生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

日本独自技術利用のインディカ・ジャポニカ新規ハイブリッドライス実用化研究

年度2019ステージ応用研究分野農業 (水稲)適応地域西日本,沖縄,亜熱帯

キーワードイネ、ハイブリッドライス、一代雑種品種、採種技術、超多収

課題番号 25017AB
研究グループ 東北大学大学院農学研究科・宮城教育大学教育学部, 国際農林水産業研究センター 熱帯・島嶼研究拠点
研究総括者 東北大学大学院農学研究科 鳥山 欽哉
研究タイプ 産学機関結集型 Bタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 日本独自技術利用のインディカ・ジャポニカ新規ハイブリッドライス実用化研究 (PDF:364.3 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

ハイブリッドライス (一代雑種イネ) は超多収であるが、主要なエリートインディカ品種のほとんどは稔性回復遺伝子をもつため雌親に利用できず、F1採種は特殊な交雑組み合わせに限定されていた。本研究では、エリートインディカ品種を雌親としジャポニカ品種を花粉親とする新規ハイブリットライス作出技術を確立することを目的とした。その目的のために、東北大学が独自に開発した中国野生稲型細胞質雄性不稔性 (CW型CMS) と稔性回復遺伝子 (Rf17) を利用して達成することを目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 従来の技術では作出不能であったエリートインディカ品種 (IR 24, IR 64, Pusa Basmatiなど8品種) についての細胞質雄性不稔 (CMS) 系統と稔性回復系統をセットで作出することに成功した。
  • 作出した細胞質雄性不稔系統と稔性回復系統が、亜熱帯地域でも安定した形質を示すことを実証し、世界中で利用できることを示した。
  • エリートインディカ品種 IR 24 CMS系統とジャポニカ品種台中65号の稔性回復系統のF1採種を実証し、インディカ・ジャポニカ新規ハイブリッドライスの作出技術を確立した。
  • 独自に開発したCW型CMSと稔性回復遺伝子 (Rf17) を利用するハイブリッドライス育種システムは、ほとんど全ての品種に適用可能であるなど、利用価値が高いことを実証した。

公表した主な特許・論文

  • Toriyama, K. et al. Development of cytoplasmic male sterile IR24 and IR64 using CW-CMS/Rf17 system. Rice 9: 22 (2016)

3 今後の展開方向

  • インディカ/ジャポニカ雑種不稔緩和遺伝子を導入するとともに、組合せ能力の高い親系統の育種を行う。
  • 採種効率に係る形質(柱頭露出率の向上、出穂期の同調など)について改良を加え、採種適地を選定することで、さらに低コスト高効率なF1採種技術を開発する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、上記 I と II を改良した親系統の育種を行う予定。
  • 5年後 (2025年度) を目処にインディカ・ジャポニカ新規ハイブリッドライスを育種し、品種登録を予定。
  • 最終的には、現在普及しているハイブリッドライス「みつひかり」の栽培面積約1,400 haと同等の普及を図る予定。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 1,400 ha 普及した場合、玄米取引で27億円、種子ビジネスとして1.2億円の経済効果が期待できる。海外展開した場合、ハイブリッドライス市場規模の20%程度の利用が期待でき、種子販売額の2%のライセンス料金を課した場合の経済効果は132億円と試算できる。
  • 超多収品種を開発し、我が国の稲作の生産性を向上できると期待される。ハイブリッド品種はコピー製品を作ることができないので、我が国の権利を保護しながら、国内種苗産業の国際競争力を強化できる。休耕田を有効利用して採種ビジネスを展開すれば、地域振興・地方再生にも貢献できる。

日本独自技術利用のインディカ・ジャポニカ新規ハイブリッドライス実用化研究

問い合わせ先 : 東北大学大学院農学研究科 鳥山 TEL 022-757-4231