「農作業安全情報センター」20周年に寄せて
R4年6月 菊池 豊
2002年にウェブサイト「農作業安全情報センター」を開設して(図)、今年で20年間が経ちました。この間、皆様にご愛顧いただき、厚く御礼申し上げます。

図 開設初期の農作業安全情報メインページ
開設初期のエピソードについては、2016年5月の安全コラム「再出発にあたって」でも少し紹介しました。筆者は、サイト開設前の農業機械安全等情報委員会(1998~2001年、当部門の前身である生研機構)での調査研究から2008年度まで黎明期に関わっておりました。
当時、農作業事故の実態把握・分析、安全啓蒙等に関する情報を提供するため、当時の生研機構評価試験部長を委員長として委員会が組織され、「電子安全情報システム」を構築することになりました。そして、筆者は上司らとともに、国内外にあるデータベース、新たな事故調査システム(マクロ調査、ミクロ調査)、安全情報システムの構築(情報の入力とインターネットによる出力)と導入効果、このシステムを中心とした安全対策の展開などを担当しました。
ウェブサイト構築については、当時、生研機構内でもインターネットや電子メールが利用されはじめてはいたものの、それまでハードウェア研究(機械の開発、改良)が主であり、ソフトウェア研究(情報発信など)のノウハウがあまりないことから、不安の声もありました。さらに、ウェブサイトは一度はじめたら簡単には終われないこと、研究課題が終了しても情報を更新したり、苦情や不具合への対応を継続したりすることも覚悟しなければなりませんでした。
研究の方向性などについては、当時の農業機械化担当理事や労働科学研究所長、東京農工大学の米村・笹尾両先生、日本農村医学会の先生方、農林水産省生産局の方々をはじめ多くの皆様からご指導いただきました。またこの頃は、産業安全や製品安全の分野でも様々な動きがあり、随時参考にしていました(概要を別表に記します)。
同時期に「農作業安全のための指針」の改訂作業に協力したり、ウェブサイト開設後も事故調査に赴いたりしながら、農作業安全ポイントや改善事例検索などのコンテンツを追加して、アクセス数やアンケートをもとに改善を図りました。さらに、東京大学の米川先生のご協力のもと、リアルな事故再現映像を駆使した「ゲーム感覚で学ぶ農作業安全」を開発したり、新潟県農業機械士会にご協力いただいて危険マップを、全国農業機械士協議会にご協力いただいて改善事例集をそれぞれ作成したりと、農作業安全研究全体も充実させていきました。
そして現在も、当ウェブサイトは、当機構の農作業安全研究において、私どもと現場の皆様をつなぐ重要な役割を担っています。引き続き担当者一同、皆様の農作業安全推進に少しでもお役に立てる内容とするべく、努力して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(参考文献)