気にかかる傾向に注目
H22年8月 中村 利男
梅雨末期の地域的豪雨に続き、記録的な暑さに見舞われている昨今ですが、家屋の崩壊、農地の冠水等で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、特に熱中症の防止等暑さ対策を万全にしてこれからの農作業を無事故で行っていただけますようよろしくお願いします。
さて、ご案内の通り、農作業における死亡事故件数は、近年、残念ながら約400件前後で推移しておりますが、この度、平成元年~平成20年の20年間を対象にして、「農作業中の死亡事故の総件数」、「農業機械作業に係る事故件数」、「農業機械・施設以外の作業に係る事故件数」、「農業用施設作業に係る事故件数」の推移を改めてながめてみたところ、気にかかる傾向があるように思われますので、今回ご紹介させていただきます。
- (注)グラフの凡例は上部から
- 「農作業中の死亡事故の総件数」(20年間の平均値:390件)
- 「農業機械作業に係る事故件数」(20年間の平均値:277件)
- 「農業機械・施設以外の作業に係る事故件数」(20年間の平均値:94件)
- 「農業用施設作業に係る事故件数」(20年間の平均値:19件)
各々について、一次回帰分析も試みましたが、相関係数が大きくないことから推計値の算出を行わず、大まかな傾向として捉えることとしました。
「農業機械作業に係る事故件数」については、行政、関係機関・団体、農機メーカ等の取組による安全性の高い農業機械の普及、安全知識・技術の周知、生産者の安全意識の向上等の結果として、減少傾向にあるように思われますが、逆に「農業機械・施設以外の作業に係る事故件数」では、年次変動はあるものの、平成10年あたりから増加に転じているように感じられます。
「農業機械・施設以外の作業に係る事故件数」の内訳のうち主な原因としては、①ほ場、道路からの転落、②木等の高所からの転落、③稲ワラ焼却中等の火傷、④溺水、⑤作業中の病気によるものが挙げられます。「溺水」は、豪雨時の田畑、水路の見回りに起因している可能性もありますし、「火傷」は野焼きに、「作業中の病気」は熱中症に関連しているものと考えられます。
このため、今後とも乗用型トラクタ等の農業機械、施設の安全使用の徹底、農作業安全意識の向上等を行っていただくことは言うまでもありませんが、ほ場、高所からの転落、熱中症、溺水、火傷等による死亡事故の発生が、近年、増加傾向にあることについても再度、認識いただき、今後の農作業事故の防止に役立てていただきたいと考えます。
一般的に、加齢により平衡感覚、とっさの判断力等の心身機能、体力は低下することから、転落事故を起こしやすく、ケガの程度も大きくなる傾向がありますので、特に、高齢者の方々には熱中症対策も含め、一層、余裕をもった農作業に心がけていただけますようよろしくお願いします。