農用運搬車の事故防止に向けて
H22年10月 原田 一郎
秋の農作業安全確認運動が農水省により9月、10月の間実施されています。今回の運動では、収穫の時期ということで、コンバインの転落・転倒事故、巻き込まれ事故への注意が重点的に呼びかけられています。コンバインの転落・転倒による死亡事故はここ数年、全国で毎年5~10件発生しています。特に、圃場の出入り、トラックからの積み下ろし、路肩走行等には十分注意してください。
コンバインの安全作業に関しては、7月のコラムでもご紹介した本サイト「農機安全eラーニング 自脱コンバイン」が写真と動画が豊富で分かりやすくなっています。是非お試しください。
さて、転倒・転落による死亡事故数で言うと、乗用トラクターに次いで多い機種は農用運搬車です。その転落・転倒による死亡件数は過去10年平均で見ても毎年17件程度あり、農用運搬車での死亡事故件数の約4割を占めています。しかし、それらについて対策はほとんど進んでいないのが現状です。
そのため、生研センター(現:革新工学センター)では平成18~20年にかけて研究を行い、TOPS(Tip-Over Protective Structureの略。転倒を横転までにとどめることで運転者が下敷きになることを防ぐ構造物、2柱式の安全フレームのようなもの)が対策となりうるという結論に達しました。そこで、当生研センター(現:革新工学センター)、(社)日本農業機械工業会、運搬車メーカー4社を交えて「農用運搬車の転倒時運転者防護対策に関するワーキンググループ」を設立することになり、先日、第一回会議が開かれました。
会議では、農用運搬車の転倒事故、TOPSの適用の可能性などについて様々な議論が交わされました。今後、ワーキンググループでは有効な転倒事故対策について検討していく予定です。
なお、農用運搬車の安全については本サイト内「農作業安全のための指針参考資料 個別農業機械別留意事項 第3農用運搬車」でもご紹介していますので、ご一読頂ければと思います。