オランダにおける農作業事故について
R7年10月 井上 秀彦
これまで、アメリカ、韓国、中国における農作業事故の状況についてご紹介しました。農作業事故情報からその国が見えてきました。今回は世界第3位の農産物輸出国であるオランダの状況についてご紹介いたします。
オランダの農業・緑地分野における死亡事故件数は2023年で10件(※1)、2024年で4件(※2)でした。過去10年の平均を見てみると年間10.9件の死亡事故が発生しています。日本における農作業死亡事故者数を知っている皆様から見るととても少なく感じられるのではないでしょうか。しかし、2023年の10万人当たりの死亡事故者数(注)を見てみると全産業の0.7人と比べて農業は5.4人と約7倍となっており危険な産業とみなされていることに日本と変わりはありません。
オランダにおいて重大な農作業事故が発生した場合、即時報告義務がありオランダ労働監督局による調査が行われます。また、雇用主も独自に調査を行う必要があり、報告書と改善計画の提出が求められます。この報告書と改善計画は労働監督局による審査も行われ、フォローアップ検査も行われます。これらを怠ると多額の罰金が科されるため、非常に厳しいものとなっています。
過去10年間で起きた農作業死亡事故の原因を見てみますと、50%が移動中の機械に関係しています(※1)。これにはトラクターの転倒、ひかれなどが含まれており、日本における事故原因割合と同じ傾向がみられます。2024年に発生した死亡事故については、トラクターの横転事故やひかれが報告されています。オランダ国土の大部分は日本と異なり平地となっています。それにもかかわらずトラクターの横転事故が発生しており、ここからもトラクターは横転しやすい車両だということが分かるのではないでしょうか。
オランダでは2020年からトラクター乗車中(公道走行する時、また転落・転倒の危険がある作業をする時)のシートベルトの着用がオランダにおける労働安全衛生法で義務化されており、重大な事故抑止の1つの要因となっていると考えられます。
日本においても令和9年1月1日からシートベルトの着用が義務化され、違反の場合は点数1点が付されることになっています。シートベルトの重要性については本コラムでも以前ご紹介しました。シートベルトはあなたの命を確実に守ります。シートベルト着用を習慣づけていただければ幸いです。
https://www.stigas.nl/nieuws/tien-dodelijke-ongevallen-de-agrarische-en-groene-sector-2023/
https://www.stigas.nl/nieuws/vier-dodelijke-ongevallen-de-agrarische-en-groene-sector-2024/
https://opendata.cbs.nl/statline/#/CBS/nl/dataset/85272NED/table?ts=1758681351317