農作業安全コラム

事故原因の追及と安全対策

H24年6月 積 栄

 少し前にニュースで、学校における子どもの窓からの転落事故の多さを伝えていました。

 小学校では窓からの転落が半数以上を占め、その要因として、窓の近くに棚等があり、そこに子どもが乗ってしまって窓枠を乗り越える例が多いことが紹介されました。一方、行政も学校での転落事故防止の留意点を通知しており、窓の近くに足がかりとなるものを置くことの危険性も喚起されていたそうです。しかし問題として、この危険性が他の多くの項目とあわせて総花的に示されていたため、この点が特に危険であることが現場には十分認識されず、事故が繰り返された可能性がある、という内容でした。

 前置きが長くなりましたが、ここで示された教訓は、そのまま農作業事故の現状にもあてはまるように感じました。

 農作業事故は長期間にわたり、件数も事故の傾向も大きく変わっていません。これまでの対策が十分有効には働いてこなかった理由のひとつに、現在の全国レベルでの農作業事故調査では機種別、事故形態別(転倒、挟まれ等)等の統計情報しか示されず、各事故の根本的な原因(例えば、なぜ転落に至ったのか)やそれぞれの原因が占める割合が不明なため、対策に優先順位がつけられなかったことが挙げられるのではないでしょうか。原因の調査・分析が進み、何に最も手を打たなければならないかが見えてくれば、その情報を現場に伝え、そこに注力して、機械や安全啓発、現場環境等の改善について、より有効な対策を打つことが可能になると考えられます。

 生研センター(現:革新工学センター)では、昨年度から協力先道県とともに、農作業事故の詳細調査・分析を具体化するための研究課題を進めています。機械開発、安全啓発、現場環境のそれぞれに、事故低減に向けたより有効な情報が提供されるように、努力していきたいと思います。

 

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