農作業安全コラム

安全標識(いわゆる安全ラベルとか警告表示ラベル)の中身

R5年10月 手島 司

 我々農研機構が実施している農業機械の「安全装備検査」(以下「検査」)において、確認項目の中に「安全標識」というものがありますが、皆さんにとっては耳慣れない言葉かもしれません。安全標識とは文字が書かれた図1~3や文字のない図4のようなもの(…A、…B、…Cは説明用に追記しました)で、JIS B9100「農業機械-安全標識及び危険図-一般原則」(以下「規格」)で様式等が指定されています。ちなみにインターネットの画像検索では、「安全ラベル」や「警告表示ラベル」という言葉を使った方が良くヒットする(より一般的)ようです。なお、図1~3の安全標識の外周(規格でいう「境界線」)の色については流通している大多数が白く縁取られたものではありますが、ここでは規格の「安全標識の色」という項目で第1候補として指定(推奨)されている色で作成してみました。

安全標識
図1・2・3 文字を使用した安全標識(危険・警告・注意レベル) 図4 図のみの安全標識
注)図中の …A、…B、…Cは、本コラムで説明しやすいように追記したもので、文中のA~Cと対応
A:危険の説明、B:危険に遭遇した場合の結果の説明、C:危険の回避方法

 こういった安全標識はトラクターやコンバイン等の農業機械に多く貼られているわけですが、大前提としては「機械側においてリスクを低減するための技術的対策を施してもなお残ってしまったリスクに対応するためにやむを得ず使用する」というものになります。図のように赤色主体のものは「危険」(図1)、オレンジ色は「警告」(図2)、黄色は「注意」(図3)(これらを「信号語」といいます」)レベルであり、危険な順番に「死亡又は重大な傷害を招く切迫した危険な状態」、「死亡又は重大な傷害を招くことがあり得る潜在的に危険な状態」「軽度又は中程度の傷害を招くかもしれない潜在的な状態」を示しています。なお図4は図1の「危険」レベルのものと同じ内容を、規格に沿って図のみで表現・作成してみたものですが、ご覧のとおり図1のような赤色を使用することなく背景は黄色一色となっています。ということで、信号語の危険レベルのような概念がこの「図のみ」の様式にはありません。

 最後に安全標識の中身を見てみましょう。規格によれば、安全標識の目的は「運転者・作業者に、現在ある又は起こり得る危険を警告する。何が危険であるかを示す。危険の性質を説明する。…A」「危険によって、結果としてどのような障害に至るかを説明する。…B」「運転者・作業者に、危険回避の方法を教える。…C」ことによって種々の危険を運転者等に回避させることです。安全標識の中にこれらの全ての情報を「文字のみ」、「文字と図」あるいは「図のみ」で表示することが規格では推奨されています。我々の行う検査は「これらのA~Cの情報の一部が含まれていないから、不合格!」とまでは現状なっていないのですが、「この安全標識には全ての情報がわかりやすく順番に表現されているな」とか「危険を回避するにはこうしたらいいんだな」といった目線で見てもらえれば、機械側で技術的対策ができなかった箇所に残るリスクを減らせるのではないかと思います。「安全標識は本来こうあるべき」というものを検査において今後追求していきたいと思いますが、運転者・作業者である皆さんは農業機械を使用する前に安全標識の内容を今一度よくご確認ください。よろしくお願いします。

 

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