農作業安全コラム

明るい時間帯に帰りましょう

R6年2月 皆川 啓子

 今年度も確定申告の時期ですが、同時に生産者の方々は春作業の計画について、長期天気予報とほ場マップを眺めながら作戦を練り始めている頃でしょうか?もう始まっているよ、という方もいらっしゃるかもしれません。作付面積の多いところでは、どのほ場から始めようか、どうまわるのが効率が良いか、等と策を巡らせていらっしゃるかと思います。

 作業計画を練る中で、ほ場までの移動時間は1日のスケジュールに含めているかと思いますが、例えば早めに戻り、作業後の機械の清掃・点検整備等を行う時間を十分確保する、といった点はいかがでしょうか?
 突発的なトラブルで作業を中断せざるを得なかったり、計画通りに作業が進まなかったりした際に、戻りが予定よりも遅くなってしまうこともあると思います。明るいうちは遅れを取り戻そうとギリギリまで作業してしまいがちですが、道路での追突事故は、帰りの薄暮時~日没後に多く発生しています。この時間帯は、周囲から機械が見えにくくなりますし、帰宅時間で一般車両の交通量も増えるため、速度差の大きいトラクタが追突されるリスクは高くなります。

 トラクタの交通事故は、後方からの追突が多いというデータ別ウィンドウや、法令遵守の観点から、トラクタは作業機を付けた状態での公道走行の要件別ウィンドウが整理され、必要に応じて作業機後方にも反射材や灯火器類、外側表示板を付けることになりましたが、法的に必要な分だけでよいと考えず、追突事故のリスクを下げるために、低速車マークも含めてできる限りの対策を導入していただきたいと思います。その上で、一般車両から見えやすい、明るいうちに、作業と移動を終わらせることも大切になります。実際に、ある生産者の方は「15時の休憩時に、明るい時間帯に帰るにはどのタイミングでほ場内作業を切り上げるかを算段し、予定していた作業面積に足りなかったとしても構わず戻るようにしている」とおっしゃっていました。

 ただし、それでも追突のリスクをゼロにはできませんので、万が一追突されて機体から投げ出され、重傷を負ってしまう事態を避けるために、安全キャブ・フレーム(フレームはしっかり立てる)付きのトラクタを使用した上で、シートベルトを締めておくことが重要です。作業中は乗り降りする機会が多く、煩わしいかもしれませんが、道路走行時やほ場の出入り時は締めても問題ないはずですし、作業中については、特にほ場外への転落の危険性がある外周作業や旋回時には、シートベルトを締めておきたいところです。安全キャブ・フレーム付のトラクタを使用していたにもかかわらず、シートベルトを締めていなかったことで、トラクタの転落・転倒時に死亡事故に至ってしまう事例は多々報告されています。せっかくトラクタに備わっている安全装備です。ぜひ、適切に使っていただければ幸いです。

 

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