農作業安全コラム

良いペースを保つコツ

R4年10月 原田 泰弘

 暑さも和らぎ、朝夕が過ごしやすくなると雨の日が多くなる。ここ埼玉ではそんな印象があります。台風と聞くと蕪村の「野分のあとの とうがらし」などを思い浮かべたりしておりましたが、近頃のヤツはそんな風流で長閑なイメージには遥かに遠く、胸を切り裂かれるほどの災害を伴うことが多くなってきました。そんなときにも店頭には、しっかり野菜も果物も並べられており、最前線の生産者や関係者の皆様には頭の下がる思いです。とは言え、やはりその影響を感じる日もなくはなく、何もできないのがもどかしいような、申し訳ないような気持になることもあります。
 お米を始め、実りの秋、収穫の秋、そして食欲の秋!そんなワクワク感に水を差す台風の話題で始めてしまいましたが、この季節は台風とまではいかなくても天候との闘いの時期。そうなんです。天気の話をしたかったのです。と言いますのも、夏の最中に立てた様々な計画が、予定が、微妙にズレ始めているからです。例えば朝。夏の「いつもの時間」は未だ暗い。特に今年、この辺りでは、夏の終わり頃に雨になった日も多く、暗いのも天気のせいと感じておりましたが、然に非ず。実際に日は短くなっておりました。そうです。日暮れも早いのです。三鬼の「仰ぎ飲む ラムネが天露」を捩り、「仰ぎ飲む 麦酒が甘露」と風流振って近所の公園で楽しんだのもついこの前だったような・・・もう暗くて、涼しくて、そんな気にはなりません。

 夏野菜の収穫を終え、そしてその後片付けを終えたと思ったら、収穫の秋・・・だけではないんですよね。冬野菜を植える時期なども重なって相当多忙な状況が目に浮かびます。にもかかわらず日が短くなって外の作業時間が限られてきます。そして追い打ちをかけるように天候が崩れる日も多くなる。農繁期をどう回されておりますでしょうか。暗くなっても「もうちょっとだけ」とか、雨が降り出しても「とりあえず、あそこまで」とか、少しだけ気分で無理されていないでしょうか。「今日中にやっておかないと、もう日がないし」みたいな計画になっていないでしょうか。「うちだけ遅れてるみたい」と気にし過ぎていないでしょうか。何しろ、私自身、身に覚えがあることばかりです。この状況にはまり込み、一晩寝たくらいでは疲れなんか取れない。そんなのが続いてくるとキツイ。あり得ないところで躓いたり、ちょっとした手間を惜しんだり、手順を間違えたり、いつの間にかボーっとしていたり、全て怪我の原因となる危険な状況です。作業安全の基本の一つに、整理、整頓や掃除などがあり、これらを実施すれば、安全だけでなく、作業効率も良くなるとも言われています。もう一つ、これは私も努力しておりますが、計画も整理、整頓してみてはいかがでしょうか。生産側だけでなく、自分たちの能力、天気状況も踏まえた上でその計画のままで良いか検討し、どこをどう改善すれば、そのままで行けるのか、その方法を思いついたらやってみる。とりあえず頑張る、でも無理はしない。その積み重ねが良いペースを保つコツと、私は実感しています。

 そう言えば、楸邨の「秋刀魚焼く 匂の底へ 日は落ちぬ」もこの時期ですが、もうお外に七輪を出して焼き物なんて、お祭り以外では見られなくなってしまいましたね。いつか秋刀魚も・・・なんて考えたくもありません!

 

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