農業でのアシストスーツの紹介
R7年8月 田中 正浩
「今どんなアシストスーツがあって、どんな農作業で使えるのか」といったご質問を多くいただくようになりました。近年、ロボット農機やドローンなど、新しい技術も次々と登場し、「スマート農業技術」と呼ばれる分野が広がりを見せております。それぞれの技術について正しく理解することはもちろん重要ですが、日々多くの判断を求められる農業経営者の皆さまにとっては、「要するにこういうものだな」といった大まかなイメージを持つことも、導入や選定の際に非常に有用です。
私たちはこれまで、農作業用アシストスーツの評価や設計に関する研究に取り組んできた中で、国内外の製品や農作業での活用事例を収集・分類し、国際規格(ISO)にも関わってまいりました。
本稿では、そうした経験をもとに、私自身が持つ「農業におけるアシストスーツのイメージ」を皆さまと共有させていただき、少しでも皆さまにお役立ていただければ幸いです。
詳細な製品例や分類については添付資料をご参照ください。
なお、これらの情報は随時更新しておりますので、現時点での参考情報としてご理解いただけますと幸いです。詳細を知りたい方、「こんな使い方もあるよ」といったご意見をお持ちの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
<こんな農作業で活躍!>
代表的な活用場面 | どんな使い方? | 農作業で注意すること |
収穫や出荷、準備等での 重量物の持ち上げ・運搬 |
コンテナや出荷箱、資材等を軽トラや運搬車等に何度も運んで積み込む | 傾斜地や段差をまたぐときは転倒に注意 |
畝への定植や収穫等での 中腰姿勢の維持 |
苗の植え付けや収穫等で、立ったり中腰になったりを繰り返す 刈り払い機や雪かきでの軽い前傾姿勢の維持でも活躍 |
脚を押して上体を引き起こす構造のため、中腰姿勢で前後に移動するのには不向きなタイプもある 左右への移動は問題ない |
果樹での受粉や収穫等での 腕上げ姿勢の維持 |
果樹の受粉や収穫等で、腕を上げたままの姿勢や、腕を何度も上げ下げする作業で活躍 | 転倒時に手が出しづらくなる可能性があることに注意 |
日頃のちょっとした 歩行など日常動作 |
日常の歩行や立ち座りでちょっと腰や膝等が心配な時に活躍 |
(執筆者のまとめ)
<各製品の特長イメージ!>
構 造 | |||
ハード(外骨格タイプ) | ソフト(サポータータイプ) | ||
動 力 | あり(アクティブ) |
がっちりアシスト
![]() 動力をしっかり伝達する強力タイプ 補助がほしいタイミングできびきび動く
大体の価格感
100万円くらいだが最近はレンタルが主流
得意な農作業
性能とコストをしっかり活かすには、重量物をひたすら持ち上げたり運んだりする作業に使うのがベターか |
しなやかアシスト
![]() やわらかくて着心地がいいのに補助がほしい時にしなやかに働く
大体の価格感
30万円以上
得意な農作業
重量物の持ち上げ・運搬も得意だが、中腰姿勢の維持で真価を発揮しそう |
なし(パッシブ) |
ささえるアシスト
![]() フレーム構造や溜めこんだ弾性力で常に体をしっかりと支えてくれる
大体の価格感
20万円以下
得意な農作業
中腰維持と重量物の持ち上げの両面で活躍 果樹など腕上げ姿勢の維持向けの製品も多い |
つつみこむアシスト
![]() 服のように包みこんで常に体をやさしく支えてくれる
大体の価格感
数万円
得意な農作業
バリエーションが非常に豊富なので重量物の持ち上げから日常動作のサポートまで幅広く対応 |
(執筆者のまとめ)
添付資料:アシストスーツの製品例と分類例
Tanaka, M., & Xiang, X. (2025). Evaluation Methods for the Assist Suit and Agricultural Applications. Japan Agricultural Research Quarterly (JARQ), 59(2), 101–117. https://doi.org/10.6090/jarq.23S20
