年度2019ステージ開発研究分野農業 (病害虫)適応地域全国
キーワード施設イチゴ・ピーマン、アブラムシ類、天敵利用、アブラバチ類、バンカー法
課題番号 | 25042BC |
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研究グループ | 農研機構 中央農業研究センター, 栃木県農業試験場, 宮城県農業・園芸総合研究所, 福岡県農林業総合試験場, 大分県農林水産研究指導センター, 株式会社アグリ総研 |
研究総括者 | 農研機構 中央農業研究センター 長坂 幸吉 |
研究タイプ | 現場ニーズ対応型 Aタイプ |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 次世代型バンカー資材キットによるアブラムシ類基盤的防除技術の実証・普及 (PDF:555.3 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
施設園芸の重要害虫であるアブラムシ類に対する安定的な天敵利用技術として、生産者が簡単に実施でき、多様なアブラムシ類を防除するための資材キットを開発し、製品化することを目的とする。無害の餌昆虫を用いて天敵を維持し、害虫を待ち伏せするバンカー法 (天敵銀行) について、簡便に実施できるバンカー型製剤、多様なアブラムシに対応するための混合マミー製剤を中心とした次世代型バンカー資材キットを実用化し、施設イチゴの主要産地での実証試験を経て、マニュアルを作成することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
- 2種アブラバチを混合したマミー製剤 (天敵の蛹)、およびオオムギ上に天敵マミーと餌アブラムシを定着させたバンカー型製剤について施設野菜類のアブラムシ類での農薬登録を可能とする試験事例を取得した。
- 混合マミー製剤、代替餌付きバンカー植物、バンカー型製剤、簡易給水装置から構成される次世代型バンカー資材キットの商業的規模での大量生産方法および輸送方法を確立した。
- 施設イチゴ、施設ピーマンでの現地試験により、次世代型バンカー資材キットを組み込んだIPMを実証した。
- 次世代型バンカー資材キット使用マニュアルの他、北関東大産地向け土耕栽培イチゴ、東北震災復興産地向け高設栽培イチゴ、温暖地輸出産地向けイチゴ、夏秋ピーマン向けのマニュアルを作成した。
公表した主な特許・品種・論文
- 特開 2016-146792 バンカー型生物農薬の製造方法 (出願人:株式会社アグリ総研、特許第6392137号、取得2018年8月31日)
- Mitsunaga, T. et al. Differences in the reproductive durations of Myzus persicae (Hemiptera: Aphididae) parasitized by three aphidiid species Appl. Entomol. Zool. 51, 297-304 (2016).
- 長坂幸吉他.ナケルクロアブラバチとコレマンアブラバチの併用による2種アブラムシに対する防除効果.関東東山病害虫研報 63, 81-86 (2016)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
- 次世代型バンカー資材キットのうち、混合マミー製剤、バンカー型製剤については、農薬登録が必要であるため、平成31年度中に申請を行う。農薬登録完了後、作成したマニュアルを用いて普及開始。
- 農薬登録の必要ない代替餌付きバンカー植物と簡易給水装置は平成31年中に販売開始予定。すでに農薬登録のあるマミー製剤 (単剤)と組み合わせた簡便なバンカー法により現地への普及の下地を作る。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2020年度) は、混合マミー製剤の農薬登録完了後に、これを用いたバンカー法を15haに普及。
- 5年後 (2023年度) は、バンカー型製剤の農薬登録完了後に、次世代型バンカー法を60haに普及。
- 最終的には、イチゴなどの各種施設園芸におけるアブラムシ類の基盤的防除技術として600haに普及。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- 本研究で検討したイチゴ等で10%の普及率とした場合、アブラムシ類による被害を防止できる経済的効果は17.7億円である。各種施設野菜、特に大型施設での防除の省力化、薬剤抵抗性リスクの回避、輸出品目における農薬残留リスクや残留確認作業の低減などが期待される。
- 次世代型バンカー法を含む天敵利用を基幹技術としたIPMの推進が図られ、生産者には軽労化と収益の安定が、消費者・流通業者には国内野菜に対するさらなる信頼が醸成される。
問い合わせ先 : 農研機構 中央農業研究センター TEL 029-838-8939