農作業安全コラム

農用トラックにおける事故

R3年5月 山﨑 裕文

 農作業事故において、JA共済連では平成25年から平成28年の間に発生し、共済金が支払われた死傷事故を対象に、農業機械に関連した事故の分析結果を公表外部リンク しています。この中で、機種別の件数が示されており、全5,709件のうち、乗用トラクタ1,045件、農用トラック595件、草刈機589件、刈払機476件、チェーンソー475件、歩行用トラクタ454件、自脱型コンバイン436件、となっています。直接的に農作業を行う機種が並ぶ中、多くの農作業に汎用的に使用されることもあるのか、農用トラックによる事故が全体の10%以上を占めています。
 本サイトの「事故事例検索」では、「トラック・農用運搬機」に分類されているもののうち、トラックに関連するものが5件確認(作目「全作目」、機械用具名称「トラック・農用運搬機」を順に選択)できます。これらの事故事例では、荷台に乗って各農作業を行っている際に、荷台から転倒・転落したものが多くみられます。トラックの荷台の高さであれば、大した事故にはならないと考える方も多いかもしれませんが、約1.1mの高さから転落して肺挫傷となり8ヶ月通院された例もあります。

 このような事故事例に関連して、いわゆる貨物輸送に関する労働災害に対し、様々な注意喚起、具体的な事故事例と対応策が示されています。厚生労働省都道府県労働局・労働監督署からは、「荷役作業時における墜落防止のための安全設備マニュアル」外部リンク が公開されています。この中では、荷役作業時における墜落災害防止対策として、①高所作業をできるだけ回避すること、②安全な作業床を設置すること、③安全な作業床の設置が困難な場合は、安全ネットや安全帯を使用すること、④床面と荷台、床面と荷台上の荷との昇降について安全に昇降できる設備を設置すること、⑤荷役作業では墜落時保護用の保護帽を必ず着用すること、の五つがピックアップされており、具体的に事業者で対応が可能であろう対策例が写真付きで紹介されています。また、労働安全衛生総合研究所からは、「陸上貨物運送事業におけるトラック荷台からの転落を防ぐために」外部リンクというリーフレットが公開されています。上記の④にあたる昇降設備の具体的な安全対策として、リヤステップ、サイドステップ、リヤ階段ステップ(格納式)、あおり内側回転式ステップ、各グリップ(昇降用の手すり)が示されており、楽な昇降と3点支持環境の整備を、転落しないポイントとして記載しています。

 これらの対策例が全ての農作業環境に適応できるとは思いませんが、ご一読いただくとご自身の環境で利用できるものもあるのではないでしょうか?農作業の環境でも多くの事故が発生していることを鑑みて、農用トラックや運搬車における荷台作業の安全性をご確認いただければ幸いです。

 

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