商店街や人が集まる公園などでは早急な対策が望まれることと思います。ムクドリのねぐらの追い払いには、ムクドリが捕まった時にあげる声(ディストレスコール=遭難声)を利用するのが一般的です。夕方ムクドリが集まり始めた頃からディストレスコールを流し始め、夜間も断続的に流すことで、かなりの確率で追い払うことが可能です。この声を使った防鳥機器もいくつか市販されています。音を使った機器の優れた点は、音のボリュームを上げることで、簡単に有効範囲を広げることができることです。しかし、ディストレスコールは相当嫌悪感のある音ですから、人家近くでの使用には注意が必要です。追い払われたムクドリがどこへ行くかはコントロールできないという問題点もあります。追い払いの結果、より広い範囲にねぐらを拡散させ、鳥害をひどくするということも十分考えられるので、移動先をモニタリングしておくことも必要です。
【参考文献】中村 和雄・飯泉 良則 (1995) Distress callによるムクドリのねぐらの移動.野生生物保護1:69-76
市販品の紹介はしておりません。農業関係の雑誌や新聞に掲載される広告やインターネットで探してみて下さい。
ドバトは、ヨーロッパ原産の飼い鳩(伝書鳩など)が野生化したもので、よく建物に巣を作ります。ベランダでは、エアコン室外機の下などに巣を作るので、このような隙間をふさいで巣を作れないようにします。卵やヒナがいる場合は、処分には鳥獣捕獲許可が必要なので、ヒナが巣立つまで待ってからふさぎます(長くても1ヶ月程度です)。空の巣だけの場合は取り除いて構いません。ベランダの手すりにハトが止まる場合は、8cm程度の高さで手すりの上にひもや針金を張って、止まれないようにします。
隙間をふさぎ、手すりに止まれないようにしてもまだハトが来るようなら、ベランダ全体を網で覆うしかありません。音、色、磁石、匂いなどを使った各種の脅し道具には、すぐに慣れてしまいます。美観を損ないにくい色や材質の網も市販されているようです。
カワウの個体数を減らしたいのか、アユなどの捕食被害を減らしたいのか、コロニーをどうにかしたいのか、によって対策が変わってきます。何をしたいのかを明確にした上で、各県や水産庁のカワウ対策をインターネットで検索すると色々な情報が出てくると思います。例えば、認定NPO法人バードリサーチのカワウプロジェクトのページに、カワウの生態や対策を紹介した資料が掲載されています。
本当です。伝書バトや長距離の渡りをする小鳥などで、地磁気を利用して飛ぶ方向を決めていることが証明されています。鳥以外にも、ウミガメやサケなどが地磁気を感知すると報告されています。しかし、地磁気の方向は永久不変ではありませんし、局所的に乱れるとか、高緯度地方(正確には南北の磁極近く)では役に立たないといった問題があります。こうした問題をクリアするために、鳥は磁気コンパスだけに頼ることはなく、「天体観測」、つまり太陽コンパスや星座コンパスも併用しています。
なお、地磁気を利用する鳥でも、日常的な移動は視覚に頼っています。したがって、鳥が地磁気を感知できることは、「磁石で鳥を追い払える」という根拠にはなりません。詳しくは活動記録:「日本鳥学会誌」に磁石による忌避効果はみられないことを調べた論文を執筆をご覧ください。
餌の量は体の大きさでだいたい決まります。当グループでの飼育記録からは、体重20gあまりのスズメで1日に約5g、体重80gのムクドリやヒヨドリで12g、体重220gのキジバトで15g、体重1kgのカルガモで60gの餌を食べます。体重当たりでは小さい鳥の方がたくさん餌を食べることがわかるでしょう。
これらの値は穀物や乾燥飼料(水分が15%前後)の重さですから、果物や昆虫のように水分の多いものでは重さにして4〜6倍くらいになります。
上の値から、鳥の個体数がわかれば最大被害量の目安を立てられます。例えば、水田面積1,000haの町に1万羽のスズメがいて(実際にはこんなにいませんが)、毎日稲だけを食べるとすると、町全体で1日に50kg、10日で0.5トンの食害です。10a当たりなら10日で50gです。もっとも、果物や野菜への食害では、一部だけが食べられても商品価値がなくなるので、簡単には推定できません。
鳥の種類や季節(繁殖期か非繁殖期か)、場所(食物の分布状況)によって範囲は変わってきます。日々、食物を探しに行く範囲は、繁殖期などでなわばりを作っている鳥はそのなわばり内となり、ヒヨドリではおおよそ直径100mくらい、ハシボソガラスでは直径数100mくらいです。一方、なわばりを作らない鳥や非繁殖期には、カモ類、スズメ、ムクドリなど多くの種類は群れを作り、数kmから20kmくらいの範囲で食物を探します。繁殖期でも繁殖に参加しない若いカラスは群れを作りますし、巣のまわりの狭い範囲をなわばりとするハトなども餌場では群れを作り、広い範囲を移動します。
