生物系特定産業技術研究支援センター

農業水利施設ストックマネジメントの高度化に関する技術開発

事業名 「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(知の集積と活用の場による研究開発モデル事業)
実施期間 平成28年~31年(4年間)
研究グループ
(研究終了当時)
国際航業株式会社、農研機構農村工学研究部門、応用技術株式会社、株式会社水域ネットワーク、富士フイルム株式会社
作成者 国際航業株式会社 西岡陽一

1 研究の背景

農業水利施設等では、老朽化した構造物の増加が今後見込まれるため、構造物の点検・調査から老朽度の診断・評価、維持管理・更新計画に至るストックマネジメントの効率化・高度化が求められている。

2 研究の概要

従来の人力による構造物の目視点検等に代わって、UAV(ドローン)による空中写真撮影と撮影画像の解析をベースとする、ストックマネジメント全体の効率化のための技術開発を行った。

3 研究期間中の主要な成果

  • UAV(ドローン)・AI等の先端技術を取り入れ、水利施設の遠隔三次元計測により沈下やひび割れなどの外的変状を抽出・計測し、老朽化の健全度評価を診断する技術体系を構築した。
  • 3次元データを活用した変状の自動抽出から点検台帳までの一貫したサービスをクラウドシステムとして構築したことにより、従来作業に比較して約2割程度の点検コスト削減効果を実現した。

4 研究終了後の新たな研究成果

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特開2020-086471 天端面段差抽出システム、及び天端面段差抽出方法(出願人:国際航業株式会社)
  • 金子俊幸他(2019)、海岸保全施設の維持管理へのUAV計測の適用性について、水産工学、Vol.56 No.2、121-131
  • 金子俊幸他(2021)、農業水利施設の遠隔操作による施設維持管理の高度化、JATAFFジャーナル、Vol.9 No.3、 23-30
    【令和2年度民間部門農林水産研究開発功績者/公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞受賞】

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

「UAV計測点検手法の手引き(案)-海岸保全施設及び農業水利施設-:令和3年3月」の作成と公表
農業用ダム、頭首工、用排水機場、開水路等の農業水利施設及び海岸保全施設の合計16箇所を対象に行った老朽化判断の実証試験をケーススタディとして整理し、現場技術者が具体的かつ効率的に施設の点検が行えるよう取りまとめた。

(2) 実用化の達成要因

関連する技術蓄積に長けた総合コンサルタント社を代表とし、専門的企業、行政への技術支援を担う研究機関による研究体制を組んだことにより、設定した明確な目標を達成するとともに多くの現地実証を行えた。

(3) 今後の開発・普及目標

研究では、維持管理分野でのデジタル技術活用が目標であったが、今後は、取得した3Dデータが調査・設計・施工の分野においても利活用できるように取り組み研究を進める。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

早期に社会実装を進め、ビジネスモデルとして確立することにより、農業分野からの研究が社会全般に波及するケースとなることが期待される。