生物系特定産業技術研究支援センター
(25057C) 脂肪酸製剤を用いた油脂の低カロリー化による高付加価値食品の製造
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成25年~27年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
龍谷大学農学部、江崎グリコ株式会社 |
作成者 | 江崎グリコ株式会社 釜阪 寛 |
1 研究の背景
国民の健康維持に向けて、高い嗜好性を有した低カロリーの食品開発が求められている。健康に資する高付加価値を達成するために、これまでに油脂の代替えとして脂肪酸を添加することによって低カロリー化された食品の嗜好性の低下を抑制できることを明らかにしてきた。また、酸化安定性や分散性に優れた脂肪酸製剤を開発することに成功した。本課題では、この技術をさらに多様な食品に応用し、農林水産研究の重点目標の一つである新需要創出の観点から、多くの食品への高付加価値賦与を目的とした。
2 研究の概要
- 脂肪酸添加低カロリー食品の実用化・産業化のプロセスで、いくつかの脂肪酸製剤が開発され、多様な食品への付加価値の賦与が可能になった。
- 添加に関する食品と脂肪酸のマッチングなどの技術が蓄積された。
3 研究期間中の主要な成果
- 複数の脂肪酸5種類を混合してアイスクリームの嗜好性増強に特化した脂肪酸製剤を開発した。油脂感が高まり風味のバランスが向上した。低カロリーアイスクリームへの応用可能性を検討し、「カロリーコントロールアイス(モナカアイス)」に採用された。
- 品質保証の観点から微量の脂肪酸添加による嗜好性増強の機構を解析し、嗅覚が関与していることを動物実験で実証した。
- マウスの嗅細胞微絨毛にCD36が発現していることを発見した。超微量脂肪酸の受容に関与している可能性を示唆した。
4 研究終了後の新たな研究成果
特になし
5 公表した主な特許・品種・論文
- Sakamoto et al., The opioid system majorly contributes to preference for fat emulsions but not sucrose solutions in mice. Biosci. Biotech. Biochem. 79, 658-63 (2014).
- Lee et al., Expression of CD36 by olfactory receptor cells and its abundance on the epitheliac surface in mice. Plos One 10, e0133412 (2015).
- Sakamoto et al., Mechanisms involved in guiding the preference for fat emulsion differ depending on the concentration. J.Nutr.Sci.Vitaminol. 61, 247-254 (2015).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
開発した脂肪酸製剤を、平成27年度には、同社のカロリーコントロールアイス(80キロカロリー)シリーズ全品に導入した。当時開発した脂肪酸製剤に変更を加え、現在も一部の商品で活用している(使用商品や生産量、販売数等は社外秘事項のため非開示)。
(2) 実用化の達成要因
大学で研究されたシーズを消費者ニーズにマッチングさせ、受容性の高い商品開発に活かしたこと。
(3) 今後の開発・普及目標
脂肪酸製剤の新たな商品への利用展開
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
高嗜好・低カロリー食品の継続的な上市によって、他社からも類似製品が登場するなど、新たなカテゴリーの定着が期待される。また、糖尿病でカロリー制限を受けておられる方に対して、アイスクリームが摂取できる機会を増やすことにより、食生活を中心としたQOL向上が期待される。