生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2013年度 中間評価結果

コメ産業の国際化を狙った新規ハイブリッドライス育種基盤の開発

研究代表者氏名及び所属

鳥山 欽哉(東北大学大学院農学研究科)

評価結果概要

ハイブリッドライスの作出には、細胞質雄性不稔(CMS)の利用が不可欠であるが、育種上利用されているのは、海南島野生稲由来のWA-CMSとインド型品種Chinsurah Boro II由来のBT-CMSの2種類にすぎず、これらを侵す病害レース等の出現リスクを回避するため、新たなCMSの開発が求められている。本研究は、上記とは異なる、野生イネOryza rufipogonに由来する3種類(CW、RT98、RT102)のCMSの原因遺伝子と稔性回復遺伝子の同定、CMS発現機構と稔性回復機構の解明、これら研究成果に基づく、新たなCMS系統とそれらの稔性回復系統の開発を目指している。

研究は順調に進捗し、3種類のCMSのうちの2種類の原因遺伝子がミトコンドリアゲノムに存在する新規遺伝子であることを明らかにし、また、残る1種(CW)の原因遺伝子の有力候補を見いだした。一方、WA-CMSについては、CMSの発現解明の基礎となる知見を得るとともに、稔性回復遺伝子の本体を同定し、それが染色体の特定領域にクラスターを形成していることを示した。これらの成果は、日本独自のハイブリッドライスの育種素材の開発の基盤となるものであり、「コメ産業の国際化を狙った新規ハイブリッドライス育種基盤の開発」に資するものとして、将来の日本の農業に寄与する可能性が大きい。以上の通り、本研究は順調に進捗し、中間評価時までの目標は達成され、一部は予想を上回る成果を得たと高く評価する。今後は、当初の計画に沿って研究を進めるとともに、外国との競争が激しい分野であることから、早期の特許出願および論文発表に努めることを期待する。