生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

気候変動に対応したテンサイの安定生産を可能にする高度病害抵抗性品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (畑作物)適応地域北海道

キーワードテンサイ、高度複合病害抵抗性品種、黒根病、褐斑病、抽苔耐性

課題番号 26094C
研究グループ 農研機構 北海道農業研究センター, 道総研北見農業試験場, 道総研中央農業試験場, 日本甜菜製糖 (株), ホクレン, 北海道糖業 (株)
研究総括者 農研機構 北海道農業研究センター 岡崎 和之
研究タイプ 育種対応型 Bタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 気候変動に対応したテンサイの安定生産を可能にする高度病害抵抗性品種の開発 (389.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

テンサイ栽培では、近年の高温・多雨の影響で、褐斑病や黒根病などの病害の多発に起因した減収が問題となっている。そこで、テンサイ生産・関連産業の安定化を図ることを目的に、褐斑病や黒根病をはじめとする主要病害に対する高度病害抵抗性品種を開発する。実需者である製糖会社による実用性評価や普及想定地帯における実証試験により、開発した品種の実用性を明らかにすることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 黒根病抵抗性および褐斑病抵抗性に優れるテンサイ種子親系統「JMS72」を育成した。
  • 「JMS72」とデンマークのMariboHilleshög社のそう根病抵抗性花粉親系統「POLL-5015」を交配し、テンサイ一代雑種「北海104号」を育成した。
  • 「北海104号」は、既存のテンサイ品種の中で最も強い褐斑病抵抗性と黒根病抵抗性を有する。また、従来の高度病害抵抗性品種で問題となっていた抽苔耐性も"強"と改良されている。
  • 排水不良圃場で調査したところ、「北海104号」は対照品種「リボルタ」と比べて黒根病の発生が少なく、糖量で3%増収することを明らかにした。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願 (第 32585号) テンサイ品種JMS72を品種登録出願 (H29年11月) (出願者名 : 農研機構)
  • 松平洋明他, 黒根病と褐斑病の両病害に対して優れた抵抗性を示すテンサイ新品種「北海104号」. てん菜研究会報59:1-8(2018).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 実需者である製糖会社の協力のもと、普及が想定される排水不良圃場での現地実証試験や展示圃試験を行い、生産者に「北海104号」の実用性をアピールする。
  • 2020年からの一般普及開始を目標に、「北海104号」の品種登録出願および商業採種を行う。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、「北海104号」の品種登録出願手続きを完了し、一般普及を開始する。
  • 5年後 (2023年度) は、排水不良な圃場を中心とした500haに「北海104号」を普及する。
  • 最終的には、「北海104号」の収量性を高めた高度病害抵抗性品種を開発し、普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 黒根病の発生が懸念される排水不良な圃場を中心とした500haに、「北海104号」を現在普及している「リボルタ」と置き換えて作付けすることで、糖量が3%向上し、約1,400万円の経済効果が期待できる。
  • 「北海104号」は、砂糖の国内消費量の1/3を担うテンサイの生産安定化に寄与し、生産者の安定的な営農や実需者の計画的な製糖操業を可能にするとともに、国民の安全・安心で豊かな食生活への貢献が期待される。

気候変動に対応したテンサイの安定生産を可能にする高度病害抵抗性品種の開発

問い合わせ先 : 農研機構 北海道農業研究センター TEL 011-857-9212