あのときはどうかしていた・・・
H25年10月 志藤 博克
私は、一昨年から農水省の「農作業事故の対面調査」に係わっておりまして、これまでに延べ100名近くの事故に遭われた方々にお話を伺っています。皆さんが声を揃えるのは「あのときはどうかしていた・・・」という言葉です。「今から考えれば、そんなに焦る必要はなかった」というように、事故当時に考えていたことと、現在、冷静になって考えられることとのギャップに心を痛めておられました。しかしこういうことは誰にでもあることなのです。私自身も心当たりがいくつもあります。冷静になって考えれば、取るに足らないことが容易にわかるものでも、「その時」はそうは思わないのです。では、どうしたら「その時」に合理的な判断ができるようになるのでしょうか?
これは私の考えですが、ちょっとしたトレーニングが必要と思っています。日頃の行動について、冷静になって予め是非を判断しておくのです。例えば、焦っていると操作手順を省略しがちですが、省略して短縮できた時間が一日のスケジュールにどれくらいの効果を与えるのか、考えるのです。大した効果がないことを納得できれば、急いでいるときでも、心迷わず正しい操作手順を行えるのではないかと考えます。そのためには、本来の正しい行動はどうあるべきか、そうしないとどうなってしまうのかを知っておく必要があります。そこで参考になるのが事故事例です。平成24年度対面調査結果「こうして起こった農作業事故Ⅱ」 が農水省のホームページでダウンロードできますので、是非参考にして下さい。「仲間には自分のような目に遭わせたくない」という方々の思いが詰まっています。