生物系特定産業技術研究支援センター
(29019C)国産冷凍サバを高付加価値化するコールドチェーンの実用化技術の開発
事業名 | イノベーション創出強化研究推進事業(開発研究ステージ) |
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実施期間 | 平成29年~令和元年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
東京海洋大学、日本大学、宮崎大学、海洋水産システム協会、石巻市産業部水産課、盛信冷凍庫株式会社、北部太平洋まき網漁業協同組合連合会、 石巻魚市場株式会社、有限会社ミツワ製氷冷蔵、石巻市水産加工業協同組合、水産物・水産加工品輸出拡大協議会、国産水産物流通促進センター、宮城県水産技術総合センター |
作成者 | 東京海洋大学岡﨑恵美子、中澤奈穂*、海洋水産システム協会岡野利之*現水産大学校 |
1 研究の背景
サバは、まき網船で漁獲後、魚艙内や流通過程での冷却時に鮮度低下しやすく、冷凍サバの品質にばらつきが生じやすい。国産冷凍サバの高品質化と商品価値向上は、関連産業にとって喫緊の課題である。
2 研究の概要
まき網で漁獲したサバの冷却技術を確立するために、氷スラリーを中心とした冷媒によるサバの冷却特性解明および冷却処理技術の開発、冷凍流通条件の検討、鮮度測定システムの開発などを行った。
3 研究期間中の主要な成果
- 漁獲現場から加工工場までの温度履歴とサバ肉の冷却特性の調査から、サバの冷却条件を最適化し、鮮度保持期間を現状の1.5倍以上に延長する冷却条件(-1~+2℃、最長3日間)を見出した。
- 冷凍サバの品質を1年以上維持するための冷凍貯蔵温度(-30℃)を明らかにした。また、高鮮度状態のサバ肉であれば、-20℃でも1年間以上品質を維持できることを明らかにした。
- 得られた知見を「国産冷凍サバを高付加価値化するための実用化マニュアル」としてとりまとめた。
4 研究終了後の新たな研究成果
各共同研究機関において、関連の研究を継続して行っている。事業において作成したマニュアルは全国の関係機関に配布し、普及活動を行った。(http://www.ichiba-qc.jp/pdf/7-0-4.pdf )
5 公表した主な特許・品種・論文
- 前川龍之介他.氷スラリーを用いた水産物の冷却,解凍における熱伝達率の測定.日本冷凍空調学会論文集36(2), 211-221(2019).
- Tanaka R., et al. Effects of initial freshness level, frozen storage temperature, and storage period on lipid deterioration and K-value in meat blocks from chub mackerel Scomber japonicus. J. Aquat. Food Prod. Technol. 31 (1), 47-59 (2022).
- Rahman M. M., et al. Expeditious prediction of post-mortem changes in frozen fish meat using threedimensional fluorescence fingerprints. BBB 83(5), 901-913(2019).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- サバの冷却条件に関する知見は冷海水攪拌システム搭載の改革型運搬船の設計に反映され、建造された。本船で漁獲されたサバは科学的データに基づいた情報開示が評価され、市場でのサバの価格は他船に比べて高い価格が得られている。
- 冷凍サバの製造条件をマニュアル化し、漁船、市場、加工、流通関係者で共有した。
(2) 実用化の達成要因
研究内容は業界のニーズに基づくものであり、研究開始時から関係者からの非常に高い関心を得ていた。
研究者サイドと業界サイドとの良好な関係を築けたことが達成要因であったと考えている。
(3) 今後の開発・普及目標
全国の関係機関への技術普及ならびに国内の他地域および海外輸出品への技術展開を行う。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
国産冷凍サバの魚価向上、関連産業の経営安定化、国内外での競争力強化に貢献する。
貴重なサバ資源を適正かつ最大限に活用しながら、高品質な国産サバを安定的に供給する。