生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 継続審査結果

腸管免疫を制御する分子としての食餌性脂質ヒエラルキーの解明

研究代表者氏名及び所属

國澤 純(東京大学医科学研究所)

継続審査結果概要

食物の主な代謝、吸収の場である消化管は、免疫疾患との関連も含め免疫制御を担う中核として機能している。本課題は、食餌性の脂質が腸管免疫系にどのような影響を与えるかを分子レベルで明らかにすることを目的としている。

腸管での免疫グロブリンA(以下、IgA)抗体の産生とアレルギー抑制を指標としてモデル動物であるマウスを用い評価した。その結果、腸管でのIgA抗体の産生を高めつつ、アレルギー反応を抑制できる食用油の組成と形状を見出した。パーム油に多く含まれるパルミチン酸によるIgA増強メカニズムおよび亜麻仁油に多く含まれるαリノレン酸のアレルギー抑制メカニズムをそれぞれ明らかにした。このαリノレン酸について、粘膜組織に存在するエイコサペンタエン酸(EPA)を介して産生された脂肪酸が腸管アレルギー応答を抑制できることを示した。

これまでの3年間、当初の研究計画を上回って進捗しており、優れた成果が得られてきている。研究を継続することにより、成果の精緻化と水平展開、そして産業化に向けた更なる発展が大いに期待できるものであることから、継続すべき研究提案と判断する。既往の食品科学としての脂肪酸並びに抗炎症に関する科学的知見を考慮し、食品開発のシーズに繋がる基礎的知見を集積する観点から研究課題に取り組んでほしい。延長計画は、すべての研究項目においてマウスを用いて実験を行う提案である。生物種差に関する問題を早期に確認する為にも、メカニズム解明の重要なポイントでは、必ずヒト由来の細胞(もしくはヒト組織)を用いてin vitroで評価する系を加えて効果を検討することを継続にあたっての必須要件としたい。