農作業安全コラム

繁忙期。でも、お願いします

R5年5月 原田 泰弘

 5月になりました。新緑が美しく、風も心地よくて過ごしやすいのか、私もかなり好きな季節です。「やはらかに みかんの花の にほひ来て・・」とは、何方の和歌でしたか。この時期の好きな歌です。とは言え、よいときほど儚く過ぎてしまうもの。やがて酷暑のような夏日が・・、いえ、この辺りで止めておきます。
 さて、ここからは一年を通して最も繁忙な時期になる方も多いのではないでしょうか。既に入ってる?申し訳ございません。そんな渦中の皆様に「計画にゆとりを」とか、「十分な休息を」とお願いしたところで、「今それどころじゃ・・」となるのは目に見えております。繁忙期を乗り越えるために、日頃から整理、整頓を行い、故障を避けるためにしっかりメンテナンスをしておきましょうとか、しっかり準備をして仕事を分散させましょうとか。よく言われることですが、こういった対策は繁忙期の前の実施内容です。もうこの時期では手遅れです。ではどうするか。何をお願いするか。自分はどうしたかなぁと乏しい経験といいますか、記憶に頼りますが、事故が発生する可能性を高める行動のうち、例えば次のようなものは「繁忙」がかなり原因となっているのではないでしょうか。

  • 疲れて集中力の欠如や不注意から生じる行動
  • 少しでも楽にというか、疲労はできるだけ小さくしたいために行う行動
  • 次はあの仕事をしなければならないとの焦りやプレッシャーから生じる行動

 どれも人として自然な行動です。これらを自力で抑制することは容易ではないと私も自覚しております。急がば回れ的な行動が必要なとき、まずお願いしたいのは習慣付けです。まず○○を確認してからこの作業とか、これは○○を用意してといった安全な手順、積極的な道具の使用、それから元に戻して終えることを習慣付けることになります。これも仕事が落ち着いている時期から行うべきとも思いますが、この時期でも効果は期待できます。声を出しながら行うと習慣付けしやすくなりますのでお勧めです。その声出しですが、同僚がおられる方は積極的にお声掛けするのも良いと思います。適度に互いの状況を見る必要がありますし、「ありがとう」や「助かった」や「無理せず、呼んで」などは追い込まれたときほど、こころを癒す効果を実感できると思います。一作業終えるたびに声を出して頑張った自分を褒めるのも効果ありです。
 最後にお願いしたいのは、この時期を安全に乗り越えるのに役立ったこと、逆に反省すべきことや危うかったことの記録です。丁寧な記録でなくても構いませんが、対象を示す言葉にご自身の感情や状況を加えていただきたいです。「苗箱洗浄:踏み外し、ビビった」といった感じです。次の繁忙期の前に見返しても記憶が蘇りやすく、事前の対策にとても役立つと思います。もちろん繁忙期が過ぎてから、思い出せることだけを記録する。それでも構いません。
 さて、これからの時期、身体の疲労は感じません、一晩寝れば元通りといった方は、むしろ少ないかもしれません。ですので、ときには、みかんの花などお気に入りに浸りながら、こころに疲労を溜めないことを心掛けていただければと思います。

 

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