農作業安全コラム

車両系農業機械の特別教育が検討されています

R6年7月 志藤 博克

 少し前に、昭和61年からタイムスリップしてきたパワハラ系体育教師のドラマが話題を呼びました。当たり前と思っていた事が激変し、反発を覚えながらも少しずつ意識が変わってゆく主人公の姿が描かれていました。
 次にお話しすることが、農業の「当たり前」を変えるきっかけの一つとなるかも知れません。

 厚生労働省では、自走可能な車両系農業機械について、労働安全衛生法令の対象とすることが検討されています。この法令は該当する機械を使用する労働者を雇用する者に対して義務づけられるもので、乗用型トラクター、コンバイン、スピードスプレーヤー、農用運搬車、農用高所作業機の5機種が対象となる見通しです。法令では、機械の構造や使用に関する措置のほか、運転業務に就く労働者への特別教育(学科と実技)を求める内容になる模様です。この動きを受けて、農林水産省をはじめ、農研機構も含めた関係機関では、特別教育のカリキュラムの作成や講師の育成、できるだけ受講者の負担を軽減できるような実施体制の構築等への検討が始められています。法令の改正・公布の時期は未定ですが、数年後には実現する見通しです。

 この特別教育は、法令の適用外となる家族経営の方も受講することができるようです。これまで、多くの方が見よう見まねで農業機械の操作や作業方法を身に付けてきたと思います。「長年使い慣れているから大丈夫」などと言わないで、より多くの皆さんに受講していただきたいと思います。きっと意外と知らなかった大事なことがあります。反発もあろうかとは思いますが、将来的には、農作業安全に関しては「昔は受講せずに機械に乗ってたの?!」と驚かれるような状況になってほしいと願わずにはいられません。そのような状況にすることができれば、農作業事故で苦しんだり悲しんだりする方々を減らせるのではないでしょうか。

 

キーワード:乗用トラクター/コンバイン(自脱型/普通型)/農用運搬車/農用高所作業機/その他の機械
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