農作業安全コラム

ふたつのKY

H21年3月 岡田 俊輔

 少し前に「KY」という略語が流行りました。「空気を読めない」の頭文字を略した言葉だそうで、場の雰囲気を読めない人など、一般に否定的な意味合いで用いられる言葉です。それ以前から安全分野でKYは、「危険予知」の略として用いられ、KYT(危険予知トレーニング)と言えば、危険が潜在する写真を見て、どのような事故が想定されるか、どのようにその危険を回避すればいいかなどを想像することで、日常に潜む危険をすぐに発見し、回避できるように訓練することを指します。語源は異なりますが、私はどちらも本質的に近い言葉ではないかと感じています。対象が「場の空気」か「危険」かの違いであり、安全分野でよく言われる「認知」、「判断」、「行動」のいずれかに問題があると、場合によってKYと揶揄されたり、事故を起こしてしまったりすることになるのでしょう。

 そういう私も、駐車場でバックしている時に看板に気付かずリアガラスを割る事故を起こし、危険予知が出来ていないと痛感・猛省しました。これは、右側に白線があったので駐車スペースであるはず(実際は駐車スペースのひとつ隣りだった)、駐車場には車止めがあるはず(駐車スペースでは無かったので車止めがあるはずがないし、車止めが無い駐車場も沢山ある)、車止めがあれば障害物にぶつかるはずがない(もちろんその限りではない)等々の思い込みによって、後方確認を怠った(認知を放棄した)ために起こった事故だろうと自分なりに考えています。(思い込みが生じた背景には、炎天下の試験が続いた最終日で気が抜けていた等も考えられます。)

 危険予知などの心掛けはもちろん大切ですが、場の空気を読むことの難しさを考えると、それだけで事故を予防することがいかに難しいかが感じ取れます。空気を読む達人であるお笑い芸人の方々にも、安全対策のヒントが隠されているのではないかと思う今日この頃です。

 

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