生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

加工適性や病虫害抵抗性に優れる原料用・加工用カンショ品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (畑作物)適応地域九州,沖縄

キーワードサツマイモ、品種育成、でん粉、アントシアニン、加工食品

課題番号 26093C
研究グループ 農研機構 九州沖縄農業研究センター, 次世代作物開発センター, 鹿児島県農業開発総合センター, 鹿児島県大隅加工技術研究センター, 沖縄県農業研究センター, 鹿児島大学農学部
研究総括者 農研機構 九州沖縄農業研究センター 小林 晃
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 加工適性や病虫害抵抗性に優れる原料用・加工用カンショ品種の開発 (538.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

カンショでん粉の需要拡大に向け、品種「こなみずき」より多収で高品質な新品種の開発が求められている。また、地域ブランド品である紫カンショ等の加工用品種でも、品質・収量の不安定性が指摘されている。そこで、加工利用特性に優れるでん粉原料用品種や食味・加工適性や製品の外観色調が良く病虫害抵抗性に優れる加工用品種の開発を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • アントシアニン色価が極めて高い、沖縄向けの紫カンショ品種「むらさきほまれ」を育成した。
  • 低温糊化性でん粉系統の「九州188号」、「九州191号」、「九州195号」及び「九系361」、レジスタントスターチ含量が通常品種の4~5倍高い、高アミロース系統「作系54」および「作系61」を育成した。
  • 低温糊化性でん粉は同程度の低温糊化性を示しても、でん粉構造の微細な相違により、ラピッドビスコアナライザー (RVA) 粘度特性や老化性、食品利用特性が異なることを明らかにした。
  • 苗と塊根を用いたサツマイモ立枯病の室内検定法を確立した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願33005 カンショ品種「むらさきほまれ」を品種登録出願 (H30年4月) (出願者名 : 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)
  • Katayama, K. et al. New sweetpotato lines having high amylose and resistant starch contents Starch/Starke 71,1800180(1-8) (2019).
  • 小林他, 苗を用いたサツマイモ立枯病抵抗性室内検定法の改良. 育種学研究 20, 23-28 (2018).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • カンショ新品種「むらさきほまれ」は、平成31年度より沖縄県内において栽培ならびにパウダーとしての利用が始まる。
  • 育成した有望系統の評価・選抜を継続し、品種化を目指す。
  • 開発したサツマイモ立枯病室内検定法は育種選抜現場に導入する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、様々なでん粉特性を有する低温糊化性でん粉系統の食品利用特性を明らかにする。
  • 5年後 (2023年度) は、高アミロース系統の健康機能性を明らかにする。
  • 最終的には、「むらさきほまれ」の普及面積10haと、低温糊化性でん粉品種、アミロース変異品種の育成を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 「むらさきほまれ」のパウダーを利用して、色調の良い菓子などの加工品が開発されることにより、食品産業や流通業の発展、さらに、輸出促進による日本経済の強靱化への寄与が期待できる。
  • 開発した系統が品種化されることにより、グルテンフリー食品、クリーンラベルに対応した安心安全な加工食品、健康機能性食品等が開発され、国民の豊かで彩りのある健康的な食生活に貢献できる。

加工適性や病虫害抵抗性に優れる原料用・加工用カンショ品種の開発

問い合わせ先 : 農研機構 九州沖縄農業研究センター TEL 0986-24-4270