「機械ごと転倒」ってどんな感じ?-VRで疑似体験
R4年7月 大西 明日見
改めて申し上げるまでもありませんが、当サイトは、安全に農作業をしていただくための情報を提供しています。農作業事故について事例を挙げて解説しているのも、事故を防ぐための具体的な対策につなげられるようにするためです。写真やイラストも用いて、どういう事故だったのか、状況をイメージしやすいように工夫しております。
このように、事故を頭で理解することはできますが、もし自分がその事故で被災した当事者だったとしたら、その瞬間の恐怖がいかほどだったのか、想像できるでしょうか?例えば、乗用型トラクターでは、機械ごと転倒する事故が多いですが、もし自分が運転していたとしたら、実際どのように感じるでしょうか。
「百聞は一見に如かず」と言われますが、ためしに事故にあってみることは当然ながらできません。でも、VRゴーグルを使って、事故を疑似体験することができるようになりました。JA共済連と農研機構が協力して、農作業事故を疑似体験するVR映像を制作し、現在、以下の7編をご覧いただけます。
- 乗用型トラクター 転倒編
- 耕うん機 後進作業編
- コンバイン 巻き込まれ編
- スピードスプレーヤー 挟まれ編
- 刈払機 刃との接触編
- 脚立 転落編
- 農用運搬機 転倒・積み降ろし作業編
※VRゴーグルとは、図のように視界をすっぽりと覆い、中に映し出された映像を見るものです。後ろを向けば後ろの景色が、上を向けば上の景色が見えるというように、頭を動かしたとおりに自分の周囲を見渡すことができ、まるで、映像の中に入り込んだかのように見えます。

図 VRゴーグル
例えば乗用型トラクター編では、道路で脱輪して転倒する瞬間を、運転者目線で体験することができます。当事者の視点で事故を疑似的に体験することを通して、事故は決して他人ごとではなく、自分にも起こりうるまさに『自分ごと』だと実感していただきたいです。
また、それぞれの映像では、事故を疑似体験するだけでなく、原因や安全な作業の方法についてもあわせて解説していますので、事故を防ぐためには具体的にどうすれば良いかを考えるヒントにもなります。
この「農作業事故体験VR」は、JA共済連が中心となり、農機具展示会などのイベントや農作業安全の研修会などで視聴の機会を提供しています。また、私たち農研機構でも、これを活用した効果的な安全研修事例を構築していく予定です。
身近にそのような機会がないという方でも、この「農作業事故体験VR」はインターネット上でも公開していますので、パソコンやスマートフォンでも視聴できますし、スマートフォン用の簡易的なVRゴーグルを使えば、頭を動かしながら見渡すこともできます。「VRってどんなもの?」という好奇心からでも構いませんので、ぜひご覧ください。
これをきっかけに、より一層、「事故を起こさない」という意識を強く持っていただければ幸いです。そして、皆様が一日一日の作業を無事に笑顔で終われますよう、切に願っております。