生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2011年度 継続審査結果

果実の成熟及び離層形成を司る転写制御機構の解明

研究代表者氏名及び所属

伊藤 康博((独)農研機構 食品総合研究所)

継続審査結果概要

本研究は、トマト等果実の成熟過程の人為的なコントロールや生理的な落果の防止法開発による安定的な高品質果実生産のため、トマトを中心とする果実の発育における、成熟及び果梗部の離層形成の制御機構解明を目標としている。本研究の成果は、果実の成熟を開始する転写因子RIN と転写因子TDR4、SIMBP7との直接の結合や、離層形成を制御する、新規の転写因子MCと既知の転写因子JOINTLESSとの複合体形成、離層形成の遺伝子レベルにおける植物普遍的なメカニズムに繋がる成果等、成熟制御や離層形成の根幹に関わるものであり、研究の新規性、独創性、科学的価値は本研究分野における世界トップレベルに匹敵すると判断でき、当初目標を上回る成果を達成していると評価できる。また、RIN/(TDR4及びSIMBP7)やMC/JOINTLESSは各々成熟生理、離層形成の中心的な制御因子であり、かつ、多くの品質等に関わる下流遺伝子を直接制御していることから、産業的な貢献に近い基礎的な成果である。今後、広くこの研究成果が利用されるよう、トマトをモデルとした成果が果実類に一般化できることまで示すことが必要である。

継続研究においては、これまでの研究成果や独創的な実験系を活用することで、TDR4及びSIMBP7による成熟調節機構の詳細な解明や、MCを中心とする離層形成制御メカニズムの植物普遍性を明確にする着実な計画が提示されており、継続期間中に果実類に一般化できる成熟過程の全体像に迫る成果が得られるであろう。これらの成果は、今後、トマトを始めとする多様な果実類の生産現場における画期的な高品質安定生産技術の開発につながる基盤的知財となることが期待できる。

研究の継続に当たっては、成熟調節や離層形成機構等の基本的な生理現象解明に基づき、果皮色や食味等の果実品質の向上や栽培管理の効率化等、将来の産業活性化につながる基礎研究の飛躍的な発展を目標として明確に設定することが必要である。これまでの三年間の成果と今後二年間の目標との違いが判るように工夫し、確実に成果が上がる研究課題に集中的に取り組んで頂きたい。