生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2013年度 終了時評価結果

食品の安全性に関する簡易リスク判定技術の開発

研究代表者氏名及び所属

和賀 巌 (NECソフト株式会社VALWAYテクノロジーセンター)

総合評価結果

  当初計画どおり推進

評価結果概要

 本研究は、食品分析と全く無縁であった企業が、まだ国際的にも研究グループが少ないアプタマーに着目し、これを用いて新規食品分析法を開発しようという意欲的なプロジェクトである。また、本研究は、アプタマーを用いて食品中の病原体や残留農薬を検出する簡易検出技術の開発をめざし、コンピュータ技術を駆使したアプタマーの設計、アプタマー取得のためのSELEX(Systematic Evolution of Ligands EXponential enrichment)法の改良と多様なアプタマーの取得、センサアプタマーとDNAzyme コンジュゲートによる簡易検出などを特徴とする。
 これらの目標に積極的に取り組んだ結果、食中毒菌2種類、動物成長促進薬2種類、GMOタンパク質、インフルエンザウイルスに対するアプタマーを取得した。また、バイオセンサの開発に関し、N-メチルメソポルフィリン−GカルテットDNA(メラミンバイオセンサ)や蛍光偏光法(リステリア菌バイオセンサ、GMOタンパクバイオセンサ)を利用し、その実現可能性を示した。これらの成果を進展させ、完成度の高い技術の創成が期待される。さらに、アプタマー取得法の見直しにより、開発にかかる時間は短縮されており、今後の研究の加速と他分野への波及が期待できる。本研究はソフトウェア技術を活用したバイオセンサ開発として独創性の高い取り組みであり、研究の効率化の観点から価値が高い。
 このように、本研究で目標の大部分は達成されたが、簡易検出のための基幹アイデアであったDNAzyme と標的分子結合アプタマーの連結と、その連結体に対して標的分子が結合した際の構造変化に起因するDNAzyme 活性の変化の観察に基づく標的分子の検出、特に印刷式検出システムについては際立った進展が見られず、成果の今後の実用化展開において、十分検討し直す必要があるといえる。
 本研究はテクノロジーを指向した研究であるが、社会的要請に対応する形で新たな検査対象の追加、現行の標準検査法との比較を行なうなど実用化を視野に入れた研究開発が随所にみられ、バランスの良くとれた研究と評価できる。さらに非天然型塩基の利用、次世代シーケンサーやセルソータ利用の試みなど、研究の進展に伴う発想の進化やそれに対する企業の協力がみられ、対象の拡張や実用化に向けた取り組みを行うことで、今後さらなる発展が期待できると考える。