生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

人工乳の母乳化に寄与する新規ミルクオリゴ糖の生産技術の開発

研究代表者氏名及び所属

北岡 本光((独)農研機構 食品総合研究所)

研究参画機関

(独)農研機構 食品総合研究所
森永乳業株式会社
日本水産株式会社

総合評価結果

当初目標を達成

評価結果概要

 本研究は、母乳に含まれるミルクオリゴ糖中のビフィズス菌増殖因子であるラクト-N-ビオースI(LNB)を人工乳に使用するために、ビフィズス菌由来の4種の非組換え酵素を用いて、安全・安心なLNB製造法を開発するとともに、LNBの新規な機能性の探索を目的に実施された。

独創的な発想をベースに、新しい事業創出に向けた努力がなされた。当初目標の物質生産に至るまでには、確立すべき課題や安全性試験、動物・人での有用性試験などが山積しているが、遺伝子組換え微生物を利用しない酵素リアクターによる大規模パイロットスケールでのLNB製造までこぎつけたことは評価できる。LNB生産に関する酵素について、ハイスループット測定系の構築、400株のビフィズス菌から酵素活性の高い菌株の効率的な選抜、UV照射による酵素活性の高い変異株の創出などで成果を出している。また、LNBの菌叢改善以外の生理機能の探索も行い新機能を見出している。一方、4種の酵素反応の進行中に酢酸の生成が課題となり、反応液のpHを制御しても解決困難で、微生物そのものを固定化したり、抽出した酵素のみを固定化カラムに固定しても回避できず、固定化ビフィズス菌リアクターの作製には到達できなかった。しかしながら、最重要な酵素のガラクト-N-ビオースホスホリラーゼの耐熱性を高めることで、次のステップに向かう目処をつけた。学術・知財関連では原著論文9件、特許出願5件(内予定2件)は評価に値し、この分野の研究に十分貢献した。 

以上のように、俯瞰して、計画どおりには進行しなかったが、着実な研究成果の集積は果たせたものと評価できる。ただし、新たな事業の創出には、新規な糖質として厳密な安全性確認に加えて生産効率を上げてコストダウンすること及びコストに見合う調製粉乳に求められる新規な機能を発見することが不可欠である。