生物系特定産業技術研究支援センター
(27034C)麹製造適性に基づく酒造好適米の新たな選抜技術の確立と品種育成
事業名 | イノベーション創出強化研究推進事業(開発研究ステージ) |
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実施期間 | 平成27年~令和元年(5年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
長野県農業試験場、長野県工業技術総合センター、信州大学工学部 |
作成者 | 長野県農業試験場 細井淳 |
1 研究の背景
地酒ブームを背景に新たな酒米品種育成の取り組みが盛んである。これまで醸造適性に直結した育種素材の評価手法は未確立だったため、効率的に酒米の育種を進めることが難しかった。
2 研究の概要
醸造適性に直結する指標として"麹(こうじ)"の成分に注目した。この分析手法を確立し、酒米育種に役立つマニュアルを刊行した。また、この技術を適用し、優れた新品種及び新系統を作出した。
3 研究期間中の主要な成果
- 栽培適性と醸造適性に優れる中山間地域向け酒米新品種「山恵錦(さんけいにしき)」を育成し、長野県内に普及させた。標高700mを越える冷涼地では「山田錦」と同等の極良質な生産物が得られた。
- 全国の研究機関で活用できる「麹製造適性に基づく酒米の特性評価マニュアル」を刊行した。
- 試験醸造により「山恵錦」の醸造の特徴を把握し、蔵元への技術指導を行った。その結果、蔵元が醸造した清酒は、国内外の日本酒コンテストにおいて最高位(グランプリ、金賞)を受賞した。
4 研究終了後の新たな研究成果
最新農業技術・品種2021 「麹製造適性に基づく酒米の特性評価マニュアル」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/new_tech_cultivar/2021/2021seika-02.html
5 公表した主な特許・品種・論文
- 品種登録第27896号水稲品種「山恵錦」登録(令和2年3月30日) (出願者名:長野県)
- 細井淳他.高標高地域で生産された「山恵錦」の玄米品質,加工適性,麹製造適性.北陸作物学会報55,4-6(2020).
- 水野正浩他.酒造好適米「山恵錦」の澱粉及び胚乳蛋白質の特性.応用糖質科学11(4), 188-194(2021).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 山恵錦の品種登録を行い、この原材料を利用した清酒が商品化された(令和3年現在、約40社)。また、全国新酒鑑評会やインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)において、金賞やグランプリを受賞した。
- 酒造適性に優れる育種素材の選抜に活用できるテキストとして「麹製造適性に基づく酒米の特性評価マニュアル」を刊行した。全国に所在する農業関係試験研究機関に配布した。
(2) 実用化の達成要因
参画機関が少なくコンパクトなコンソーシアムを形成したことで小回りの利く体制だった。また、長野県酒米研究会(県内蔵元中心の勉強会組織)と研究計画段階から連携し、新品種に対するニーズの把握、新品種育成までの進捗管理、商品化までの情報共有を十分行いスムースに研究成果を活かすことができた。
(3) 今後の開発・普及目標
- 「山恵錦」の栽培マニュアル策定と普及に基づき、中山間地域における酒米生産の良質安定化を図る。
- 育種マニュアルを適用した新たな酒米系統の作出と品種化を目指す。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- 育成された酒米品種の普及は、稲作農業法人の収益増大や蔵元の経営安定化に貢献している。また育種マニュアルの積極的な利活用は、優れた育種素材作出の効率向上や低コスト化に寄与する。
- 農商工連携の取り組みにより独自性のある国産生産物のブランド化が図られ、国内における地酒消費の再興や在留外国人らによるインバウンド型消費拡大へ繋がり、地方観光産業の活性化へと結びつく。