生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

畑作の省力化に資する生分解性マルチフィルム分解酵素の製造技術と利用技術の高度化

年度2019ステージ応用研究分野農業 (生産資材)適応地域全国

キーワード農業用生分解性マルチフィルム、生分解性プラスチック分解酵素、担子菌酵母、エステラーゼ

課題番号 25017AB
研究グループ 農研機構 (農業環境変動研究センター, 高度解析センター畜産研究部門, 生物機能利用研究部門), 産業技術総合研究所 (機能化学研究部門, 生物プロセス研究部門), 株式会社 ユニック
研究総括者 農研機構 農業環境変動研究センター 北本 宏子
研究タイプ 産学機関結集型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 畑作の省力化に資する生分解性マルチフィルム分解酵素の製造技術と利用技術の高度化 (PDF:545.6 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

生分解性農業用マルチ (生プラマルチ) は、使用後に畑土にすき込めば分解するため回収する必要が無い省力化資材である。しかし、生プラマルチの分解速度は栽培環境で異なり不安定である。そこで、生プラマルチを使用後、すき込む前に生プラマルチを酵素処理で急速に分解する技術の開発を目的とした。酵素による生プラマルチ分解のメカニズムの解明、酵素を大量に分泌する「セルフクローニング株」の作出、酵素を処理した生プラマルチの土壌中での分解速度や土壌微生物への影響を明らかにすることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 生プラマルチを速やかに分解する酵素は、生分解性プラスチックのポリマー鎖をランダムに切断し、分子量を急速に低下させることを明らかにした。
  • イネ由来の担子菌酵母である生プラ分解酵素生産菌を改変し、自身の遺伝子だけを用いて、分解酵素を大量 (2 g/L) に分泌する、セルフクローニング候補株を作出した。
  • 酵素を処理した生プラマルチは、未処理マルチに比べて土の中で早く分解した。PCR-DGGEによる解析で、酵素処理マルチ埋設後に土壌微生物相の変化と回復が早いことが示唆された。

公表した主な特許・論文

  • 特許第6338183号 特許名 生分解性プラスチックを効率良く分解する方法 (出願人:農研機構)
  • 特許第6413117号 高効率な異種タンパク質の製造方法 (出願人 : 農研機構・産総研)
  • Sato et al., Degradation profiles of biodegradable plastic films by biodegradable plastic-degrading enzymes from the yeast Pseudozyma antarctica and the fungus Paraphoma sp. B47-9. Polymer Degradation and Stability 141, 26-32 (2017)

3 今後の展開方向

  • 圃場に展張した生プラマルチに対する生プラ分解酵素の処理によるマルチ分解促進効果を実証する。
  • 生プラ分解酵素生産菌の酵素生産能力をさらに高め、酵素処理コストを低減させる。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、市販生プラマルチの劣化に必要な酵素の処理方法や適切な処理量を示す。
  • 5年後 (2023年度) は、生プラマルチと分解酵素を組み合わせた野菜栽培の農家実証試験を可能にする予定。
  • 最終的には、使っている間は壊れず不要になった生プラマルチを酵素処理によって速やかに分解させる野菜栽培法の普及を図る。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 生プラマルチと分解酵素を組み合わせた野菜生産によってマルチの剥ぎ取りなしに機械による収穫作業が可能になり、後片付けも楽になる。空いた時間で経営規模拡大や収穫物の加工など儲かる農業に貢献できる。
  • 生プラマルチを使えば産業廃棄物は発生せずプラスチックゴミ削減に貢献できる。
  • 将来は、生プラ製のポットやネット等の農業資材やワンウエイ食器、袋等にも適用し、その場で酵素を使って分解しプラスチックゴミ量の削減に貢献できる。

畑作の省力化に資する生分解性マルチフィルム分解酵素の製造技術と利用技術の高度化

問い合わせ先 : 農研機構 農業環境変動研究センター 北本 宏子 TEL 029-838-8355