生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

地域資源を活かし、気候変動に対応したブドウ新品種の早期育成と気候変動影響評価

年度2019ステージ開発研究分野農業 (果樹)適応地域全国

キーワードブドウ、品種育成、気候温暖化、適地マップ、栽培手引き

課題番号 26087C
研究グループ (国研) 農研機構 果樹茶業研究部門, 山梨県果樹試験場, 福岡県農林業総合試験場, 岩手県農業研究センター, 石川県農林総合研究センター農業試験場砂丘地農業研究センター, 愛媛県農林水産研究所果樹研究センター, 鹿児島県農業開発総合センター
研究総括者 (国研) 農研機構 果樹茶業研究部門 佐藤 明彦
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 地域資源を活かし、気候変動に対応したブドウ新品種の早期育成と気候変動影響評価 (532.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

地球温暖化による気候変動により、ブドウでは着色不良、病害の多発、果実品質の低下、収穫時期の変動などが深刻な問題となっている。このような気候変動のなかでも安定生産でき、なおかつ実需者および消費者ニーズに合致した新品種の開発を目的とする。 このため、台風による豪雨を回避できる早生の白ワイン用醸造ブドウ品種および優れた赤ワイン用醸造ブドウ系統の開発、高温下でも着色良好な施設用生食ブドウ品種および皮ごと食べられる施設用生食ブドウ系統の開発を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 台風による豪雨を回避できる早生の白ワイン用ブドウ「コリーヌヴェルト」を開発し、気温上昇による適地変化を予測するとともに、円滑な普及のための栽培手引き書を作成した。
  • 着色とワイン品質に優れた赤ワイン用ブドウを4系統開発した。
  • 高温でも着色に優れた生食用施設ブドウ「涼香」を開発し、気温上昇による適地変化を予測するとともに、円滑な普及のための栽培手引き書を作成した。
  • 着色が優れ皮ごと食べられる生食用ブドウを1系統開発した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録第25694号 ブドウ品種「涼香」を品種登録 (H29年2月) (出願者名 : 福岡県)
  • 品種登録第27393号 ブドウ品種「コリーヌヴェルト」を品種登録 (H31年3月) (出願者名 : 山梨県)
  • Sugiura T. et al. Prediction of skin coloration of grape berries from air temperature The Hort. J. 87, 18-25 (2018).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 品種登録された白ワイン用醸造ブドウ「コリーヌヴェルト」および良着色生食用施設ブドウ「涼香」については、関係機関への栽培手引き書を配布することにより、地域への円滑な導入・普及を進める。
  • 新たに育成した赤ワイン用ブドウ系統および着色と皮ごと食べられる生食用ブドウ系統について、事業参画機関において特性解明をさらに進める。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、「涼香」苗木の累計販売本数15,000本を目標。
  • 5年後 (2023年度) は、「涼香」、「コリーヌヴェルト」をあわせた苗木の累計販売本数30,000本を目標。
  • 最終的には、国産醸造ブドウ、施設用ブドウともに粗生産額の30%拡大を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 「コリーヌヴェルト」の普及により原料費で11億円、「涼香」の普及により生産額で73億円、あわせて84億円の経済効果が期待できる。
  • 本研究で得られた成果により、将来予測される気候温暖化による醸造用および生食用ブドウの生産の不安定化が回避可能になるとともに、白ワイン原料の安定供給、地域のワイン産業の活性化、西南暖地を中心とした黒色ブドウの「赤熟れ」問題の解決への貢献が期待できる。

地域資源を活かし、気候変動に対応したブドウ新品種の早期育成と気候変動影響評価

問い合わせ先 : 農研機構 佐藤 明彦 TEL 0846-45-1260