農用の単軌条運搬機(モノレール)について
R6年11月 清水 一史
10月上旬まで真夏日が続きましたが、ようやく暑さも和らぎ、すごしやすい季節となってきました。
これからミカンなどのカンキツ類が収穫され、本格的に市場に登場してきますが、今回は急傾斜地に立地していることが多いカンキツ園を中心に農業資材や農産物を運搬するために広く利用されている農用の単軌条運搬機(モノレール)についてお話ししたいと思います。
単軌条運搬機には、動力車であるけん引車と荷物台車から構成され、無人で走行する非乗用型とけん引車と荷物台車の間に人が乗るための乗用台車を連結した乗用型があります。
最大傾斜45度にも及ぶ急傾斜地で用いられることから、安全対策として、ブレーキが非常に重要で、けん引車には駐停車ブレーキ、降坂ブレーキ、緊急ブレーキが、乗用台車にも駐停車ブレーキ、降坂ブレーキがそれぞれ装備されています。
駐停車ブレーキは、文字どおり、走行状態からの停止と停止状態を保持する2つ役割があります。また、単軌条運搬機は、降坂時の速度維持(制動)を主にエンジンブレーキにより行っていますが、降坂ブレーキ(内部拡張式の遠心ブレーキ)が降坂速度を一定に維持する補助的な役割を担っています。緊急ブレーキは、非常用のブレーキで、車体やブレーキの異常・破損などにより速度が一定限度を超えると作動し車体を停止させる役割があります。
けん引車に装備されている駐停車ブレーキは、作業時に常に使用するブレーキですので、取扱説明書に記載されている制動力が確保されているか(目安として、走行中からのブレーキ作動で1m以内に停止)、常日頃から点検を怠らないようにしましょう。また、降坂ブレーキのブレーキシューの残り具合やバネの状態、緊急ブレーキの変形・破損の有無、軌条の歪みや摩耗、接続部分の不良、ストッパー等の破損、軌条周辺の障害物なども定期的に確認しましょう。なお、機体の点検整備や着脱、掃除などは、平坦な場所で、必ずエンジンを停止してから行ってください。作業中などの点検でやむを得ず斜面で行う場合は、機体が動かないようロープなどで機体をしっかり固定して行ってください。
単軌条運搬機の使用にあたっては、降坂時にエンジンブレーキを作用させず(エンジンをかけない状態)に降坂ブレーキのみで降坂した場合、過熱によりブレーキがきかなくなったり、焼損したりするおそれがあるため、絶対に行わないようにしましょう。また、緊急ブレーキが作動した場合は、車体やブレーキに異常や破損が生じていることが考えられるため、緊急ブレーキを解除してそのまま運転を開始・継続することは、非常に危険です。販売店等で点検・修理を受けた上で、運転を再開してください。その他、荷物台車に乗ったり、過積載で作業して、車体から放り出されたり、停止できなかった事故がおこっていますので、絶対に行わないようにしてください。
以上のようなことを心がけていただき、引き続き安全運転、安全作業に努めていただければ幸いです。