またこのような日々の食物を探しに行く移動とは別に、ヒヨドリやムクドリ、スズメなどは季節的に移動する個体もいることが分かっています。このような移動はときには大きな群になり、東日本から西日本へ移動することもあるなど、はるかに長距離を移動するようです。
鳥は天敵(捕食者)に対していろいろな声を出します。警戒声(アラームコール)は、天敵を見つけた鳥が「天敵がいるぞ!」と周りに知らせる声です。声を出すと天敵の注意を自分に向けることになるので、周りに自分の子供など、守りたい仲間がいなければ鳴きません。天敵があまりに近くても鳴かずに逃げてしまいます。声の収録が難しいこともあって鳥害対策にはほとんど利用されていません。
天敵には鳥が先に見つけてしまえば危なくないものもいます。例えばネコや昼間のフクロウです。こうした相手をはやし立てる声がモビングコールです。この声を聞くと周りの鳥も次々と集まってきます。その結果、天敵は捕食活動をやめて移動したりすることが知られています。
天敵に捕まった鳥が大声で鳴き叫ぶことがあります。遭難声(ディストレスコール)です。この声を聞きつけた鳥はふつう様子を見にきますが、助けられそうになかったり、状況がよく分からなければ逃げていきます。人が鳥を捕まえて鳴かせることができるので、市販の防鳥機器に「警戒声」と称して使われている音声もたいていはこの遭難声です。(別の質問も参照のこと:「Q2(7).鳥の声を流す防除機が市販されていますが、その仕組みと効果は?」)。
当グループではこれらの音声について研究したことがあります。詳しくは研究成果情報をご覧ください。
聞こえません。ヒトに聞こえる音の周波数範囲は、およそ20ヘルツから2万ヘルツですが、普通の鳥が聞こえるのは200ヘルツから8千ヘルツ程度なので、ヒトに聞こえない音は鳥にも聞こえません。ただし、ハトやニワトリは20ヘルツ以下の音も聞こえますが、これは超音波ではなく超低周波といいます。
視力(細かいものを見分ける能力)は、ハトやスズメなどの普通の鳥では、ヒトと比べて特に良くはありません。遠くから獲物を見つけるタカの仲間では、ヒトの3倍くらい視力が良いことがわかっています。
色覚や視野の広さは鳥のほうがすぐれています。ヒトには見えない紫外線や偏光を見ることができ、餌をついばみながら周りの警戒もできるような目の構造をもっています。
なお、鳥は「鳥目」で夜は目が見えないと思われることがありますが、普通の鳥でもヒトと同じくらいは見えています。ただし、ヒトに比べて、急に暗くなった時に目が慣れるのに時間がかかります。
学習や慣れは遺伝しませんし、基本的に親から子へ伝えるようなものでもありません。鳥は他の個体(親も含む)の振る舞いをよく見ているので、そのことにより学習や慣れが進行すると思われます。鳥にも個性があり、好奇心旺盛な個体やチャレンジ精神旺盛な個体が、まず防鳥機器等の設置してある圃場に侵入し、何も起こらない、かつ採食している、というところを他の個体が見て、次には見ていた個体も侵入するようになると考えられます。
ちなみに世代交代期間については、きちんと調べた研究例はほとんどないのですが、スズメでは繁殖している個体の多くは2〜3年くらいで入れ替わっています。ヒヨドリでもほぼ同様か長いもので4〜5年程度、ハシボソガラスでは13年という観察例があり、カラスのなわばり個体が交代する期間は数年から十数年程度と思われます。
今のところ鳥害対策機器の効果についての検査制度はありませんので、すでに開発されたものや開発途上の防鳥資材・機器の効果試験については受け付けておりません。当グループの試験研究に必要な場合には市販品についての効果試験を行うことがありますが、一般の手続きを経て購入しています。
なお、農薬(鳥用忌避剤)については、登録手続きとして複数の公的機関による効果試験が義務づけられていますので、当グループでも相談に応じます。
公的研究機関や大学、民間企業と共同研究に取り組むことは可能です。それなりの手続きが必要ですので個別にお問い合わせください。
磁力や音声、各種の視覚刺激等を利用した機器の開発についての民間企業や個人の方からの来訪による相談は原則として受け付けておりません。こうした機材を使った防除については農業現場での効果が非常に限定的であると考えているためです。
問い合わせ窓口は、農研機構お問い合わせフォームです。当グループとしてお話できる情報はほとんどこのウェブサイトで公開していますので、必要な情報が足りるか、事前にお探しくださるようお願いします。