生物系特定産業技術研究支援センター

(24024) 中小規模園芸ハウスを対象とした複合エコ環境制御技術の確立

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成24~26年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
高知大学、高知県農業技術センター、神奈川県農業技術センター、昭和鉄工株式会社、昭和産業株式会社、農研機構 近畿中国四国農業研究センター
作成者 高知大学 宮内 樹代史

1 研究の背景

近年の原油高に伴う燃料費や生産資材費の高騰により、中小規模施設園芸農家の経営は逼迫しており、コスト削減や生産性向上の対策が求められている。

2 研究の概要

収益性向上、環境負荷低減を目指し、太陽熱を活用したハウス暖冷房システム、局所加温システム利用技術、半閉鎖環境下での炭酸ガス施用技術を組み合せた"複合エコ環境制御技術"の構築について検討した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 自然冷媒ヒートポンプ給湯機と蓄熱槽を組み合わせた冷暖房装置、局所加温システムを開発し、エネルギーコストの30~60%の削減を可能にした。
  • 創出した半閉鎖環境において、積極的炭酸ガス施用による高温性作物 (ピーマン) の15~30%の増収効果を明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 炭酸ガス施用と新たな温度管理を組み合わせた促成ピーマン増収技術

促成ピーマン栽培で日中の炭酸ガス (400~500ppm) 株元局所施用とオランダを参考した新しい温度管理を組み合わせることで30%程度の増収効果が得られる。

5 公表した主な特許・品種・論文

特開2016-140327 作物の栽培装置 神奈川県 (深山 陽子、逸見 繁樹、藤代 岳雄)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 平成26~30年度のピーマン農家での炭酸ガス実用化試験8事例では、平均21% の増収効果が実証された。
  • 高知県における炭酸ガス発生装置の導入面積は380ha (平成30年2月調べ)、主要7品目 (ナス、ピーマン、シシトウ、キョウリ、ミョウガ、ニラ、トマト) で約50%拡大、販売額は研究開始前の平成23年と比べて平成30年には約16億円増加した。

(2) 実用化の達成要因

  • 県立農業担い手育成センター (新設) に実証担当職員を配置し、開発技術を実証・公開した。
  • 「環境制御技術の普及」を県の重要課題に位置づけ、予算 (実証事業・補助事業) と人 (環境制御普及推進担当職員の新設) の集中により施策として推進した。

(3) 今後の開発・普及目標

AI や IoT技術 を用いて誰もが今以上に安定して収量を得ることのできる技術 (IoP(Internet of Plants)技術) の開発と普及 (目標普及面積52ha)。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

地域で稼ぎ、暮らせる農業の実現により、若者の定着、関連機器産業の増加、雇用の創出などが期待できる。さらに国民への国産野菜の安定供給が維持できる。

(24024) 中小規模園芸ハウスを対象とした複合エコ環境制御技術の確立