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【特別編】ユニークな品種名の由来は?
飼料用サトウキビ「しまのうしえ」「やえのうしえ」

農研機構の育成したものの中でも、ユニークな品種名を取り上げる特別編です。今回は名付けの由来が個性的な飼料用のサトウキビ2品種を紹介します。

品種名とは・・・

農作物の個体群が、共通の特性(開花時期、葉の形、果実の色など)を持ち、それら特性が繁殖により安定して受け継がれ、さらに他の個体群とは明確に異なる特性がある場合に、その個体群につけられる名前が品種名です。「コシヒカリ」(イネ)や「ふじ」(リンゴ)などがよく知られています。

飼料用サトウキビとは

サトウキビは、南西諸島(沖縄県と鹿児島県の離島部をあわせた地域)で栽培される、その名の通り砂糖の原料となる作物です。その一方で、南西諸島で牛のえさ(飼料)として栽培されている一般の飼料作物と比べ、サトウキビは①高い収量が得られる、②気象災害に強い、③繰り返し複数年にわたって収穫できて省力的、などの特徴があります。
そこで農研機構では、サトウキビが南西諸島の畜産農家にとって有用な飼料作物になると考え、糖分は低いですが飼料として重要な葉や茎がたくさん採れるように改良した飼料向けのサトウキビ品種と、その栽培・利用法を開発して普及を進めてきました。

しまのうしえ

「しまのうしえ」は"サトウキビ栽培の最重要病害のひとつである" 黒穂病に強く、奄美以南の地域での栽培にも向いています。そのユニークな品種名は、鹿児島県徳之島の畜産農家の方の提案から生まれたものです。飼料用サトウキビは製糖用のものと比べてかなり糖度が低いため、間違って砂糖原料として出荷されないよう、製糖用サトウキビではないことが明確に分かるような名前が必要でした。
もともとサトウキビは、品種名より農林認定番号「さとうきび農林XX号」(XXは数字)を省略した「XX号」で呼ばれることが慣例となっていました。そこで飼料用サトウキビとして、どのような名前なら飼料用であることがわかりやすく、適しているかを悩んでいたとき、ある農家の方から「牛のえさ」と「牛の恵み」を掛けて「うしえ」と名付けたらどうかとの提案があり、そこに普及地域となる南西諸島を示す「しま」をあわせ、「しまのうしえ」という品種名が生まれました。

やえのうしえ

黒穂病に極めて強い抵抗性を示すなど主要病害に強く、耐倒伏性にも優れる「やえのうしえ」は、「しまのうしえ」に続いて育成された飼料用のサトウキビ品種で、交配親に特徴があります。父方が沖縄県八重山(やえやま)群島の西表島で収集したサトウキビ野生種「西表8」、母方を製糖用サトウキビ品種「さとうきび農林8 号」とする品種です。製糖用品種も含め、国内に自生するサトウキビ野生種を利用して品種化に成功した最初のサトウキビ品種となりました。
父方のサトウキビ野生種収集地である「八重」に加えて、両親の名前のどちらにも「8」が含まれており、「8、八」が「幾重」にも重なっていることから、「やえのうしえ」という名前が誕生したのです。